第五話 白河口の戦い
旧幕府軍が白河に到着すると戦況は芳しくなかった
圧され続けてほとんど壊滅状態に近かった
紗月は刀を抜きいつでも切り込める準備をしていた
「いいか!着岸したら私が道を開く!後れを取るなよ!!」
刀を強く握り紗月は兵達を見わたして叫んだ
その言葉に兵達は「おぉぉぉぉっ!!!!」と声を上げた
船は岸に着岸すると征二郎は刀を掲げる
「着岸したぞ!紗月に続けっ!!」
紗月は軍艦を下りると素早く駆けて新政府軍を背後から急襲する。急襲された新政府軍は混乱している
「旧幕府軍がなぜこんな所にっ?!」
「落ち着けっ!!」
新政府軍の連中は混乱してまともな指揮が執れていない
落ちつかせようとしても紗月たちの覇気に負けて逃げだす者達も出ていた。
そんな時大柄の男が巨大な大砲…フランキ砲を持って現れた。
「落ち着け馬鹿どもがっ!!」
男は動揺する兵士を怒鳴りつけながら
前に出る。
身長は恐らく2メートルはあろうかと思うほど大きく洋装の上でも分かるほど筋骨隆々で体格が良くスキンヘッドの大男である。
「その武器は…たしかフランキ砲と言ったか?そんな大昔の武器を持ってくるとは…新しいもの気触れの新政府軍の貴様も古臭いのを好むと見える。」
冬十郎は鼻で笑いながら大男を煽った
「貴様…大野瀬藤五郎…」
征二郎は藤五郎を強く睨みつける
この目の前の大男こそがかつて倒幕派の大将として存在していた大野瀬藤五郎であった。
藤五郎は紗月たちを見て笑い出す
「ハハハハハ!!!どんな奴が来たかと思えばただのひょろっこい餓鬼共か!旧幕府軍というからどれだけ骨のある奴が来るかともおったがとんだ拍子抜けだ!もはや人手が足りないと見えるな旧幕府軍…いや旧態政府の亡霊共よ」
藤五郎ということは正しい
今は新政府軍の元新たな政治が敷かれている
しかし紗月たち旧幕府軍は今では昔の政治である
旧態政府の亡霊…あながち間違いではないのが辛いところである。
「そういう貴様も人のことは言えぬだろう。そのフランキ砲ももはや三百年以上前の代物だそれに関しては貴様も同じだろう?」
紗月も冬十郎と同じく藤五郎を煽り散らす
このフランキ砲というのはポルトガルから伝わった日本で最初の大砲であり、かのキリシタンである大友宗麟が
使っていたと言われている物で別名「国崩し」とも言われていたという。
何故そんな物を藤五郎が持っているのだろうか…
その疑問を征二郎は口にした
「なぜ貴様はそんな物を持っている?300年も前の物を…それに大友家にあったものだろう?」
藤五郎は不敵に笑ってこう答えた
「なぜ持ってるかだと?ちょうどいいから教えてやる。大野瀬家は代々大友家と繋がりがあってな!このフランキ砲も大野瀬家に受け継がれてから俺の世代まで渡ってきたんだよ!!」
藤五郎は高々と笑いながらフランキ砲を構える
それを見た紗月は撃たせまいと突撃しようとする
「させるかっ!!」
「待て紗月っ!!」
急いで征二郎が紗月の肩を掴み制止する
その瞬間藤五郎はフランキ砲を放つ
砲弾は地面に着弾して爆発
爆風に巻き込まれた紗月、冬十郎、征二郎は吹き飛ばされる
「がっ…くそっ…」
刀を突き刺して杖のようにしてふらふらと立ち上がる紗月だがポタポタと血が垂れる。
どうやら爆発時に飛んできた石で額を切ったらしい。
額から顎先までとめどなく血が流れる
冬十郎、征二郎も肩から血を流しながら起き上がる
「どうだ?お前たちが古臭いと抜かしたフランキ砲乃味は?美味かっただろ?」
藤五郎が笑っていると彼の背後から伝令が来る
伝令は藤五郎に伝えると足早に去った。
「ふははははは!!お前たち、仲間を助けに来たようだが残念だったなぁ!前線の旧幕府軍は壊滅状態で会津に尻尾巻いて逃げているんだとよ!」
「なっ…負けたのか…」
紗月はガクンと膝をつき手で体を支えた
突然知らされた敗北の知らせ
そして目の前にいるこの男とフランキ砲にことごとく敗れた紗月たちは為す術が無かった。
「これで俺達も堂々と東北入り出来るってもんだ!!テメェら!会津に向かうぞ!!」
藤五郎は紗月達を見下すと鼻で笑って去って行った。
ポツポツと雨が降り始める。
雨が彼女たちの流した血を洗い流してくれるようだ。
そんな冷たさの中紗月たちはただただそこに立ち止まるしか無かった。
だが紗月の目は諦めていない。
藤五郎が去って行った所を紗月は鋭い目で睨み続けていた。
紗月たちはゆっくり立ち上り少しづつ歩き出した。
次なる目的地に向けて
次は会津だ…
第五話完




