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盾の少女は世界を救わない 〜攻撃できない盾魔法の少女、子どもの誘拐事件から国家の闇を暴く  作者: まるい そら


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第36話 家族のぬくもりの中で

馬車は、一定の揺れで街道を進んでいた。


窓の外では、見慣れた景色がゆっくりと後ろへ流れていく。


向かいにはキャンディが座り、肘を窓枠に乗せて外を眺めていた。


しばらくは、誰も喋らない。


車輪の音だけが、淡々と続く。


私は視線を上げる。


「……キャンディ」


「ん?」


「隣の…ガルドニアとの戦争、今どんな状態か知ってる?」


キャンディはすぐには答えなかった。


外を見たまま、ほんの少しだけ目を細める。


それから、小さく息を吐いた。


「よくはないね」


短い言葉だった。


ラーラが眉を上げる。


「“よくない”で済む話か?」


キャンディは肩をすくめる。


「街の空気で分かるさね」


指で窓の外を示す。


「行商の数、減ってるだろ」


私は外を見る。


確かに――少ない。


前ならもっと、荷車とすれ違っていたはずだ。


「流れが鈍ってるってことは、それだけ危ないってことさね」


ルークが低く言う。


「前線が近い?」


キャンディは首を横に振る。


「位置の問題じゃないさね」


一拍。


「バランスが崩れてる」


その言葉に、少しだけ空気が変わる。


私は聞き返す。


「バランス?」


「今まで均衡してたんだよ、ヴァルドゥナとガルドニアは」


淡々とした説明口調に変わる。


「でもここ最近、向こうに“当たり”が出た」


ラーラが眉をひそめる。


「当たり?」


キャンディは短く言う。


「強い魔法使いの部隊」


その一言で、場が静かになる。


「数は多くない。でも質が違うさね」


「一つの小隊で、戦線を押し返してるって話も出てる」


ルークの目が細くなる。


「……戦局が傾いたか」


「そういうことさね」


キャンディは頷く。


「こっち――ヴァルドゥナ側が押され始めてる」


私は無意識に息を詰める。


キャンディは続ける。


「で、その影響がここにも来てる」


窓の外をもう一度指す。


「交易は止まってるわけじゃない。でも、通るルートが絞られてる」


「安全な道に集中して、他は避けてる状態さね」


曖昧さは残す。


でも、状況ははっきり見える。


「遠回りになる分、時間も金もかかる」


「だから物も人も減る」


ラーラが小さく舌打ちする。


「面倒な流れだな」


キャンディは肩をすくめる。


「戦争ってのはそういうもんさね」


それから、少しだけ声を落とす。


「あと――子どもは増えてる」


短く。


「戦争孤児さね」


私は何も言えない。


キャンディはそれ以上踏み込まない。


ただ、現実だけを置いた。


「だから、今はどこも余裕ない」


「人も、物も、時間も」


一拍。


「そういう状況さね」


私は小さく息を吐く。


馬車はそのまま進む。


けれど――


空気だけが、確実に重くなっていた。


そのとき、


フードの奥で、小さな気配が動く。


ビビが、ゆっくりと顔を出した。


黒い瞳で、外の景色をじっと見ている。


いつもなら、甘い匂いに反応するのに――


今は違う。


何かを感じ取っているようだった。


私は何も言わない。


ただ、その視線だけが、妙に胸に残った。


♦︎


それから馬車に揺られ3日。

交易都市ヴェインシアに着いたのは、昼前だった。


門をくぐった瞬間、空気が変わる。


人の流れが速い。


荷を運ぶ声、商人の呼び込み、金属のぶつかる音。


すべてが途切れず動き続けている。


「ぼーっとしてると置いてかれるよ」


前を歩くキャンディが振り返る。


「ここは流れが命さね」


そのまま迷いなく通りを進んでいく。


土地勘のある歩き方だった。


やがて、一軒の建物の前で足を止める。


木製の看板。


そこに刻まれている文字を、私は目で追う。


――ドロップ商会。


「帰ったよ〜」


キャンディが軽く扉を押す。


中から、すぐに声が飛んできた。


「お、キャンディーか!」


明るく、よく通る声。


奥から出てきた男が、こちらを見て笑う。


ロイドさん――キャンディの父親だった。


「友達連れてきたのか?」


そのまま自然に距離を詰めてくる。


「いらっしゃい。狭いとこだけど、遠慮しないでくれ」


柔らかい声だった。


構えなくていい、と最初から言われているような響き。


その後ろから、もう一人顔を出す。


「まあ、いらっしゃい〜」


マリエ――キャンディの母親。


にこやかに手を拭きながらこちらへ歩いてくる。


ラーラが真っ先に声を上げた。


「マリーちゃん!久しぶり!元気してた?」


距離の詰め方が一瞬だった。


マリエは嬉しそうに笑う。


「元気よ〜。ラーラも変わらないわね」


「そりゃな!」


そのまま軽く肩を叩き合う。


完全に“いつもの空気”だった。


私はその様子を見ながら、少しだけ息を吐く。


懐かしい、と思った。


木の匂い。


雑然としているのに、どこか整っている空間。


人の出入りがあって、それでもちゃんと“家”になっている場所。


ここに来ると、いつも同じ感覚になる。


張っていたものが、少しだけほどける。


「いらっしゃい、アイリーちゃん」


マリーちゃんが優しく声をかけてくる。


「久しぶりね」


「はい。お久しぶりです」


自然と、少しだけ声が柔らかくなる。


ロイドさんが軽く笑う。


「遠いところご苦労さん。まあ立ち話もなんだ、適当に座ってくれ」


その言い方も、押し付けがましくない。


ルークが一歩前に出る。


「お邪魔します、ロイドさん。今回も世話になります」


いつもより少しだけ明るい声だった。


しっかりと顔を上げている。


ロイドさんは気にした様子もなく笑う。


「おう、好きに使ってくれていいぞ。ここはそういう場所だ」


その一言で、全部が片付く。


遠慮しなくていい。


ここにいていい。


そういう空気だった。


ロイドさんが軽く腕を組む。


「そういや最近どうだ?」


気さくな声だった。


「ちょっと顔見ねぇうちに、えらく忙しそうじゃねぇか」


ラーラが肩をすくめる。


「まあな。あたしら今、護衛任務ついててさ」


「アイリーのな」


ロイドさんの視線がこちらに来る。


「ほう?」


少しだけ楽しそうに目を細める。


「噂は聞いてるぞ。国の視察官だってな」


私は軽く頷く。


「はい。まだ慣れてはいませんけど」


「慣れるもんじゃねぇよ、ああいうのは」


あっさり言う。


「慣れたら終わりだ」


軽い口調なのに、妙に芯があった。


マリーちゃんが横から口を挟む。


「でもすごいじゃない。ちゃんとやってるのねぇ」


「無理しすぎてない?」


その言い方に、思わず少しだけ笑う。


「大丈夫です」


ルークが続ける。


「こっちも護衛として動いてます。今のところ問題はないです」


ロイドさんが頷く。


「ならいい。顔見りゃ分かる、ちゃんと立ってるな」


短い言葉だった。


でも、それで十分だった。


その空気のまま――


奥から戻ってきたキャンディが口を挟む。


「そういやさ」


何気ない声だった。


「アーモンド、今いる?」


ロイドさんが振り返る。


「ん?」


「うちで最近雇った子。ルクスにいたって言ってたやつ」


キャンディはさらっと言う。


ロイドさんは少しだけ考えてから頷く。


「ああ!アーモンドか!歳を取ったのか、すぐに顔と名前が出てこなくてな。彼なら裏で荷の整理してるはずだ」


「あいよ、じゃぁちょっくら呼んでくるさね」


そういうと、キャンディはそのまま奥へ消えていった。


少しして、足音が二つ戻ってきた。


「すみません、呼ばれて――」


入ってきた少年は、そこで少しだけ言葉を止めこちらを見る。


少しだけ戸惑った表情。


日焼けした肌。

荒れた手。

働いてきた痕が、そのまま残っている。


「アーモンド、この人たち」


キャンディが軽く紹介する。


「ちょっと話がしたいんだってさ」


アーモンドはすぐに姿勢を正した。


「はい。俺でよければ何なりと聞いてください」


その声に、迷いはなかった。


♦︎


場所を少し移す。


商会の裏手。


木箱が積まれ、風が通り抜ける場所だった。


私たちは簡単に自己紹介を済ませる。


それから、間を置かずに聞いた。


「ルクス養育院にいたって、聞きました」


アーモンドは少しだけ目を瞬かせる。


「ああ……はい」


「十三の頃から、何年かお世話になってました」


私は続ける。


「どんなところでしたか」


責めるつもりはない。


ただ、知りたかった。


アーモンドは少し考えてから、素直に答える。


「普通……だと思います」


「飯も出たし、寝る場所もあったし」


「文字も教えてもらえたし」


一つ一つ、言葉を選びながら話す。


「今こうして働けてるのも、あそこがあったからだと思ってます」


その言葉に、嘘はなかった。


ラーラが腕を組む。


「へぇ……」


ルークは何も言わない。


ただ、視線だけが鋭くなる。


私はそのまま聞いた。


「途中で、いなくなる子はいましたか」


アーモンドはあっさり頷いた。


「はい、いました」


「でも、たぶん“いいところ”に行ったんだと思います」


迷いのない声だった。


「特別推薦っていうのがあって」


「選ばれた子は、上に行くって聞いてました」


私は一瞬だけ息を止める。


「……選ばれた子」


「はい」


アーモンドは少しだけ笑う。


「すごいやつらですよ」


「俺とは違って、ちゃんとしてて」


その言い方に、軽い自己評価の低さが混じる。


ラーラが口を開く。


「あなたはどう思ってたんだ?」


アーモンドは少しだけ首を傾げる。


「どう、って?」


本気で分かっていない顔だった。


「いや……その」


ラーラが言葉を探す。


でも、続けなかった。


代わりに私が聞く。


「その“特別推薦”って、どういう意味ですか?」


アーモンドは少し考える。


答えは、すぐに出た。


「選ばれるってこと、ですよね」


それだけだった。


私は少しだけ間を置いてから、やわらかく言った。


「ごめんなさいね、いきなりこんな話して」


アーモンドが少し驚いたように顔を上げる。


「私、今ルクス養育院の視察を任されてて」


押しつけないように、言葉を選ぶ。


「だから、実際にいた人の話を聞いてみたくて」


ほんの少しだけ笑う。


「無理にとは言わないから。覚えてることだけでいいから教えてくれないですか?」


空気が、少しだけ緩む。


アーモンドはすぐに頷いた。


「……いえ、全然」


むしろ少し安心したようにも見えた。


「俺でよければ、なんでも」


その言葉に、ラーラが軽く口を挟む。


「そんな堅くならなくていいって」


「普通に昔話でいいからさ」


空気が、さらに柔らぐ。


私は頷いた。


「ありがとう」


一拍。


「どこの院にいたの?」


「クレスト院です」


「南の……森林都市クレストにあるとこで」


「そこでの生活は、どうだった?」


アーモンドは少しだけ考える。


でも、答えはすぐに出た。


「……良かったと思います」


迷いはない。


「ちゃんとご飯出るし、寝る場所もあるし」


「仕文字も教えてもらえたし」


少しだけ笑う。


「俺、あそこなかったら多分今ここにいないんで」


その言葉は、本音だった。


私は静かに受け取る。


「なるほど」


それ以上は否定しない。


そのまま、自然に流す。


「仲良かった子とかいました?」


アーモンドの表情が、少しだけ変わる。


「ああ……いました」


ほんの少し、懐かしむように。


「ピスタってやつです」


その名前を出すときだけ、声が少し柔らかくなる。


「同じ時期に入ってきてタメだったし」


「なんか、名前も似てるじゃないですか」


少しだけ笑う。


「アーモンドとピスタで」


「“ビーンズ兄弟”って、勝手に言ってました」


ラーラが面白くて笑い吹き出す。


「いや、でも覚えやすいなそれ」


ルークも少しだけ口元を緩める。


アーモンドも少し照れたように笑う。


「……あいつが言い出したんですけどね」


「でも、なんか」


一拍。


「しっくりきて」


その言葉に、関係性が滲む。


ただの“仲良かった”じゃない。


ちゃんと、時間を共有していた距離。


「ピスタは、どんな子だったの?」


アーモンドは少しだけ目を細める。


思い出している。


「……すごかったです」


シンプルな言葉。


でも、迷いがない。


「なんでもちゃんとできるし」


「先生の言うこともすぐ理解するし」


「あと――」


少しだけ言葉を探す。


「なんか、“向いてる”って感じで」


その感覚的な言葉が、逆にリアルだった。


「だから」


自然に続く。


「特別推薦で、いなくなりました」


空気が、ほんの少しだけ静かになる。


でも、重くはならない。


アーモンドはそのまま言う。


「俺、あいつなら大丈夫だと思ってます」


迷いがない。


「ちゃんとしてるやつだったんで」


その言葉は、


信じているというより、


“疑う発想がない”に近かった。


私は、ゆっくり頷く。


「……そっか」


それだけにする。


今は、壊さない。


でも――


胸の奥に、ひとつだけ引っかかる。


同じ場所にいたはずなのに、


見えている景色が、違いすぎる。


そのあと、しばらくは他愛もない話になった。


仕事のこと。

港のこと。

最近の街の様子。


重さは少しずつ抜けていく。


笑い声も混ざる。


さっきまでの空気が、嘘みたいに軽くなっていた。


やがてアーモンドが、ふと思い出したように言う。


「あ、そうだ」


「同じクレスト院出身で、もう一人知り合いがいるんです」


私は顔を上げる。


「今、森林都市クレストでパン屋で働いてます」


「なかなか筋がいいみたいで……あいつも、普通にやってます」


“普通にやってる”


その言葉が、少しだけ胸に残る。


「名前は?」


「パパンって言います」


少し照れたように笑う。


「今度、手紙出しておきますよ」


「俺の知り合いが来るかもしれないって」


私は頷いた。


「ありがとう」


ラーラも軽く手を振る。


「その時はパン食いに行くわ」


「歓迎すると思います」


そのやり取りは、あまりにも自然で――


まるで何も問題なんてない世界の話みたいだった。


♦︎


話を終えたアーモンドは再び仕事に戻り、4人で会話をしている店の奥から、ひょこっと顔が出る。


「ねぇねぇ」


キャンディの母、マリーちゃんだった。


柔らかい笑顔。


「夜ご飯、食べるでしょ?」


ラーラが即答する。


「食べる!!」


早すぎる。


マリーちゃんが笑う。


「はいはい、いっぱい作るから座ってて」


そのまま奥へ引っ込んでいく。


ロイドさんも顔を出す。


「今日はちょっといい肉入ったんだ」


「楽しみにしててくれ」


陽気な声だった。


自然と、空気があたたかくなる。


♦︎


並んだ料理は、想像以上だった。


肉料理に、スープに、パンに、野菜。


湯気と香りが広がる。


ラーラが目を輝かせる。


「すげぇ……」


ルークも思わず笑う。


「食いきれるかこれ」


キャンディは当然の顔をしている。


「食べるさね」


それが当たり前みたいに。


席につく。


「「いただきまーす!」」


自然と、会話が生まれる。


ロイドさんの軽口。

マリーちゃんの優しい合いの手。

キャンディの雑な返し。

ラーラの大笑い。


ルークも普通に会話に入っている。


ただの食卓。


ただの家族みたいな時間。


その中で――


マリーちゃんが、ふと私を見る。


「ねぇ、アイリーちゃん」


少しだけ身を乗り出す。


「この子、もらってくれる素敵な人いない?」


横にいるキャンディを軽く指す。


キャンディがすぐに顔をしかめる。


「マミー、なに言ってんのさ」


父、ロイドさんが笑う。


「お、ついに来たなその話」


マリーちゃんは笑いながらも、少しだけ本気が混ざっている。


「だってこの子、外ばっかりでしょ?」


「ちゃんと落ち着いてくれる人いたらいいなって思うのよ」


「こんなに可愛い子なんだからさ〜」


キャンディがため息をつく。


「余計なお世話さね」


ラーラがすぐ乗る。


「え、じゃあ俺紹介しよっか?」


「やめて」


即答だった。


笑いが起きる。


そのやり取りが、あまりにも自然で――


あまりにも“普通”で。


私は少しだけ、視線を落とした。


――いいな、と思った。


こんなふうに、


当たり前に誰かがいて、


当たり前に笑って、


当たり前に心配される場所。


胸の奥に、静かに浮かぶかけがえのない場所。


母の顔。


兄の背中。


守られていた記憶。


そして――


もう戻らない時間。


「……アイリー?」


ラーラの声で、意識が戻る。


私は小さく笑った。


「ううん、なんでもない」


そう言って、もう一口食べる。


あたたかい味がした。


♦︎


夜。


キャンディの部屋に布団が敷かれる。


「今日はここな」


キャンディが当然のように言う。


ラーラはすでに転がっている。


「最高かよ」


私はその隣に腰を下ろす。


窓の外は静かだった。


灯りも落ちている。


少しだけ間があって――


「ねぇ」


ラーラがぽつりと言う。


そこから、他愛もない話が始まる。


昼のこと。


昔のこと。


くだらない話。


笑いがこぼれる。


止まらなくなる。


気づけば、夜が深くなっていた。


そのまま、


ゆっくりと、会話は途切れていく。


――静かな夜だった。


少しだけ間が落ちる。


ラーラが、ぽつりと口を開く。


「なぁ、アイリー」


返事はない。


「アイリーはさ――」


横を向く。


「ルークと、レオン」


一拍。


「どっちが好きなわけ?」


キャンディが小さく笑う。


「急だね」


ラーラは気にしない。


「気になるだろ普通」


もう一度、アイリーを見る。


「おーい、聞いてるか?」


――返事はない。


よく見ると、


アイリーはすでに眠っていた。


穏やかな顔で、


何も知らないまま。


ラーラが、少しだけ間を置く。


「……寝てんのかよ」


小さくため息をつく。


「一番いいとこで」


キャンディがくすっと笑う。


「そういうとこだよね」


それ以上は続かない。


二人も、やがて静かになる。


灯りが、ゆっくりと落ちていく。


夜はそのまま、


何も答えを出さずに、深くなっていった。


♦︎


夜が明ける。


軽く支度を整えて外へ出ると、キャンディが振り返る。


「いいとこあるさね。最近できた店」


連れて行かれたのは、小さなデザート屋だった。


甘い匂いが広がる。


色とりどりの菓子が並んでいる。


ラーラが即反応する。


「ここ当たりだな」


適当に選んで、口に運ぶ。


「……うま」


それだけで十分だった。


帰り際、私はふと足を止める。


棚に並んだ、アイシングクッキー。

色とりどりでとてもかわいい装飾に目を奪われる。


「これ、包んでもらえますか?」


デザートの女王、セドリカの顔が浮かぶ。


少しだけ、笑った。


♦︎


ホームディアへ戻る道。


見慣れた景色。


変わらない日常。


手の中の甘い袋が、やけに軽かった。


――こういう時間も、必要だ。


そう思えた。


そして――


次の視察先。


技術都市グラディオールへ向かう。


静かな日常の、その先へ。

この物語は、まだ続きます。


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