第7話 不機嫌セドリックとアラン王子
ポートフェン子爵の兄妹と別れて、セドリックは廊下を歩いて寮に戻っていた。
珍しく、不機嫌なのを隠していない。
(リナ・ポートフェンのあの夜会の時の無防備さはどこに行ったんだ)
「珍しいんじゃない。そんなに不機嫌なの、何かあったの?」
誰もいないと思って、セドリックが不機嫌全開で歩いてたら、後ろから声がかかった。
「アラン様」
「アランで良いよ。僕の方が後輩だし。部屋に来る?」
アランは、相変わらずのほほんとして、何を考えているのかわからない感じだ。
バカでも、頭がよく見えてもいけない。そんな立場をよく分かっている。
アランの部屋に行くと、侍女が二人分の席を用意し紅茶を入れていた。
そのまま、その侍女を続きの間に下がらせて、二人でお茶を飲む。
「何かあったの?」
「リナ・ポートフェンに振られた」
「へ~。それこそ、珍しいね。良いお兄様を演じられなかったんだ」
「最初から、ああも警戒されてたらな」
セドリックは溜息交じりに言った。もう、不機嫌さは感じさせない。
「警戒?」
アランが少し怪訝そうな顔をする。
「ほとんど初対面のハズなんだが。アルフレッドから、何か吹き込まれたのかな」
だけど、あの時のリナは自分の判断で行動していたように、セドリックには見えた。
「あの子、夜会の時とは軽く別人? って感じだものね。あのポートフェン子爵家の娘だから、頭が良くてもおかしくはないんだけど。つくづく噂は当てにならないな」
頬杖を付いてぼやくようにアランが言う。
「夜会の時は、バカな小娘だと思ってたんだけどなぁ~。アルフレッド・ポートフェンを取り込む材料にはならないか。というか、リナ・ポートフェンにも価値がありそうだよな」
「無理じゃない? アルフレッドが妹を溺愛しているのは本当だと思うよ。今日もガードされたんだろ?」
「背に庇われてたけど、こっちが挑発したら、ちゃんと出てきたぜ」
「へぇ~、それはまた」
アランが少し面白いものを見るような顔をする。
そして、思い出したように言った。
「リナをいじめた令嬢たちも、結局リナに取り込まれているものね」
「……すごいな」
セドリックは、素で感心した。
(これでデビュタント前なのか? 俺との攻防といい。自分に悪意を持っていた令嬢達を取り込む手腕……冗談はやめてくれって感じだ)
「アランも、もう少し頑張ってくれよ。リナ・ポートフェン取り込むの」
「イヤだよ、面倒くさい。僕は兄さんの補佐が出来れば、それが一番良いと思ってるんだから」
現状、それが一番難しいんだけどね、というのは双方の思い。
「リナが大人しく守られてる子どもだったら、楽だったんだけどなぁ」
現状、アルフレッドはどちらの派閥にも興味ないように見えるけど、リナの方はどうかな? と思う。
あの家が、ただの子爵家なら放っておかれたんだろうけど……。
どちらにしろ、すぐにリナも戦力と見なされてしまうだろう。
まだ、年端もいかない女の子なのに……な。
セドリックは、深い溜息をついた。




