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第72話 リナちゃんは下町に行きたい 団長とセドリック

「なるほど……一矢報いる気満々な訳だな。クランベリー公爵を落としたのは、伊達じゃ無いって訳か」

 リナは、サイラスの雰囲気が団長に戻ったのを感じた。


「こっち側の人間を今更どうのこうのしないさ。今のは、ものを知らない子どもへの単なる警告。派閥関係無く、親兄弟以外の男を信用するな。了解?」

(もともと、部下への警告だしな)

「了解です。でももう、子どものふりは、限界ですかね」

 今でも充分子どもだと思うとは、賢明なサイラスは言わない。

 ああ、そうかリナは16歳だ。

「結婚適齢期には入ってるしな。あんたの親父さんが握りつぶした縁談も結構あるんじゃないかな」

 結婚って訊いてうんざりした顔しているな。リナは、まだそんな気持ちになれないか。


「それに、ホールデン侯爵家に取り込まれるんだったら、相手は俺だよ」

「レイモンド様じゃなくて?」

(おや、そっちが好みか?)

「レイモンドは……もう婚約者がいるからなぁ。だが、あんたがあっちの方が良いって言うなら」

「どっちも嫌です」

「そりゃそうか。残念だけど仕方ない」

(この辺、本当にどうでも良いんだな。この人たちって。セドリックと反応が似てるや)

「話に、ついて行けてないみたいだな」

「はぁ、結婚は、好きな人としたいです」

 リナの何気ない本音のつぶやきに、団長は吹き出して、笑い出した。

(変なこと言ったかな?)

 そんな中、コンコンってノックの音がした。


「セドリック・クランベリーです。入ります」

 セドリックが許可取るまでも無く入ってきたけど……。

 目の前の惨状……団長、まだヒーヒー言って大笑いしてる。

 そろそろ、呼吸困難が心配なレベル? ……を見て、リナに訊いてきた。


「何?これ」

「さぁ」

(何が笑いのツボなのか分からん)

「あ……セド……リッ、ちょっと待て」

 サイラスは、笑いを必死で止めて。部屋に備え付けられてる水差しから、水飲んでる。

「あ~、死ぬかと思った」

「何かありましたか?」

「いや……リナ嬢があまりにも可愛いこと言うもんで」

「可愛いこと?」

 セドリックが、怪訝そうな顔になる。


「それは……まぁ。後から彼女に訊きたまえ。今、言ったら笑いを堪えられなくなる」

「ギャグを言った覚えはないんですけどね」

「後(・)で(・)…にしてくれ。リナ嬢」

「はい。団長」

「それで……だ。セドリック。お前、リナ嬢に四六時中張り付いとけ」

「無理ですね」

「上官命令だぞ」

「リナ嬢の護衛依頼はすでに宰相から受けてます。よって、団長の命令は却下できます」

「なるほど、宰相の命令の方が優先されるな。だけど、護衛だから仕事一緒じゃ無いか」

「四六時中、私が張り付いてましたら、リナ嬢がしてることの意味が無くなります。自由の確保も仕事に入ってますから」


「その所為で、危ない目に遭っても?」

「安全な場所を放棄してきてるのですから、自業自得でしょう」

 セドリックがリナに、何かあったのか? って目で言ってきてる。

 その視線に、リナは肩をすくめてみせる。

(何にも無いよ。セドリック呼んでた時点で、何もする気無かったんじゃん)


「勘違いしてるかも知れないので言いますが。近衛団長は純粋にリナ嬢を認めてます。あの近衛団長の殺気の混ざった威圧の中、優雅に笑って話し続けられる人間を自分を含めて、私は知りません。『剣が無くてもどうこうできる』と言われても『自分の見る目が無かった』と言い切りました。そして、自分の欲しい言葉を、ちゃんと近衛団長から引き出してます」

(あ~、そんな風に見えてたのか。過去の自分すごい)

「それは……すごいな。本気で参謀に育て上げる気か~。参ったね、こりゃ」

 騎士団全体敵にまわすとこだった……と、ボソッと言った団長のつぶやきは、しっかりセドリックに聞こえてるようだった。

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