第61話 先輩達の卒業式と学園の夜会
今日は午前中、卒業式があった。
入学式と卒業式は、在校生も付き合わされる。
前世の卒業式とは違い、親は参加しないが……セキュリティ上の問題? ……式典が進むにつれ、別れを惜しんで涙する女性も多くいた。
卒業式の後、送別の夜会が開催されていた。
入学式後の夜会の時は、下位貴族の子たちは会場の豪華さに圧倒され緊張したものだけど、慣れてしまえば何と言うことはない。
しかも、本当の夜会と違ってここで失敗しても誰も何も言わないし、噂にもならない。本当に、気楽で守られた空間だった。
(まぁ、入学式後の夜会では、記憶が戻ってない私が、やらかしまくったわけだが……)
「おめでとうございます」
エイリーンと2人でセドリックとアルフレッドに挨拶に行った。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
アルフレッドは、エイリーンがいるから挨拶が丁寧だ。
「卒業したらちょっと一息付けるんじゃないんですこと?」
「ああ、僕はそうですが」
チラっと、セドリックを見て言ってる。
「俺は明日から、仕事だっつーの。1日くらい休みくれって」
「仕方ないですわねぇ、隊長ですものね」
エイリーンがクスクス笑う。
セドリックが私と目を合わせる。
スッと礼を執ってきた。
(何? 気持ち悪い)
「リナ嬢。私と踊って頂けますか」
ああ、曲の変わり目か。
「喜んで、お受け致します」
そういえば、初めてだ。セドリックと踊るの。
「なんか、意外と上手ですよね」
セドリックも公爵家の人間なのだから、考えたら上手くて当たり前なのだけれど、そういう印象が無かった。
「意外ってなんだよ。まぁ、いいか時間が無い」
「なんです?」
「3日後、空いてるか? その日なら親父と会えると思うけど」
「空けます。3日後ですね」
「じゃ、迎えに行く。護衛の仕事っていったら、何とかなるだろう。学園の制服でな」
「制服?」
「一応、学園の制服着てる子は、子ども扱いが大人のルールだから」
まっ、交渉内容によっては気休め程度になるけど……って、セドリックがボソボソ言ってる。
(この距離なんだから、聞こえてるからね)
「そういえば、セドリック様。レイモンド・ホールデン様って、何でジークフリート様にくっついてるんですか?」
私の言葉でジークフリートの方を見る。
会場の端で、ジークフリートとレイモンドが雑談してるのが見えた。
「実はレイモンド様だけ、王太子派って事は無いですよね」
「最初はエイリーンの方に行かないように、ジークが引き留めてたはずだけど。今はどうかな? あれも、見かけ通りじゃないもんな。兄貴の方がまだ落としやすいかな」
「そうなんですか」
「俺たちいなくなるもんな。心配?」
「心配です」
「今日は素直なんだな」
「自分の事じゃ無いですからね」
「人の心配より、自分だろ? 交渉材料無しじゃ。正直、俺でもつらい相手だぜ」
(無謀なのは、百も承知です)
「気が変わって、助けたりしないで下さいね」
「へぇ~。言うじゃねえか」
(言いますよ。はっきり、邪魔ですもの)




