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第77話 リナちゃんは下町に行ってきたので報告会を開きます

 翌日、宰相の執務室ではちょっと手狭なので、前の世界で言う小さい会議室のようなところに集まって貰った。

 メンバーは、宰相、近衛騎士団長、騎士団長、クリフォード、セドリック、フィルとリナの7名。

 昨日、市場調査に行ったメンバーに参加して貰ったのは、リナがその翡翠を男性から貰った現場を目撃している証人だからだ。


 円卓の真ん中に、昨日貰った。翡翠が置いてある。

 なんと、国王も宰相も、王宮の頭脳(ブレイン)と言われる宮廷魔道士達も、この宝石の名前を知らなかった。


「忙しい中、お時間を頂きまして、ありがとうございます。昨日、市場調査に行った時に、気になった点だけでもお知らせしなければと、両団長においで頂きました。まず、そちらの宝石をご覧下さい」

 そう言ってリナは、円卓の中央に置いてある翡翠を手で示す。

「午前中に国王陛下と宰相様方にも確認して頂きましたが、我が国で産出していない物だと伺いました」

「そうだな。これをどこで手に入れたのかね」

 近衛騎士団長クランベリー公爵が訊いてくる。


「はい。下町の大衆食堂に食事に来ていた海外の方に頂きました」

「海外……の、かね」

「はい。船で海を渡ってきたと言ってました。国内にいては分からないかも知れないが、この国は外から見ると霧の覆われていると。それが時々、入れるようになったと。ラッキーだったと言ってました」

「宝石を持っているって事は、商人だったのかね?」

(う~ん。その辺の情報は分からない。夕方の忙しい時間帯だったし、突っ込んで訊くのも変だったし)

 リナは憶測を口にするのは嫌いだ。嫌いなんだが……。


「憶測でよろしければ、お答えしますが」

「憶測でかまわん。どんな風に思ったのかね」

「私たちと同じ感じがしました」

「貴族……ということか?」

 これは、騎士団長のサイラス。


「その国に貴族制度があれば……ですが。上流階級の方がわざと庶民の振りをしているような。船乗りだという感じでは、無かったです」

「なぜ昨日帰ってすぐに、言わなかった。もしくはその場でなぜ捕らえなかった。現場に騎士が2人もいたんだ。その場で拘束することも出来ただろう」

 サイラスが、大きな声でいう。それに対して、完全に前の世界の仕事(ビジネス)モードになっているリナは冷静だ。


「海外の……どういう立場にいるか分からない方を、ですか?」

「関係無いだろう。そんなこと」

 そう言いつのるサイラスにリナは溜息が出る。

「船は、1人では動かせません。また、どこにあるか分からない、霧に覆われた国に入るのに船一隻で来るとお思いですか?」

 前の世界のリナからすれば、サイラスも年下。そして、ここは感情的にものを言う場ではない。

 冷静にこれからの対処を話合う論議の場だ。

「確かに、あの男性を拘束するのは簡単です。ですが、その後は? 船一隻でも帰してしまえば、相手に戦争を仕掛ける口実を与えることになるのですよ」

「なっ」

「どれだけの軍事力があるかも分からない国に、事前情報も無く攻め込まれることになる。貴方は、我が国を滅ぼしたいのですか」

 あくまでも冷静に静かに言ったリナの言葉に、サイラスはカチンと来たようだった。

 サイラスは、リナを睨んでたけど、リナの方は、その視線を受け止めるだけに留(とど)めた。

 リナも今は、子どもの振りをする余裕が無い。

 このままでは埒が明かないと思い、話を本筋に戻す。


「失礼致しました。話を続けます。そちらの宝石をお見せしたのは、我が国に存在しない物を持っている海外の方の存在を信じて貰うためです」

「我々を呼んだのは、騎士団に警備体制を取って貰うためかね?」

 クランベリー公が先を読んで言ってくれる。

「お願い出来ますでしょうか。諜報活動も含めて」

「かまわんよ。後で話を詰めようか。騎士団長殿もそれで良いかね」

「了解しました」

 渋々といった感じでも無くサイラスも同意した。少し冷静さを取り戻したようだった。

「ありがとうございます」

 リナは両団長にお礼を言った。


 クランベリー公が味方で、リナは正直助かったと思う。

 でも、実行するのはサイラス率いる、騎士団の方だ。

 リナは解散した後で、てててっと、サイラス……騎士団長の後を追いかけた。

(足速いなぁ)

 なんか、サイラスは本当に途中まで気付いて無かったようで。


「ん? なんだ、付いてきてたのか」

 リナに気付くと立ち止まって待ってくれていた。

 追いついて、ゼイゼイ言っていると、

「大丈夫か?」

 と言って背中を撫でてくれる。

「すみません。大丈夫です」

 落ち着くまで、待ってくれた。基本的にサイラスは部下には優しい。


「あのっ。先程は生意気なこと言ってしまって、すみません」

 リナは、ぺこんと頭を下げる。

「あ~。あれは、まぁ。あんたが正しいかな」

 サイラスは、先程のリナと自分の言動を思い返しながら言う。

 我ながら、短絡的だったと思っていたから。

「すまんな、引くに引けなく無って、睨み付けてしまって。心配しなくても、ちゃんとリナ嬢の指示に従うよ」

「あ……いえ。わかんないんで話し合いって形になりますが」

 一瞬、間が空いてサイラスが笑い出した。

「いや、あんた最高だわ」

(……褒められた気がしない)







 王宮の奥の奥。王族のプライベートスペース。

 リナは近衛の制服を着せられて、近衛騎士団第4部隊隊長に連れられ歩いている。

 いわゆる男装をさせられて連れてこられていた。

 髪の毛は、引っ詰めてカツラの中に押し込めた。何かの拍子で地毛がカツラから出たときのために、髪の色は変えてない。

 男の子として考えると、外見年齢10歳前後。どうしてこうなった。

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