第71話 殺意の衝動
「データXが死亡だと....!? 管理はどうなっているんだ!!?」
報告を聞いてリーナ大佐は大声で当たり散らした。兵士は萎縮しながらもことの経緯を説明するとリーナ大佐は不機嫌になりながらもため息をつく。
「細胞はどれほど取れているんだ....?」
「500人分ほど......しかし15%とされていて数が....」
「じゃあ死にもの狂いでどうにかするんだよっ.....!!! 失敗したらタダでは済まないと言えっておけ......失望させるなよ....?」
「はっ....!」
リーナ大佐はその時、しばらく手を額に当てて冷静になろうとする。そしてその瞬間、あることを思いつく。
「まあ仕方がない.....だろう.....せめて.....使って見せるさ」
*****
「———と、ファリン・フラクトリアは敵国の画策で暗殺されてしまった......!謝って済むとは思っていない.....こちらの管理不足だ..........すまない.........!」
リーナ大佐はクリスに深々と頭を下げ、それを聞いていたメアリーが驚きと喪失、悲しみで声を上げられない。
「嘘......ファリンちゃんが.........?嘘....嘘........っ!?」
「......なんで....」
取り乱すメアリーに対してクリスはそう一言言った。
「すまない....本当にっ.....すまない....っ!!」
リーナ大佐は残念そうに、悔しそうにそう演技すると、クリスはゆっくりと立ち上がって聴く。
「............ですか.....?」
「え....っ?」
「.....せ....先輩......」
「誰が殺したんですか?」
「敵対国だろう......利益になる国は多い....特定はできないが....そうとしか.....っ...!」
クリスの目は、紫の瞳孔はひどく散大していた。
一切揺れない瞳孔はただ一つの意志が宿っていた。
それは“殺意”
静かに、だが確実にその衝動が世界を見ていた。
リーナ大佐はそれを見ると涙を拭くように腕で顔を拭うとクリスの目を見て言う。
「君の妹を殺した敵を許したらいけない....! 君の憎しみはわかる....! だから....俺は全力で協力する....! そして....彼女のことを...弔うんだ....っ!」
「そうだね、敵は.....全て殺す」
クリスの表情は変わらない。だがリーナ大佐は内心で笑う。その衝動が、最大の兵器になることを信じて。
*****
戦場となった廃市街地にて戦闘は起きていた。
ビル上階にて階段方向を覗き見ながら兵士たちは警戒していた。
「くるなら.........こい.......!」
窓枠から差し込む太陽光で照らされる兵士の指が震えていた。それは恐怖による震え。理解できないような圧倒的な強さの前で、常識が通じない敵に対して、迷いだらけだった。
誰もが警戒していたその瞬間、一人の兵士が声を上がる。
「敵がま———っ!!」
銃声が鳴り響いた。それは階段からではなく、真横からの銃声。
兵士が振り向いたその瞬間に銀色の残影、そして銃弾が兵士の目には映った。
「が....!!!!?」
12階という高さでありながら、奇襲は窓枠からであった。
「くそ.....!!!」
後方の兵士が銃弾を“それ”に放つが、その瞬間に銀影は銃弾を避けると同時に兵士に鉛玉を撃ち込んだ。
「やべえ.....やべえ....!!!!」
兵士はすぐに走り出し“それ”から距離を取る。
「マジでいるのかよ.....魔王....!!!」
その瞬間、鉛玉は兵士の頭を貫いた。
大量に倒れる死体の中で一人の青年は無線機をオンにする。
「こちらズール10、敵の殲滅を確認、オーバー」
「こちらCP了解、そのまま侵攻せよ。アウト」
アサルトライフルを持った男のその名は“クリス・フラクトリア”
銃弾を避け、自動車の速度で走り、壁を飛び越え、殲滅級の奇襲を行う。戦場での通り名は[魔王]
この世界における最強の兵士である。




