第8話 リナ・ポートフェンの成績と実家へ
新入生達も学園生活に慣れた頃、年に2回の定期テストの結果が発表された。
卒業後、王宮勤めをするための大学や、騎士養成学校に進路を定めている子息達は結果を少し気にしなければならない。
リナは、でかでかと張り出されている結果発表の順位表の前で、呆然としていた。
何という快挙でしょう! 王子殿下たちも上位貴族たちも全て抜かして、子爵令嬢が1位とってますよ。
(バカなんですか? 私……。ハッキリ、バカでしょう。消えたい)
大学入学の参考にするって言ってたから、みんな良い点採ってくると思って油断した。どこの世界も、学生は自主的に勉強しない。《一部の学生除く》
語学に至っては自動翻訳だったものな。
っていうか、王太子殿下……もう少し頑張ろうよ。外交とかするんでしょう?
後ろがザワザワしている。振り向きたくないとリナは心底思う。
「リナ嬢」
でも、ジークフリートに呼ばれて振り向かない訳にいかない。
にこやかな顔を作って振り向く。
そこには、ジークフリートとアランがそろっていた。
「すごいね、リナ。僕にも今度教えてくれないかなぁ」
と純粋に感心しているアラン。
「リナ嬢は、語学が得意なのだね。私と一緒に外交とかも出来るね」
ジークフリートも、リナを取り込むこと前提でものを言っている。
(語学が出来るだけで外交が出来るのなら、私は前の世界でも外交官やってましたよ。英語使って仕事してたし)
ちなみに成績順位は、1位リナ・ポートフェン 2位ジークフリート 3位アラン同点3位エイリーン・マクレガーとなっている。
……もしかしたら、王族の方々にみんな遠慮したのかも知れない。
結果はともかく、このテスト終了で、学園はしばらくはのんびりムードになる。
後、1ヶ月足らずで社交シーズン始まるので、その準備の為、普段は領地経営をしている貴族たちが王都に戻ってくる。
それに伴い、家族が戻って来た王都のお屋敷で過ごすご令嬢も多くなって、女子寮を中心に閑散となってしまうからだ。
アルフレッドは、寮に残るようだけど、リナはこのシーズンはデビュタントがある。準備とレッスンの為、マリアと共に、王都にあるお屋敷に戻ることになった。
主人公のお屋敷は、ゲームには出てこない。
それにも関わらず、リナは帰って来られてホッとしていた。
見ず知らずの人々に囲まれるのではなく。ちゃんと侍女も使用人も見覚えがある。まだ、3ヶ月しか空けてないのに懐かしさすら覚えていた。
中に入ると、上の兄、ルイス・ポートフェンが出迎えてくれる。
「お帰り、リナ。久しぶりだね。よく顔を見せて」
両手を広げておいでってしてくれる。
「ルイス兄様」
少し恥ずかしい気がしたけど、駆け寄って抱きしめてもらった。ルイスは、父親似で栗色の髪をしている。アルフレッドよりも少し背が高く、がっしりしている。大人の体型だ。
「お兄様こそお元気でしたか? 領地でのお話をして下さるんでしょ?」
「ああ。でも、まずは父様に挨拶しておいで……書斎でそわそわしてるよ」
会わなくても、父の様子が浮かんだ。
「着替えなくても良いかしら」
「そのままでいいよ。早く行っておあげ」
促されるまま、リナは書斎に向かう。
軽くノックすると
「お入り」
と、優しい声がする。
「失礼します、お父様。ただいま戻りました」
と挨拶すると、ルイスと同じように両手を広げておいでって感じだったので、ためらわず抱きついた。
「お帰り。学園の方はどうだい。なじめそうかい?」
「はい。クラスの皆様がよくして下さって。お勉強もがんばれました」
やらかした感半端なかった成績も、親が喜んでくれるならそれで良い。
「そうか……それは、良かった」
「はい」
それから、久しぶりの家族団らんで……アルフレッドは寮に残っているけど……私は久しぶりに、のんびりとした気分で、楽しむことが出来た。
それからは、デビュタントの支度や、マナーレッスンで忙しくなった。
なんたって、1人ずつ王様、王妃様他側室の皆様方、主立った貴族の方々がそろった謁見の間に入り、王様と王妃様に礼をとるんだ。
王族の方々がいる前方に近寄れるのは、伯爵家以上の令嬢で、子爵令嬢は謁見の間の中央付近で礼をとり、お言葉を頂くのを待つ。
お言葉を頂いたら「お言葉、有り難く頂戴いたします」と言って速やかに退出。
簡単そうに見えて、この短い時間が大変なんだ。
学園生の間は、多少の失敗は大目に見てもらえるというけど。
あまりひどいと、親は処罰対象になるかもしれないという噂もある。
噂を信じる訳じゃないけど、レッスンは完璧にしておこう。




