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盾の少女は世界を救わない 〜攻撃できない盾魔法の少女、子どもの誘拐事件から国家の闇を暴く  作者: まるい そら


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第31話 湾岸都市アクアレア

王都でドミニクの報告を受けてから、数日後。


今日は、湾岸都市アクアレアへ向けて出発する日だった。

王都から馬車で二日ほど離れた港町だ。


窓の外には広い平原が続き、遠くに小さな村が点々と見える。

車輪が石を踏む音が一定のリズムで響いていた。


馬車の中には、私、ルーク、ラーラ、そして護衛のレオン。


四人だけの静かな移動だった。


その静けさの中で、フードの奥が小さく動く。


ビビが、もぞりと身じろいだ。


まだ眠いのか、顔だけ少し出して、すぐにまた潜り込む。


私は思わず小さく笑った。


私は向かいに座っているレオンを見る。


「レオンさん」


私が声をかけると、レオンはすぐに顔を上げた。


「はい」


「アクアレアって、どんな街なんですか?」


レオンは少しだけ視線を窓の外へ向けた。


遠くに続く平原を見ながら、言葉を選ぶように口を開く。


「湾岸都市アクアレアは、この国最大の港を持つ街です」


「国内外の船が集まり、交易の拠点になっています」


ルークが腕を伸ばしながら言う。


「つまり、商人の街ってわけだな」


レオンは静かに頷いた。


「他国の船も多く出入りします」


「物だけでなく、人も多く集まります」


「旅人、船乗り、商人、移住者……様々です」


ラーラが興味深そうに聞く。


「じゃあ外国人も多いのか」


「はい」


レオンは続けた。


「王都とはまた違った空気の街です」


「言葉も文化も混ざり合っています」


私は少し身を乗り出した。


「食べ物も違うんですか?」


レオンは小さく頷いた。


「珍しいものが多いです」


「南の国から果物も入ってきます」


「この国では見ない種類もあります」


ルークが笑う。


「いいじゃん」


「視察っていうより食べ歩きだな」


ラーラが肩をすくめる。


「お前はそれしか考えてないのか」


ルークは気にせず続ける。


「でもさ」


「港町の飯って大体うまいんだよ」


レオンが淡々と言う。


「確かに」


「港には様々な食材が集まりますから」


それから少しだけ付け加えた。


「特に南の果物は人気があります」


「甘くて香りが強い」


私は少し笑った。


「それは楽しみですね」


ルークが頷く。


「決まりだな」


「視察終わったら果物だ」


ラーラが呆れた顔をする。


「仕事終わってからな」


ルークは肩をすくめた。


「分かってるって」


そのやり取りを聞きながら、私はふとレオンを見る。


「レオンさん」


「はい」


「アクアレアには南国の食べ物が多いって聞きましたけど」


「何か食べたことありますか?」


レオンは少しだけ考えるように視線を外へ向けた。


「仕事で訪れることが多いので、ゆっくり食事をする機会はあまりありません」


それから静かに続ける。


レオンは静かに続けた。


「ですが、マンゴーは何度か食べたことがあります」


私は少し笑う。


「マンゴーですか」


レオンは頷いた。


「この辺りではよく見かけます」

「南の国から入ってくる果物で、街の市場でも安く売られています」


その言葉を聞いた瞬間だった。


ルークの表情が、わずかに止まる。


ほんの一瞬。


何かを思い出しかけたような目をした。


小さく、独り言のように呟く。


「……マンゴー」


ラーラが気づかずに言う。


「果物か」


「まあ悪くないな」


ルークは何も言わない。


ただ静かに窓の外へ目を向けていた。


レオンは話を続けた。


「今回の視察先ですが」


「アクアレア中心部にあるアクアレア院」


「それと、少し離れた港町――リオナです」


私は顔を上げる。


「港町なんですね」


レオンは頷いた。


「はい」


「港に近いので魚が多い」


「リオナでは魚料理が安く食べられます」


その言葉に、ルークがわずかに顔を上げた。


だが、さっきまでの軽い調子ではない。


ラーラが首を傾げる。


「どうした」


ルークは少しだけ黙る。


それから肩をすくめた。


「いや」


「なんでもない」


ラーラはそれ以上気にしない。


「魚料理はいいな」


私は思わず笑った。


「でも、魚料理は楽しみですね」


レオンは静かに答える。


「そう思われるかもしれないと考え、少し調べておきました」


ルークがちらりとレオンを見る。


「準備いいな」


レオンは表情を変えない。


「視察のついでに、食事の場所も確認しておいた方が効率的です」


ラーラがくすっと笑う。


「なるほど」


「淡々男なりの気遣いってやつか」


レオンは何も言わない。


ただ静かに、街道の先を見ていた。


その隣で――


ルークだけが、窓の外をぼんやり見ている。


「……リオナ」


もう一度、小さく呟いた。


私は窓の外へ目を向ける。


広い平原の向こう。


まだ海は見えない。


だが街道は、確かに南へ続いていた。


♦︎


翌日。


昨晩は街道沿いで簡単に野営をし、まだ朝の空気が冷たい時間に出発した。


それから馬車は南へ走り続け――


気がつけば、もう午後だった。


太陽は高く、光は少しだけ西へ傾き始めている。


風の匂いが変わった。


ルークが窓を開ける。


「……潮だ」


その言葉の直後だった。


視界の先に、青い海が広がった。


きらきらと光を反射する水面。


港には大小の帆船が並び、白い帆が風を受けて膨らんでいる。


荷を運ぶ人々の声。


船員たちの怒鳴り声。


木箱を運ぶ音。


すべてが混ざり合い、街全体が大きく動いているようだった。


その背後に広がる街。


石造りの建物が海沿いに並び、色とりどりの旗が風にはためいている。


街道には馬車が列をなし、異国の衣装を着た人々が行き交っていた。


ここは王都とは違う。


もっと荒々しく、もっと自由で、もっと騒がしい。


湾岸都市――アクアレア。


「おお……」


ラーラが思わず声を漏らす。


「すごいな」


「完全に港の街だ」


市場には魚が山のように並び、香辛料の匂いが風に混ざっている。


焼いた魚の匂い。


果物の甘い香り。


聞いたことのない言葉を話す商人たち。


王都とはまったく違う空気だった。


私は思わず窓から身を乗り出す。


「すごい……」


その街は、まるで生きているように動いていた。


時刻は、ちょうど午後三時頃だった。


馬車はゆっくりと、湾岸都市アクアレアの門へ近づいていく。


♦︎


宿に荷物を置き、少し休んだ頃だった。


下の階から賑やかな声が聞こえてくる。


太鼓の音。


笛の音。


笑い声。


私は不思議に思い、階下へ降りた。


宿のフロントには数人の旅人が集まっている。


通りの方から灯りが揺れていた。


ルークが受付の男に聞く。


「なんかあるのか?」


男は笑った。


「ああ、今日は祭りですよ」


「海の女神 アクアリーネ様 に祈りを捧げる祭りです」


私は少し驚いた。


「海の女神……」


男は頷く。


「アクアレアでは年に何度か行われます」


「一番大きいのは十月の豊穣祭と合わせてやる祭りですね」


ルークが眉を上げた。


「どれくらい大きい?」


男は肩をすくめる。


「街が人で埋まりますよ」


「港から城門まで全部祭りです」


「先月ちょうど終わったばかりですがね」


私は思わず笑った。


「それはすごそうですね」


男は通りを指さす。


「今日は小さい方です」


「それでもこの街の人間は祭り好きでして」


外からまた太鼓の音が聞こえた。


ルークが振り返る。


「行ってみるか?」


私は少し考えた。


長旅のあとだ。


少し街の空気を知るのも悪くない。


「少しだけ」


そう言うと、後ろからラーラの声がした。


「私はパス」


私は振り返る。


「え?」


ラーラは腕を軽く振った。


「人混み無理〜」


「疲れる〜てか、まだ疲れてる〜」


ルークが笑う。


「お前らしいな」


ラーラは肩をすくめる。


「護衛も一人残った方がいいだろ?」


そのままレオンを見る。


レオンは静かに頷いた。


「それだと助かります」


ラーラは満足そうに言う。


「じゃ、行ってこい」


私は少し笑った。


「ラーラのお土産も買ってくるからねー!」

「いってきまーす!」


♦︎


外へ出ると、街はすっかり祭りの空気だった。


夜のアクアレアは、昼とはまるで違う顔を見せている。


提灯の灯りが海風に揺れ、通りいっぱいに屋台が並んでいた。


通りに出た瞬間、空気が一変した。


灯りが何列も並び、広場には大きな長机がいくつも置かれている。


巨大な木樽が積まれ、男たちがそこから酒を注いでいた。


「乾杯!」


という声があちこちで上がる。


楽師たちが陽気な曲を奏で、人々が手を叩きながら歌っていた。


漁師らしい男たちが肩を組み、大声で笑っている。


通りの奥では、子どもたちが走り回り、女たちが料理を運んでいた。


屋台からは焼いた魚の香ばしい匂いが漂ってくる。


大鍋では貝のスープが煮え、香辛料の効いた料理の香りが広がっていた。


港町らしく、異国の衣装を着た人々の姿も多い。


聞き慣れない言葉が飛び交い、船乗りたちの笑い声が重なる。


通りの上には、青い布の旗が何本も掲げられていた。


中央には、海の女神 アクアリーネ様を象った紋章。


船乗りたちが航海の無事を祈る印だという。


潮風に灯りが揺れる。


海の匂いと酒の匂いが混ざった、にぎやかな夜だった。


ルークが周囲を見回す。


「……すげぇな」


私は思わず頷いた。


「本当に」


その少し後ろを、レオンが歩いていた。


周囲を警戒しながら、一定の距離を保っている。


私は振り返る。


「レオンさん」


彼はすぐに顔を上げた。


「はい」


「こういう祭り、来たことありますか?」


レオンは少し考えた。


「任務では何度か」


それから通りの灯りを見た。


「ですが」


「ゆっくり見るのは初めてかもしれません」


その声は静かだった。


私は少し笑う。


「じゃあ今日はゆっくり見ましょう」


レオンは何も言わない。


だが、ほんのわずかだけ表情が柔らいだ気がした。


その時だった。


通りの屋台から、香ばしい匂いが漂ってきた。


大きな鍋で魚介のスープが煮込まれている。


その横では、炭火の上で魚が焼かれていた。


ルークが足を止める。


「……腹減ったな」


私は思わず笑う。


「さっき宿で食べたばかりじゃないですか」


「祭りは別だろ」


ルークはそう言って屋台へ歩いていく。


レオンが静かに周囲を確認してから言った。


「この辺りは比較的安全です」


「座れる場所もあります」


屋台の近くには、長い木の机が並んでいた。


人々が肩を並べて酒を飲み、料理を食べている。


港町らしい、賑やかな食事の場だった。


私たちは魚介スープと焼き魚、それから軽い酒を買い、空いている席へ腰を下ろした。


湯気の立つスープを一口飲む。


魚と貝の旨味が広がった。


「……美味しい」


思わず声が漏れる。


ルークが笑った。


「だろ?」


焼き魚をほぐしながら言う。


「港の飯はうまい」


私は少し笑いながら言った。


「レオンさんもどうですか?」


レオンは一瞬迷ったようだったが、小さく頷いた。


「では、少しだけ」


三人で同じ机を囲む。


祭りの音楽が遠くで鳴り続けていた。


酒を一口飲んだルークが言う。


「こういう飯、嫌いじゃないだろ」


「お祭りとか大好きだよ!」


ルークが笑う。


「知ってる」


私は目を細めた。


「そんなに分かりやすい?」


「もう一緒にパーティー組んで2年か?」

「流石に分かるだろ!」


ルークは笑いながら続けた。


「食い物の話してる時、表情が全然違うぞ?」


私は思わず吹き出した。


レオンが静かに言う。


「確かに」


私は少し驚いてレオンを見る。


「レオンさんまで〜」


レオンは表情を変えない。


「観察の結果です」


ルークが笑った。


「淡々男に分析されてるぞ」


私は少し恥ずかしくなり、スープを飲んだ。


その時だった。


机の少し向こう側。


別の席に座っていた少年が目に入る。


年齢は十歳くらいだろうか。


楽しそうに笑いながら、果物を食べている。


黄色い果肉のマンゴーだった。


その瞬間。


ルークの手が止まった。


ほんのわずかだった。


だが私は気づいた。


ルークは何も言わない。


ただ少しだけ、少年の方を見ていた。


楽しそうに笑う子ども。


その光景を見て、


ルークの表情がわずかに曇る。


すぐに視線を外す。


そして酒を飲んだ。


私は何も言わなかった。


祭りの音楽が、少し遠くで響いていた。



そのあと、私たちはしばらく祭りを歩いた。


ラーラへの土産に、小さな焼き菓子を買う。


酒も少しだけ追加で飲んだ。


気づけばルークは、だいぶ出来上がっていた。


夜の港町はまだ賑やかだったが、


私たちは宿へ戻ることにした。


祭りの灯りを背に、


三人で静かな通りを歩いた。


♦︎


翌朝。


昨夜だいぶ酒が入っていたルークも、すっきり目を覚ましているようだった。


港の朝は早い。


窓の外ではすでに人の声が響き、遠くから船の鐘の音が聞こえていた。


私たちは簡単に朝食を済ませると、すぐに宿を出た。


今日から視察が始まる。


湾岸都市アクアレアにある ルクス養育院の施設を確認するためだ。


ルクス養育院は、この国が管理する孤児保護制度の一つで、各地にいくつもの施設が置かれている。


アクアレア周辺にもいくつかの施設があり、今回視察するのはそのうちの二つ。


まずは、街の中にある養育施設――


アクアレア院。


そしてもう一つが、アクアレアから少し離れた港町リオナにある リオナ院 だ。


まず向かうのはアクアレア院だった。


馬車は宿を出ると、朝の街をゆっくり進んでいく。


港町の通りはすでに活気があった。


魚を運ぶ荷車。


船員たちの怒鳴り声。


市場へ向かう人の流れ。


潮の匂いが風に混ざっている。


やがて馬車は大きな通りを外れ、静かな区画へ入った。


そこに石造りの建物が見えてくる。


門の上には控えめな看板が掲げられていた。


ルクス養育院 アクアレア院


街の中にある施設だが、敷地は思ったより広かった。


庭では子どもたちが遊んでいる。


笑い声があちこちで上がっていた。


施設長が出迎え、私たちは院内へ案内される。


食堂。


寝室。


学習室。


どこもきちんと整えられている。


特に問題は見当たらない。


やがて庭へ出た。


子どもたちが走り回っている。


その中に、何人か異国の顔立ちの子どもがいた。


肌の色が濃い子。


髪が細かく巻いた子。


言葉の訛りも少し違う。


私はその光景を見ながら思う。


――やはり。


ここは港町だ。


船は物だけでなく、人の運命も運んでくる。


航海の途中で家族を失った子ども。


異国で取り残された子ども。


密航船から保護された子ども。


湾岸都市の養育院には、そういう事情の子どもが自然と集まる。


王都の養育院とは、少し事情が違う。


それでも――


子どもたちは笑っていた。


庭いっぱいに笑い声が広がっている。


その光景を見て、私は少しだけ安心する。


ふと、その子どもたちの中に、目を引く少年がいることに気づいた。


肌は浅黒く、髪はチリチリに広がったアフロヘアー。


大きな瞳が、こちらをまっすぐ見ている。


ビー玉のように澄んだ目だった。


少年はしばらく私たちを見つめていたが、やがて――


ぱっと顔をほころばせた。


次の瞬間。


少年は勢いよくこちらへ走ってくる。


「こんにちは!」


元気な声だった。


発音は少しだけ独特だが、この国の言葉だ。


私は思わず笑う。


「こんにちは」


少年は胸を張った。


「ぼくザイロ!」


「ここに住んでる!」


ルークが小さく笑う。


「元気だな」


ザイロは気にせず話し続ける。


「この人だれ?」


「偉い人?」


私は首を振った。


「視察に来ただけですよ」


ザイロは目を丸くする。


「しさつ?」


それから、すぐにまた笑った。


「でもいい人そう!」


ラーラが吹き出した。


「お前、判断早いな」


ザイロは気にしない。


くるっと振り返り、庭の方を指さした。


「あっちで鬼ごっこしてる!」


「ぼく行かなきゃ!」


そう言うと、また全力で走り出す。


あっという間に子どもたちの輪へ戻っていった。

その背中を見ながら、施設長が言う。


「ザイロは二年前にここへ来ました」


「遠い国から流れ着いた子です」


私はもう一度、少年の背中を見る。


ザイロはすでに子どもたちの輪の中に戻り、元気に走り回っていた。


「最初は言葉もほとんど分からなかったのですが」


施設長は少し目を細める。


「今ではすっかりこの通りです」


庭の向こうで、ザイロが誰かを追いかけて笑っている。


その声は周りの子どもたちにも伝わるのか、次々と笑い声が広がっていった。


「今ではこの施設で一番元気な男の子ですよ」


施設長は穏やかに言った。


「年下の子の面倒もよく見てくれます」


私はその様子を見つめる。


ザイロは転びそうになった小さな子の手を引き、また走り出していた。


もうすっかり子どもたちの中心だ。


その姿は、どこにでもいる普通の少年だった。


ただ――


とてもよく笑う子だった。

その時だった。


「ねえ!」


さっきの声がまた聞こえる。


振り向くと、ザイロがまたこちらへ走ってきていた。


息を弾ませながら言う。


「また来る?」


「え?」


ザイロは真剣な顔で言う。


「また来る?」


私は笑った。


「わかった!また来るね!」


するとザイロは安心したように笑う。


「よかった!」


ザイロはあっという間に子どもたちの輪の中へ戻っていった。


またすぐに笑い声が庭に広がる。


フードの中で、ビビが小さくもぞもぞと動いた。


どうやら緊張はしていないらしい。


私はその小さな重みを感じながら、その光景をしばらく眺めていた。


元気に走り回る子どもたち。


その中心で笑っているザイロ。


港町らしく、様々な国から流れ着いた子どもたち。


それでも――


ここには、ちゃんと子どもたちの居場所がある。


私は小さく息を吐いた。


「……良い施設ですね」


私がそう言うと、施設長は少し安心したように頷いた。


ルークも庭を見ながら言う。


「元気すぎるくらいだな」


ラーラが肩をすくめる。


「平和そうで何よりだ」


一通りの視察を終え、私たちは門の方へ歩き出した。


ふと振り返ると、


ザイロが遠くからこちらに手を振っている。


私は思わず手を振り返した。


少年は満足そうに笑うと、また鬼ごっこの輪へ戻っていった。


門を出ると、馬車が待っていた。


レオンが静かに言う。


「次はリオナ院ですね」


アクアレアから少し離れた港町――リオナ。


私は頷く。


「ええ」


ルークは馬車に乗り込みながら、ぼそりと言った。


「……リオナか」


その声は小さかった。


だが、どこか引っかかる響きだった。


馬車はゆっくりと動き出す。


港町の喧騒が、ゆっくり背後へ遠ざかっていった。


そして私たちは、次の視察先――


港町リオナへ向かった。

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