第64話 選択肢
「うーん....」
夜の寮室、ベッドの中でファリンは悩んでいた。
『痛いの嫌だ.....っ!!』
私がすごいって一体.....戦いがなくなるって....
ファリンは状況がわからず整理もできず困惑していると一つの言葉を思い出す。
「みんなを救える力があるかもしれない......」
その言葉が酷く魅力的に見える。私は平凡で何もできない。なのに何も考えず行動してしまう。でも....でも.....そんな私が....みんなを救える.....?
悶々とする心は[救える]という一言でゆっくりと固まる。そしてそれはやがて.....いいかと思ってしまうファリンであった。
「いいんですか....?ファリンさん!ありがとうございます、とても嬉しいですよ....!貴方はきっと協力してくれると信じてました!」
ダストはニコニコと嬉しそうにファリンに感謝を伝えると立ち上がりファリンの手を掴み、扉を開く。
「では来てほしい部屋があるんです! 奥の部屋でぜひお願いします!」
「え、あの、先生....!」
ファリンは強引なダストをみて、止めるために声をかけるがダストの足は止まらず、だがファリンの目を見て首を傾げる。
「どうしましたか?」
「その....何やるんですか....?」
「何って、みんなを救うための研究だね」
ダストはそのまま歩き、研究室に二人が入ると電子ロック式の扉は閉まる。
研究室にはメスや薬剤、そしてケースに飼育されたたくさんのネズミ。その異様な空間を見てファリンは困惑しながら聞く。
「その....ほら.....痛いことが何とかって....」
「あー、それはですね〜」
ダストはテーブルに置かれたものを手に取り、ファリンはそれをみて驚愕する。
「注射です...!」
「あぎゃあああああああああ!」
ファリンは注射をみて拒否反応で叫ぶのであった。
数時間ほど経ち、電子ロックの扉が開くとファリンとダストは出てくる。
「ぅぅ....騙された....」
「いやあ、言ったら絶対拒否されると思って....でも痛くはなかったでしょう?」
ダストはニコニコとファリンの方を見ていうとファリンはため息をつく。
「麻酔が効いてたので大丈夫ですよ。ただ、みんなには内緒ですよ? これは先生との約束です...!」
ダストはそう言うとファリンはしょんぼりしながらコクリと頷く。
すっかり夜になり、二人は寮室に辿り着くとファリンは自室の扉を開け、ダストと別れる。
「ではファリンさん、また呼んだ時はお願いしますね?」
「....はぁい......」
「やあただいま、調子はどう?」
ダストが研究室に入ると一人の研究員、レイズが首を縦に振る。
「素晴らしいよ。こんな細胞....初めてだよ」
レイズは無気力な顔でそういうが嬉しそうで、ダストも安心した顔をする。
「よかったよ! ようやく...できるかもですね...!」
「成体はダメだけど、幼いマウスに投与したところ、やはり身体能力が向上している。それも劇的にね。本人ではなく他の生物に入ることで真価を発揮する.....まるで“魔法”みたいな細胞だよ? 面白いことにアルビノみたいに体毛が白くなったんだけど、瞳孔は紫って面白いよね?」
「そうですか、このまま研究を頑張って行きましょう...!」
ダストは嬉しそうに、そして同時に思う。
この細胞はきっと.....世界を動かす。




