六話目
タイトルが○話目とかにするのは、決して良いタイトル名が浮かばないとかじゃないから。
そんなんじゃないから。
夏休みも終わり、また学校が始まる。
「……おはよう、月兎くん」
「おはよう」
夏休みが終わって、僕と文香の関係は特に変わらず、今日も今日とて手を繋いで学校に向かう。
「いやぁ、文香のおかげで、夏休みの宿題が終わってよかったよ」
「……もぅ……。本当は自分でやらないとなんだよ?」
「分かってる分かってる。次はちゃんとやるさ」
なんて適当に答えてるが、夏休みが残り一週間というときに、宿題を思い出し、文香に泣きついた結果である。
文香の答えを一週間かけて丸写しをし、なんとか乗り越えることができそう。
「そういえば、文香の首、なにか掛かってない?」
「……気づいてくれたんだ」
「ちゃんと見てるからな。それで何を垂らしてるの?」
「……これだよ?」
そう言って見せてくれたのは、夏祭りにあげた指輪。
「これ、身につけるの?」
「……うん。月兎くんにもらった大事なものだから。お守り」
「そっか、お守りか。まあ、よく見ないと分からないし、怒られないかな」
服に、少しだけ窪みがある。
でも、小さく膨らんでいるだけで、僕くらいじゃないと気づかないだろう。
ただ、バレると怒られたあと取られるから、そこだけ心配だ。
「……月兎くんも、私のプレゼント使ってくれて、嬉しいよ?」
「文香から貰ったものだから」
なんて話をしながら、学校に向かう。
いつもと変わらない日常。
そしてそのまま、秋になった。
「……ゴホッ。ゴホッ」
ベッドの上で苦しそうにする文香。
体温計で熱を測れば、そこに出てくる数字は38.6。
どう見ても風邪。
「大丈夫……、ではないよねぇ」
「……うん」
季節の変わり目ということで、文香はいつも風邪を引く。
毎年恒例というわけだ。
「僕は学校に行ってくるけど、帰ったらまた来るから」
「……ううん。ここにいると月兎くんまで風邪ひいちゃうよ?」
「文香からの風邪なら大歓迎さ」
なんて言いながら、窓を経由して家から出る。
靴は文香の家にあるわけじゃないから。
本当なら、傍にいたいんだけど、文香はそれを嫌がるから、素直に学校に行く。
自分のせいで他人に迷惑をかけたくない。
文香はそういう女の子なのだ。
というわけで、小学校になってから初めての、一人で登校することに。
☆☆☆☆
学校が終わり、すぐに教室から出る。
帰りの会で、最後に『先生さようなら』とみんなで言って終わりなところを、そこを言わずにダッシュで教室を出る。
後で先生に何か言われそうだけど、その時はその時だ。
ランドセルの底に隠しておいた財布を持って、近くのお店まで走る。
「お会計は──」
文香の好きなプリンを二つ買い、また走って帰る。
今日も放課後に遊ぼうと言ってた友達に一言伝えたけど、後日にまた遊びたいところだ。
家に着き、部屋にランドセルを放り投げて、プリンを持ち文香の部屋に入る。
部屋の扉に鍵を閉めることはあっても、窓に鍵を閉めたことないのは、僕と文香だけの秘密。
「って、寝てるのか」
寝息を立てていた。
プリン、冷蔵庫に入れておこう。
一度、自分の部屋に戻り、リビングの冷蔵庫にプリンを入れておく。
「文香も大変だよな。毎年、この時期に風邪を引いてさ」
文香の部屋に戻ったあと、寝ている彼女の頭を撫でながら語りかける。
「本当は学校なんか行ってる場合じゃないのに、強く僕のことを反対するから」
嫌がれたのだ。
幼稚園の頃、初めて文香が風邪を引いた時、残ると母さんに言ったら、母さんではなく文香が怒った。
「『……月兎くんにはいつも迷惑かけてるから、これ以上はかけたくない』だっけか」
僕的には、別に文香に迷惑をかけられるのは気にしないのに。
というか、迷惑ですら思ってない。
約束したんだ、父さんと。
今は海外で働いてるらしい父さんと、文香を守るって約束を。
「……月兎くん」
頭に置いていた手が、文香に掴まれる。
起きたか、と思ったら、ただの寝言で、僕の手を離さない。
「大丈夫。ここにいるよ」
文香を置いてどこかに行くなんて考えられない。
たとえ、文香が立ち止まったら、僕も一緒に立ち止まる。
「安心して寝てていいよ」
なんて言いながら、ただ文香のベッドで起きるのを待った。
☆☆☆☆
「体調はどう?」
夕方になり、文香の母さんがやってきた。
「……よくなったよ」
「それは良かった。月兎くんもいてくれたのね」
「文香が熱を出して、僕が遊んでいるわけにはいかないから」
「ありがとうね。それで、文香は何か食べれそう?」
「……少しだけ」
「なら、今お粥作ってくるから、少し待ってて」
部屋から出ていく。
「元気になって……。いや元気になってはいないか。とりあえず、朝よりかは良くなって安心したよ」
「……うん。月兎くんもありがとう」
「僕は何もしてないよ」
ただ隣にいただけだ。
なんでか知らないけど、僕はいまだに風邪をひいたことが無い。
文香の母さんがお粥を持ってきてくれたから、文香に食べさせる。
「ほら、口開けて」
「……あーん」
一口ずつ、ゆっくりと食べさせていく。
スプーンで掬って、熱いから息を吹きかけてから食べさせる。
それを何度か繰り返すと、お粥がなくなった。
「全部食べれてよかったよ」
「……そろそろ、風邪の時も自分で食べるよ?」
「病人にそんなことさせるわけないでしょ?」
「……恥ずかしい」
「可愛いから大丈夫」
なんて返してから、お粥の入ったお椀を一階まで持っていく。
「あら、わざわざ持ってきてくれたの?」
「うん。洗うだろうから」
「ありがとうね。助かるわ」
文香の部屋に戻り、そのまま窓を通る。
冷蔵庫からプリンを持ってくるためだ。
「さあ文香。デザートの時間だよ」
「……プリン、買ってきてくれたの?」
「もちろん。文香の好きなものだから」
お粥の時と同じように、プリンも食べさせる。
「……お金、あとで払うよ」
「気にしなくていいよ」
「……でも」
基本的に、お小遣いは文香のために使っているのがほとんどだ。
だから、プリンの一つや二つ買っても、特に問題もない。
「甘えてくれていいよ。文香が喜んでくれるのが、何よりも嬉しいからさ」
「……うん。ありがとう」
二人で笑う。
秋になり、気温も下がってきた。
食べ終えたなら、また文香をベッドに寝かす。
「月兎くんは、ご飯食べないの?」
「食べるよ。ちょっと待ってて」
部屋に戻り、リビングに行けばハンバーグがあった。
「いただきます」
一気に喉へと流してく。
さっさと食べて、お風呂に入り文香の部屋に戻ってくる。
ここまで大体二十分も経たない。
「……早いよ」
「これも文香のためさ。それより、今日はもう家にいる理由もないから、今日はもうここにいるよ」
「……本当に?」
「本当に」
「……一つだけ、甘えていい?」
珍しい。
文香がこんなことを言うなんて。
いつもは、文香の考えていることを僕が考え当てているのに。
「僕ができることなら、なんでもするよ」
「……一緒に寝てくれる?」
その言葉に、一瞬だけドキッとしたけど、すぐに気持ちを変えて文香に言う。
「それくらいならいつでも。隣空けて」
僕がそう言うと、文香はベッドの端に動いていく。
隣に入り、文香と目を合わせる。
「……なんだか恥ずかしいね」
「まあそうだね。とりあえず、朝まで寝よう」
「……うん」
僕たちは眠りについた。
そうして、二年生になった。
私も幼馴染がほしい…!!!
可愛くて清楚で一途でなんだかんだ養ってくれる。
そんな幼馴染がほしい……!!
妄想が過ぎるぞ。




