第四話 崩壊
「新選組の局長が死んだ?!」
征二郎から聞かされた突然の知らせ
それは新選組の局長であった近藤勇が処刑されたという知らせだった。
「新選組局長、近藤勇は4月25日に板橋の処刑場で斬首だったそうだ。」
征二郎は実際その現場を見たわけでは無いが
紗月と冬十郎がそれぞれ出払っている間に少しでも情報を探っていたときに知ったのである。
「しかしなぜ近藤は処刑されたのだ?」
紗月はふと疑問に思った。
あの新選組が新政府軍に捕らわれるはずがないと思い
聞いてみる。
「まさか、投降したのか?」
冬十郎はまさかと思い口にした
「その通りだ。近藤局長は下総(現在の千葉県)流山で駐屯していたところ新政府軍に取り囲まれたらしく流山を戦火に巻き込みたくなくて自ら名を変えて投降したんだ」
征二郎は得た情報を伝えた
近藤勇は新政府軍に大久保大和と名を変えて自ら投降したという。
「名を変えたならなにゆえ処刑されたのだ?近藤ではないのだろう?」
紗月は顎に指をかけて征二郎を睨むように見つめて言った
「新政府軍に近藤を知る人物がいたようなんだ。」
「だから捕らわれたまま殺されたのか…」
冬十郎は眉間にしわを寄せて言った。
「今新選組は崩壊寸前でもあるらしい近藤の死、原田、永倉の離隊などなど今はかなり混乱しているようだ」
征二郎は新選組を想うかのように呟いた。
この時の新選組は、悪く言えばほぼ見る影もない程といって良いほどであった。
「新選組も終わりのようだな…」
紗月の言葉は鋭いが確かにその通りでもある
実際近藤を亡くした新選組は局長を土方にするも以前のような活気は見られなかった。
「あの天才剣士と言われた沖田総司も戦うこと叶わず死んだらしいからな」
冬十郎は上野戦争から戻ってきたときにたまたま沖田の死の話を聞いたらしく
珍しく彼の死を悼んでいる
「今、新政府軍の動きはどうなってる?」
紗月は新政府軍の動向を探る
「甲府城を占拠してから東北にまでその足を広げているようだ。」
新選組は甲陽鎮撫隊として甲府へ向かうも到着が遅れ新政府軍に甲府城を占領されそれを奪い返すために戦いを仕掛けるも大敗したという。
そして今は福島の白河城をめぐり旧幕府軍と新政府軍が戦っている白河口の戦いが勃発している。
「ならば我らも東北の旧幕府軍を援護するか…」
紗月は考え込むようにして言った。
「であれば目指すは白河口だな」
征二郎は地図を出して言った。
冬十郎は地図を横目で見て
「陸路より海路で向かった方が速いだろう。幸い軍艦もあるしな」
「そうだな。江戸にいる幕府軍も恐らく白河に向かうはずだ。準備をして向かおう」
征二郎は地図をしまいながら言った
「あぁ。」
冬十郎はうなずく
「心得た」
紗月はすでに次に来る戦に備えているような心持ちをしていた。
準備を整えた紗月たちは軍艦に乗り込み
軍艦はゆっくりかつ迅速に白河へ向かって進み出した。
次なる激戦に備え、紗月たちの海の先を見つめるその表情はより強ばっていた。
第四話 完




