世界の終わりが近いけど今日くらい寝て過ごす
世界が終わる七日間が始まった数日後、マサラに在中していたとある一人のプレイヤーが、ふとこんなことを呟いた。
「…俺たち、このまま終わっていいのかな?」
「突然どうしたんだよ?」
「だって、あと3日でこのゲームが終わるんだろ?。それなのに…このままマサラで終わりを待ってるだけでいいのかな?」
「まぁ、たしかにこのままなにもせずに終わっちまうのも味気ないわな」
「みんなでいれる最後の三日間なんだ。最後になんかやって終わりたいんだよ」
「わかるわぁ、最後に思い出作りたいよな」
「でも、なにをやるんだよ?」
「なんだろうなぁ…こう、なんかドカンと一発やりたいんだよな」
「なんだよ?ドカンと一発って」
「さぁ、わかんね」
「いやいや、決まってんじゃん。ドカンと一発って言ったらさ…やっぱり花火だろ?」
「花火か…いいな、それ」
「せっかくだから、フレにあたって可能な限り協力者を募ってさ、世界各地で一斉に同時にドカンってのはどうだ?」
「おお!いいな!それ」
「よっしゃ!早速フレに連絡してみるぜ!」
こうして、世界中のプレイヤー達が最後の思い出作りのために密かに暗躍し始めたとさ。
世界が終わる最後の7日間の4日目…昨日のカジノによってなけなしの金を搾取された田中一行は野宿を強いられ、その一人であるユーキは燦々と照りつける朝日に目が覚め、あくび混じりに身体を伸ばして起床した。
「…いい天気だ」
ユーキは早朝独特の爽やかな風を浴びながら満足気にそう呟いた。
そして傍らで眠るシンと田中に目をやり、二人を起こすために声を張った。
「起きろぉ!朝だぞぉ!」
ユーキに起こされ、渋々といった感じに起き上がるシンに反して、田中はいじらしく就寝に執着して寝言のように呟いた。
「…あと5分」
そう言って起床を拒絶する田中に二度寝するには絶好の天気であることも相まってユーキはやれやれと言った感じに田中をもう少し寝かせてやることにした。
「あと3日しかないんだし…今日くらいもう少し寝かせてやるか」
もうすぐ消えるかもしれないなどとは微塵も感じ取れない田中の間抜けそうな寝顔を見つめ、ユーキはそんなことを口にした。
そして…5分が経過した。
「田中、5分たったぞ?」
「…あと10分」
「『運命』とやらをぶっ壊しに行くんじゃないのか?」
「…あと20分したら…」
「増えてんじゃねえか」
一向に起きる気配のない田中に呆れながらそんなことを吐き出して、ユーキは困ったようにシンと顔を見合わせた。
「まぁ、今日くらいもう少しゆっくりしてもいいんじゃない?」
田中の意向を少しでも叶えたい思いもあったのか、シンはユーキはそんなことを口にした。
「シンもそう言うならもう少しくらい待ちますか」
シンの言葉もあってか、ユーキは今日くらいはゆっくり田中を寝かせてやることにした。
そして…なんやかんやで12時間が経過した。
「…おい、田中。お前マジでいつまで寝てんだよ」
もう日も沈みかけているにも関わらず、横になったまま地蔵のように動かない田中にユーキは怒り混じりにそう声をかけた。
「…あと12時間…」
「マジで1日終わっちまうじゃねーか!!」
流石に堪忍袋の尾が切れたユーキは眠りこける田中を全力で揺さぶりながら声をかけた。
「あと3日しかねえんだぞ!?。このままなにもせずに終わっていいのかよ!?。昨日言ってた、『運命』ってやつをぶっ壊しに行かなくていいのかよ!?」
ユーキの必死の揺さぶりに根負けしたのか、田中は気だるそうに身体を起こし、不機嫌そうに口を開いた。
「昨日は…なんか勢いで言っちゃっただけで、冷静に考えてみるとそんなの無理だし…寝る」
どうやら昨日思わず口走ってしまった『運命』という言葉は夜という空気も相まって少々テンションが上がってしまった故に出てきてしまった言葉のようで、今考えてみると恥ずかしくなってしまったのか、顔を背けて再びふて寝をし始めた。
「無理かどうかなんてやってみなきゃわかんないだろ?。冒険してたら何か手がかりが見つかるかもしれないし…」
「頑張って頑張って…それで無理だったら虚しくなるじゃん。いざ消える時に、変な希望を持ったせいで苦しみたくない。どうせ消えるなら、このまま穏やかに消えたいんだよ」
田中はふて寝しながらボソボソと呟くようにユーキとシンにそう告げた。
「まだ消えるって決まったわけじゃないだろ!!」
「そうだよ!この冒険で何か見つかるかもしれないし…」
後ろ向きな田中に二人はそう声を上げるが、そんな二人に田中は端的にこう質問をした。
「じゃあ…見つからなかった時の責任取れるの?」
そんな田中の質問に二人は言葉に詰まってしまった。
そんな二人の反応を見かねた田中は宥めるようにこう付け加えた。
「二人が私のことを思って言ってくれてるのは分かってる。でも、そういうことだから…」
完全に諦めきった田中の言葉が虚しく響いた。
誰にももうどうしようもない。そう認めざるを得ない状況なのは間違いない。
だけど…それでもユーキははっきりとこう言った。
「じゃあ、責任取ってやるよ」
「…え?」
「見つからなかった時の責任、ちゃんと俺が取ってやるよ!!」
ユーキの言葉に田中が呆然としていると、ユーキがすかさず叫んだ。
「俺は諦めたりなんかしない。必ずお前を助けてみせる!!。その糸口を掴んでみせる!!。だからお前も答えてみせろ」
真っ直ぐに田中を見つめながらそう叫ぶユーキを見て、田中はそっと頰を緩めてボソリとこう言った。
「やっぱり…ユーキはバカだなぁ」
そしてむくりとその場に立ち上がり、何も言わずに歩き始めた。
「もしかして…行く気になったの?冒険」
そんなシンの問いかけに、田中は呆れたようにこう答えた。
「まさか。…ただ、ユーキがうるさくて眠れやしないから、仕方なく冒険に出てやるだけだよ」
田中の答えを聞いたシンとユーキは顔を見合わせて笑い合った。
「素直じゃないなあ」
「全くだ」
そうしてまた、三人は冒険へと出かけるのであった。
世界の終末まで…残り3日。




