第65話 ポートフェン子爵の困惑とアルフレッドお兄様の助言
クランベリー邸から戻った翌日。
リナが自室でくつろいでいると侍女から父の執務室に来るように促された。
心当たりはあったけど……。
「失礼致します。リナです」
侍女に開けて貰った扉をすっと通る。
ルイス兄様は社交界シーズンが終わったときに、自分の領地に戻っていたので、執務室の中には父とアルフレッドの2人がいた。
「何かご用でしょうか。お父様」
リナは、にっこり笑う。
「クランベリー公爵から、手紙と書類が送られてきていてな。公に会う前に説明して貰いたいんだが」
父から手紙を受け取り、見せて貰う。
要約すると、セドリックとリナの婚約を整えたいという事だ。
双方の親の同意と、正式な契約を交わさないといけないし。
その後、婚約披露の夜会も主催しなければならない。
「この手紙に書いてある通りです。まずは、お父様の許可をもらいに、クランベリー公爵様とセドリック様がいらっしゃると思いますが」
「そうだな。そう書いてあるが……お前はそれで良いのかい?」
「縁談を最初に持ちかけてきたのは、クランベリー公爵様ですが、交渉に使ったのは私です」
リナは素直に言った。
セドリックと恋愛関係にあると嘘をついたところで、見透かされるだけなら良い方で、最悪、セドリックがリナをクランベリー公爵家に取り込むために、だましてるって思われてしまう。
「交渉?」
父が怪訝そうな顔をした。
「多分、書類として一緒に送られてきてると思うのですが、一部、騎士団の指揮権を頂きました」
最終目標のことを父親に知られたくないのなら、セドリックからこう言ったら良いと教えて貰った。
「それで……一応、私は拒否する術は持っているが?」
「お父様?」
「私もリーン・ポートの保有者なのだよ。こんな縁談、リナが不幸になるだけだろう。政略結婚などする必要はない」
「私は、セドリック様が好きです。セドリック様は、私との縁談は困らないと、言ってくれました」
(分かってたけど、言葉にすると辛いなぁ。完全、片想いだもの)
「父上。僕はこの縁談、いいと思いますよ」
「アルフレッド?」
アルフレッドは、リナの側に寄って顔をのぞき込んでくる。
「リナ。本当にセドリックのこと好きなんだよね」
リナは、声を出したら涙がこぼれそうなので頷くだけにした。
アルフレッドは、リナ頭を撫でる。
(やめて、本当に涙が出るから……)
「父上。大丈夫です。リナ、ちゃんと幸せになれるから心配するな。さて、父上、日程を詰めましょうか」
(アル兄様?)
「あ……リナはもう戻っていいよ」
「はぁ」
(不幸にはならないとは思う。なんだかんだ言って、セドリックは優しい。そして、セドリックの優しさに付け込んだのは私だ。だからといって、幸せはどうだろう? アル兄様よ)




