第6話 セドリックとアルフレッドお兄様
「あまり妹をいじめないで頂けますか? クランベリー様」
サッと、リナとセドリックの間に入って妹を背に庇う、2番目の兄、アルフレッド・ポートフェン。
見た目は、少しリナに似ている。だけど、ずっと年の近い妹を、こんな風に庇ってきて、実年齢よりは、ずいぶん大人びた感じがしていた。
「アル兄様」
首だけ振り向いたアルフレッドは目で大丈夫だ、と言ってきた。
「ずいぶん人聞きが悪いな。アルフレッド」
セドリックは苦笑いしている。
「怯えてる子どもに絡んでるようにしか、見えませんでしたので」
「子どもって……あのなぁ、この学園にいるってことは今年デビュタントだろ? あまりに過保護なのもどうかと思うぜ。なぁ、リナちゃん」
私に視線を合わせるように、屈み込みながらアルフレッドの背にかばわれたリナに訊く。
アルフレッドはさらに隠すように、身体をずらした。
デビュタント……15歳になった令嬢が王宮で国王陛下や王族・貴族の前で挨拶をする。それをもって淑女と認定され、様々な夜会に参加することが出来るという。
王族・貴族の令嬢達には、一生に一度の晴れ舞台。
さすがにデビュタント後、未成年ではあるけれど一人前の淑女が、身内の陰に隠れることは許されない。
(今なら、アルフレッドがいる。私が失敗しても、フォローしてくれる)
「そうですわね。失礼致しました。クランベリー様」
アルフレッドの背から出て頭を下げると、まだ自分の手が震えてるのが見えた。
(どれだけ怖いんだ。しっかりしろ、私)
「セドリックで良いっていってるのに」
ブスくれたような表情を作ってみせる。セドリックは、なんとかリナの警戒を解こうとしていた。
「兄がクランベリー様と呼んでるのに妹の私が、殿方のしかも上級生の方のファーストネームを呼ぶわけには参りませんわ」
リナはにこやかに笑って見せた。手は相変わらず震えているのに。
手強いなと、セドリックは思う。降参だ。
「悪かった。怯えさせる気は無かったんだ。お前もなぁ~、絶対わざとだろう。普段は名前で呼んでるのに」
「人の妹に、ちょっかいかける方が、悪いんですよ」
(仲良いの?)
「というわけで。よろしく」
笑顔を貼り付けたまま無言のリナに気を悪くした様子も無く、
「じゃ、またな」
とだけ言って、セドリックは行ってしまった。
完全にセドリックが見えなくなってからリナは訊いてみた。
「仲良いのですか?」
アルフレッドは、肩をすくめて
「クラスメイトさ」
と言って、それよりと続けた。
「大丈夫だったかい? リナ」
手の震えを気にしていたのだろう。そんなに怖かったのか……と。
アルフレッドは、リナの手を自分の両手で包んでくれる。
「アル兄様が……来てくれて良かったです」
(本当によかった。私一人だと取り込まれてたかも知れない)
少し……計算では無く。安心感から、甘えたような笑顔で、アルフレッドを見上げてしまった。
ガチでセドリックと渡り合えるこの人が、絶対的な味方でよかった。
二人も相手できません。




