第5話 セドリックとの邂逅
中庭を抜けると1年生と2年生の教室を繋ぐ廊下に入る。1年生の令嬢達はその廊下を通らないと、寮に戻れないようになっていた。
リナは、ジークフリートのお茶会を抜け出して中庭から廊下に入り、寮の方に戻ろうとしていた。
自分のこれからの事を考えながら、廊下を歩いていたら誰かとぶつかってしまった。華奢なリナが思わずよろけてしまったのを、男の人の大きな手で支えられる。
「申し訳ない。大丈夫だった?」
「こちらこそ申し訳ございません。前をよく見て無くて……」
リナは、そう言いながら顔を上げ。一瞬、固まってしまった。
ぶつかってしまったのは、2年生の第二王子派の公爵家にして近衛騎士団団長のご子息、セドリック・クランベリー。
アランルートのお助けキャラだ。
あの夜会以来、アランと接触した覚えはない。アランルートには入っていないはずだ。
私がジークフリートのところに仕方無くでも行っていたのは、アランルートに入らないため。
ゲーム内の設定では、セドリックはかなり頭の切れる男性のはず。
ジークフリートやその派閥を出し抜き、主人公をアランの恋人にしてしまう。
ノーマルルートを目指しているリナとしては、セドリックが出てきた時点で、半分詰んだ状態になってしまっていた。
「おや。君は、夜会の」
挨拶をしないわけには行かない。身分以前に、向こうは先輩だ。
「リナ・ポートフェンと申します」
ふんわり、令嬢としての礼を執る。
「失礼しました。セドリック・クランベリーです。セドリックと呼んで下さい。以後、よろしくお願いします」
こちらも上位貴族らしく、完璧な礼を執ってくる。
(よろしくしたくない。というか、言質とられそう)
「……あの?」
不安そうに見えるだろうか。真意が知りたくて上目遣いに見上げた。
小声で『へぇ~』って聞こえた。笑顔が少し怖い。
(なんなの? 私、また何かやらかした?)
心臓がバクバクする。手が……震えてしまう、意識しても止まらない。
リナの様子に感づいたのか、セドリックは優しいお兄さんの笑顔になって言った。
「ああ。アランが結構気に入ってたから、俺とも頻繁に会うようになると思うよ。だから、よろしく」
今までの形式的な物腰とは違い。いきなり態度がくだけた。
やっぱり、アランとくっつける為に出てきたんだ。
だけど、何なのだろう。セドリックの年齢設定は無かったけれど、学園に在学してると言う事は、まだ10代のはず。
なのに、味方じゃ無かったらこんなに怖いんだ、この男性。




