第三話 箱根戦争
鳥羽・伏見の戦いの敗戦後旧幕府軍は江戸に戻り傷の手当てをしたり体勢を整えていた。
「鳥羽・伏見を制圧した新政府軍は各地の旧幕府軍を攻撃しているらしい」
冬十郎は町で聞いた情報を紗月と征二郎に話している。
「江戸の町も戦火に包まれるのも時間の問題か…」
紗月は眉間にしわを寄せて冬十郎を見ながら言った。
鳥羽・伏見の戦いの際新政府軍は錦の御旗を立てて官軍を名乗り旧幕府軍を朝敵、逆賊と言われるようになった。
「しかしまさか俺達が逆賊になるとはな…」
征二郎は悔しさを顔に出しながら呟いた
懸命に戦った旧幕府軍が逆賊と呼ばれることに怒りを感じていた
江戸に戻って2ヶ月後の3月15日遂に新政府軍が東海道、東山道、北陸道から江戸を攻撃する江戸総攻撃をすると言う計画を立てたという噂を聞く
「江戸総攻撃だと!?」
紗月は噂を聞き声を上げた
「奴ら…遂にこの町まで…」
冬十郎は怒りを露わにする
「とはいえ流石の慶喜もこれには何か策を打つはずだ」
征二郎は胸の前で腕を組む。
「そうでなくては困る。慶喜も江戸の民を見殺しにはしたくあるまい」
紗月は江戸城の方を見上げる
総攻撃の計画が決まってから約1ヶ月後
慶喜に江戸を明け渡すことを伝えられた勝海舟は西郷隆盛と会談し江戸城を明け渡すことを正式に決めた。
世に言う江戸城無血開城である。
こうして江戸の町は総攻撃から守られることとなった
「江戸の町はなんとか戦火から逃れられたな」
征二郎はほっとしたように言った。
「しかし守られたのは江戸だけだ。今でも各地では新政府軍の脅威が残っている。」
紗月は征二郎の言葉に釘を刺すように答える。
無血開城から1ヶ月後上野の寛永寺にこもる彰義隊に新政府軍が攻撃を仕掛けたことから上野戦争がはじまった。
知らせを聞いた冬十郎は彰義隊に加勢するために紗月達と別れて上野へ向かった。
それからしばらくして相模に新政府軍が来た知らせを聞き紗月も故郷を守るために相模へ向かった。
相模に到着した頃には箱根で大規模な戦闘が始まっていた。箱根戦争である。
「賊共が…我が故郷にまで危害を及ぼすなら容赦せんぞ!!」
紗月は箱根で戦っていた旧幕府軍に加わり新政府軍を迎え撃つ
「まさか小田原藩が新政府に味方してしまうとは…とはいえ、守りたいものは小田原藩ではなく小田原の町だ来い!新政府共!!」
紗月は啖呵を切り勢いよく突撃する
一人、また一人と首をはねていく
「このまま押し返すぞ!!」
紗月の号令で兵達は押し返そうとしていくが敵は最新兵器を装備している。
ことごとく鉄砲の餌食になっていった
「ちっ…」
そんな時紗月の背後から伝令がやってくる
「伝令!新政府軍が小田原藩に加勢したとのことです」
「そうか。やはり小田原も新政府に降ったか…やむを得ん撤退だ!」
紗月の一言で撤退を始める
紗月にとっては故郷を守るための戦いだったが守り切れず手痛い敗戦を喫してしまった
撤退中も紗月は悔しさと守れなかった怒りで唇を噛んでいた
なんとか江戸に戻ってきた紗月は上野戦争で戦っていた冬十郎と征二郎と再会する
「紗月!」
征二郎が駆け寄る
「無事だったか。小田原は?」
征二郎の言葉に紗月は首を横に振る
それを見た征二郎は全てを察して紗月の肩から手を離した
「そうか…小田原まで…」
「それだけ新政府軍の影響は強いんだろう。上野でもどうしようもできなかったからな。」
冬十郎は上野戦争を振り返るかのように呟いた
「そうだな。あそこまで力の差があるとは…」
紗月は悔しさで震える
そんな紗月の肩に征二郎はもう一度手を置く
「だがお前が無事でよかった。友を亡くすのは辛いからな」
征二郎は優しく笑うと紗月もフッと笑った
この敗戦で失ったものは大きかったが
紗月達の心にはまだ新政府軍を倒すという大望は消えてはいなかったのである。
第三話 完




