第78話 新人近衛騎士始めました
近衛は騎士団の上位職。本来、騎士団を5年以上経験した後に希望者が騎士団長の推薦を受けた上で、テストを受けて配属されると言われた。
通常業務は、関係無いはずだったのだけど、近衛の仕事は通常業務にしか無い。
あの会談の後、団長たちと町の警備とか色々詰めて話し合った結果。
騎士団員のほとんどが駆り出されることになって、リナは訓練所に行く意味が無くなった。
まぁ、まだアボット侯爵との会談も調整中だしね。
リナの任務は、アランの妹君の護衛。
(あれ? アランの妹って、アランルートにいなかったっけ?)
容姿がアランそっくりの超ワガママ王女様。えっと、名前はフイリッシア。年齢は12歳。
「ポートフェン殿。これから会うのは王族です。くれぐれも粗相の無いように願います」
というのは、第4部隊隊長ネイト・オールストン。栗色の髪の端正で少し神経質な顔立ちの前世でだったらリナと同じ歳かちょっと上? って感じのリナの指南役。
宰相から、バリバリの第二王子過激派なので気をつけなさいと言われてた。
って言うか、この第4部隊自体がホールデン公爵家の息がかかってるんだよね。
ちなみに第3部隊は王太子派でエイリーンの護衛になるので、甘やかされてお終いって事で、第4部隊になったのだけど。
「分かりました。オールストン隊長」
少し歩いているとフイリッシアの部屋の前に付いたようで、オールストン隊長が居住まいを正し部屋をノックする。
「ネイト・オールストンです。リナ・ポートフェンを連れて参りました」
入り口でそう言って部屋に入る。リナも後に続いた。
「今日から2週間。見習いとして護衛にあたるリナ・ポートフェンです」
隊長から挨拶しろと促された。ちゃんと教育はしてくれるらしい。
「リナ・ポートフェンです。よろしくお願いします」
リナは、昨日サイラスから習った騎士の礼を執る。
「リナ? 女性みたいな名前だね」
(ゲッ、アランいるし)
アランは何を考えているのかわからない感じで、にこやかに訊いてくる。
リナは、答えて良いものかと隊長をチラッと見た。
「アラン王子殿下が質問されてる」
(あ……答えろって事ですね)
「男ばかり続いたので女の子の名前しか考えて無く、そのまま付けられました」
「それは、大変だったね」
アランの声が震えてる。笑っているのがバレバレだ。
アランはリナの方にやってきた。自然な仕草でアランの手がリナの髪に触れる。
顔が近付いて来たかと思ったら耳元でささやかれた。
「頼む。言うことを聞いて」
ハタから見たら頬か耳にキスされたように見えたかも知れない。
リナが、え? って感じで反応したから。
(アラン?)
「可愛い子連れてきたね、オールストン。僕、この子気に入っちゃった」
「お戯れを、まだほんの子どもでございます。ここに通うのも2週間程度のもの、どうかお見逃し下さい」
(あれ? オールストン隊長が庇ってくれてる)
それじゃ、この人の後ろに隠れちゃおうって感じで、リナが隊長の後ろに下がった。隊長の方も自分の身体をずらして、リナの盾になる。
何で隠れるかなぁ……とアランは思うが、まぁ、夜伽命令に聞こえるものね。
「お兄様。私の護衛よ。取らないで」
「ああ……妹のフイリッシアだよ。今年12歳になるんだ」
「リナ・ポートフェンと申します。短い間ですが華のように可憐な姫君に使える事が出来て、光栄に思います」
リナはオールストン隊長の背から出て、椅子に座っているフイリッシアの前で跪いて、手の甲に口づけをして、礼を尽くした。
え? 尽くしすぎ? お顔が赤くなってる。
「誰が教えたんだよ。そんな礼の仕方」
アランは思わず素が出てしまった。
「え? サイラス・ホールデン団長……ですが?」
周囲の反応に、リナは戸惑ってしまった。習った通りにしたのに。
「あの方の、礼儀作法はとりあえず忘れて下さい」
オールストンは、後で教え直さないと、と思いつつ溜息をついた。




