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灰と魔法の荒廃戦  作者: 山田浩輔
過去の世界戦争
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第68話 思考演算

 合理的に生きるべきだと僕は思う。




 この無駄な戦争は何故起きた?ドローンで大量に無駄死にし、膠着状態で成果も利益もなく、ただ憎しみは連鎖する。その理由は簡単だ。



 非合理的だからだ。



 全ての人間が合理的であれば、膠着状態になると分かればすぐに新しい策を出せる。だが一部の非合理的な人間がいるせいで、引き際を見極められない。悪いのは戦争をしてる人間でも、戦争をする道具でもない。




 戦争全体に関わる非合理性の全てだ。







 

 「お兄様ぁ.....! 頑張ってねえ.....!!」

 メアリーは泣きながらそう言った。

 「うん、新しい場でも頑張るよ」

 クリスはそう言うと手を振る。



 クリスの卒業でメアリーは泣きながら別れの言葉をずっと言っていた。ファリンは今日、たまたま別れの場にいた。体調がかなり悪く、今日来れたのは奇跡だが、ファリンは手を振るばかりで元気よく別れを言えるほどの体力はなかった。


 「じゃあ行こう」

 事務員にそう言われてクリスはついていく。だがその方向に疑問を抱く。

 「....奥に行くのかい?」

 「うん、最後にやらないといけないことがあるんだそうだよ」

 事務員はクリスにそう言って、クリスは困惑しつつも歩いて行き、そして電子ロックの扉は開くのであった。


 「それじゃああとは引き継ぎの人が来るそうだから部屋で待っていてね」

 「うん、わかりましたよ」

 クリスはそう言うと部屋にあった椅子に腰掛ける。


 ......何をする....?この部屋は来たことがない、卒業していった人は皆がここに来たのか?そもそも卒業の先が軍とは聞いた。だったら....この保護区は........あれ....





 クリスは思考をしていたが、意識が朦朧としてることを自覚する。だが、気づいたことには既に意識が完全に消失していたのであった。






 剥き出しのコンクリート壁に囲まれた手術室で中央の処置台には、深い昏睡に落ちた「被験体(クリス)」が横たわっていた。人工呼吸器の規則的な排気音だけが、ここが生死の境界であることを告げていた。

 「バイタル安定。神経遮断完了。……始めよう」

研究員の指先が動くと、天井から吊るされた複数のレーザーメスが、少年の胸部を音もなく切り開く。出血は即座に高周波で焼灼され、肉の焼ける嫌な臭いが鼻につく。

 だが、真の工程はここからだ。異物の拍動。助手の手によって、重厚な鉛のケースが恭しく運ばれてくる。蓋が開かれると、中には液体窒素の冷気と共に、ファリンの細胞が収まっていた。


 バイオ・ウィービングを開始し少年の全身に張り巡らされたチューブから、蛍光を発する粘液状の改造細胞群が、一斉に体内に圧入された。




 筋肉組織に到達した改造細胞は、まるで意思を持っているかのように入り込む

彼らは柔らかな赤身の筋繊維を噛み千切り、それを苗床にして、未知の超硬質タンパク質を紡ぎ出していく。



 麻酔下にある少年の外見は静止しているが、その内部で行われている「破壊と創造」のエネルギーは凄まじい。


 そして突然、クリスの体温が急上昇し始める。

 「熱種現象感知、冷却開始します」

 

 異常な高熱を発する肉体を冷却するため、手術台からは大量の蒸気が立ち上る。

 メリメリ、メリメリ……。

静寂な手術室に、少年の体内から、肉と骨が軋み、再結合する不気味な音が響き渡る。

 



 「「「おお..............!」」」


 研究員たちは声を上げた。それは感動とも言えるようなもので、心臓の鼓動が止まらずに動いている。


 髪は銀髪になり、それは成功を象徴するような、そんな色彩であった。

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