第66話 不適合
「ダメだ......なんで.....一体どうして.....!?」
報告の件から一週間、いまだに生存率は全く上がることはなかった。ファリンの細胞は強力すぎる。適合しなければ確実に死ぬ。適合する個体の法則性もわからず、期限は迫っている。
「あのさ、やっぱり良くない? じゃあせめてここじゃなくて違う保護区の子を——」
レイズの言葉を聞いてダストは睨みつけるとレイズは呆れながら言葉を止める。
「はあ。まあギリギリまでやるのも良いけどさ......現実を見なよ....?」
レイズは相変わらずどっちでも良いと考えていた。がその時、電子ロックの扉が突然開くと、数人の軍人が中に入ってきた。
「あれ、どうしたんですか? 来ると事前には聞いてな———っ」
ピュンと小さな音が数発鳴った。
レイズは一瞬思考が停止して止まるが、すぐに理解する。
「が.......ぁ———っ!?」
ダストはその瞬間、力無くその場に倒れ伏した。
そして横たわるダストから流れる大量の赤い液体を見てレイズは身体が硬直したまま動けなくなる。
「データを消されては困るのでな、リスク管理だよ。国の意向に反するなど論外だ.....何か見たか、レイズ少尉?」
先頭の男の低く、重圧な声でレイズの体から冷や汗が噴き出すが、すぐに敬礼をする。
「な.....何も見てません.....っ! 異常無しであります....!」
リーナ大佐....何故ここに....いやそれよりもデータを消す.....盗聴されていた.......中立を維持してて助かった.......危ない........
「ここから先の実験は政府局の人間も介入させてもらう。よろしいな?」
「はっ...! 問題ありません!」
レイズは冷や汗をかきつつも、だが同時に助かったことに安堵する。そしてこれこそが、最悪の実験の始まりであった。
「ダスト先生はしばらく出張だってさ〜、いつ帰ってくるのかな?」
教室机でファリンはだらけながら言う。メアリーも何故だろうかと言った様子で、クリスは言う。
「まあそういうこともあるよ、ダスト先生は結構優しい人に見えるしね」
「お兄ちゃんが代わりにダスト先生やってよー!」
ファリンはそう言ってクリスの頬を揉みまくるとクリスはファリンの手を優しく振り払う。
「前のお兄ちゃんなら抵抗しなかったのにー!」
「あはは....何言ってるのかな...?」
クリスは困惑しながら軽く笑う。
「なんか.....違和感.....! 笑い方がおかしい...!」
「え、そうかな...?」
クリスはさっきからその違和感がわからず、ファリンが何故ここまで言ってくるのかまるでわからない。
このファリンが抱く違和感は実際は逆。今までクリスの笑いは全てが作り笑いだった。そして僅かにだが本心から少し笑った。たったそれだけだが、だからこそわずかな違和感が出ていた。前より優しく無くなったのも或いは、表面上での大切さ以外に気づけたからなのかもしれない。
そしてそれはクリスの中の演算以外の何かが....正直な気持ちが......見えたのだろう。
「はあ.....先生いつ帰ってくるのかなぁ」
夜。ファリンはベッドに寝転がりながらそう呟いて考えていると、寮室の扉がノックされる。
「はいはーい?」
ファリンはベッドから立ち上がると、扉の前に手紙があることに気づいた。ドアの下の隙間から入れられたのだろうが、ファリンはそれを開けてみるとこう書かれていた。
[ファリン・フラクトリア、研究室に来るように]
「え、今から?」
ファリンは突然のことに面倒だと思いつつも、扉を開けて研究室へと歩き出すのであった。




