第9話 デビュタント 家族と共に王宮へ
学園のダンスホールは、本当に王宮のダンスホールを模して造っているんだなぁ、と思う。おかげで、最初の時のように、圧倒されることはない。
保護者同伴って感じの、デビュタント用の白いドレスを纏った令嬢があちらこちらにいる。普通の夜会と違って、今日はデビュタントする令嬢とその家族や親族、婚約者しか参加していない。
今日は、待ちに待ったデビュタントの当日。
リナもデビュタント用に作って貰った白いドレスを身に纏い、エスコート役のルイスお兄様と会場入りした。
この世界では、デビュタントのエスコートは、例え婚約者がいても身内が原則。
それも、謁見の間の控え室前までしかエスコートできない。
本当に身分関係なく、それぞれの令嬢が1人で頑張らなければいけないのだ。
しばらくは、リナはルイスに連れられて、紹介がてらの挨拶回りをしていた。
そのうちに、デビュタント予定の令嬢が王宮の使用人の方から声をかけられて、一人また一人と会場を後にする。
そのうち私のところにもやってきた。
謁見の控えの間まで、エスコートしてくれたルイスが
「別に失敗しても、かまわないからね。気楽に行っておいで」
と、送り出してくれた。少し気が楽になる。
してないつもりでも、やっぱり緊張していたようだった。吉岡里奈のままだったら、一生しないはずの経験だ。
ルイスの何気ない一言の中には、失敗した責任はこっちでとるから、という意味も含まれている。
(こうやって、私は守られて来たんだ)
ちょっとの間だ。
子爵令嬢なんて、王様の記憶にも残らない些細な存在。胸を張って、礼を尽くそう。
謁見は原則的には、身分の高い令嬢から行われる。
控えの間に入ったときには、最後の伯爵令嬢が呼ばれて行くところだった。
座るための椅子も用意されていたが、どの令嬢もドレスが皺になるのを恐れてか、使った形跡が無い。
(まぁ、そうだよね)
控え室には、クラスメイトの子爵令嬢が数名いる。皆、無言だ。
(私は何番目かな)
そんなことを思っていると、すぐに呼ばれた。
「リナ・ポートフェン子爵令嬢様」
返事はしなくて良い。呼ばれた方に向かう。
王宮の使用人の方が、タイミングを見て謁見の間の扉を開けてくれた。




