第60話 セドリックへのお願い~私をクランベリー公爵家へ連れてって~
クリフォードに見送られて、私たちは学園御用達の馬車に乗った。
馬車は、だいたい20分程度で学園に着く。
この馬車にだけは、学園生でないライラも乗れない。
誰の監視も付かない、内緒の話が出来る唯一の時間になる。
「セドリック様。お願いがあるのですけど、ダメでしょうか?」
馬車の中で向かい合わせに座っているので、前のめりになって訊いてみた。
自分の膝に頬杖ついた感じになってる。
「お願いにもよるけど?」
「セドリック様のお父様とお話したいのですが、都合を聞いて貰えますか?」
「ジークの手伝いしないって言ってなかったけ?」
セドリックがちょっと不快そうに言ってくる。
「ああ、違うんです。それは本人がやらないと、もっと相手を怒らせるだけだから。そうじゃなくて私の用事で会いたいんです」
「親父と話すとき、俺も同伴なら良いよ」
(取り込む気満々だからな……俺が一緒ならフォローできる)
「それと、もう一つお願いがあるのですが」
セドリックが同伴なら、もう一つ許可がいるから……。
「あ~うん、良いよ。謹慎解いてくれたお礼ってことで」
「さっきの話に出ていたセドリック様との縁談。交渉に使っていいですか?」
セドリックは、信じられないことを聞いた気がした。
絶対、意味分かっていない。
「それ、本当に婚姻結ばないといけなくなるからやめようか」
「さっき縁談話出てたときは無反応でしたよね?」
「俺は困らないからな。もともと相手選ぶ自由もないし。まぁ、俺と結婚してもいいんなら、使ってもかまわないぜ」
本当にどうでも良い感じに言うなぁ。上位貴族ってこんなもんか?
でもまぁ、許可とれたんでいいか。
「たださぁ、この縁談。交渉に持って行っても、たいしたものとって来れないぜ」
「でしょうね。でも、そういう話になったときに、セドリック様の許可とってないと私身動きとれなくなるんで」
「なるほどな。……で、目的は?」
セドリックは、ちょっと身を乗り出してきた。
「え?」
「え? っじゃないだろう。目的知ってないと、利用されようもない」
「利用されてくれるんですか?」
(マジで分かってなかったか。いや、結婚なんて俺の一生を巻き込んでるからな)
「こっちは散々利用してるからな。別にいいぜ」
「アル兄様とジークフリート様に、絶対バレないようにしてくれるのなら、教えます」
「難易度高くない? まぁ、あいつらにバレたら即保護されそうだもんな。俺の親父に会いに行く時点で。わかった、バレないようにだな。……それで?」
ここまでは、気楽に聞けた。ここまでは……とセドリックは思う。
「最終目標は、ホールデン侯爵にケンカ売って勝ちたいです」
(あっ、セドリック、絶句してる)
「とりあえず、お前どっちかに保護されとけば?」
そう言って、セドリックはプイッと横を向いた。
「え~、話が違う」
「本当はバカだろう、お前。どう考えてもケンカ売って勝てる相手じゃ無いだろう? 相手は国内最大勢力のトップだぞ」
「だって、勝たないとアラン様の希望叶わないし。ジークフリート様も国王になれないし。私、向こうに取り込まれてしまうし」
殺害の可能性は言わない。
「それで、俺との縁談か」
セドリックが溜息をつく。
(そりゃ、俺の婚約者になっておけば、一応は同じ派閥だし手出しはしてこないだろうけどな。だけど、そんなケンカに巻き込まれてくれるほど、お人好しじゃないぞ、うちの親父は)
子ども相手に怒ったりしないから、会わせようと思ったけど……これは、内容によっては本気で怒らせるかも知れないな……と、セドリックは思う。
「親父との話し合い、俺たちの卒業式後になるけど良いか? 卒業式後だったら、アルフレッドの方は、王立大学の入学準備で忙しい時期だし。ジークもエイリーンも新学期まで王宮に籠もるから目を反らしやすくなるから」
「いいんですか?」
「ただし親父との交渉。同伴はするけど。俺は一切手を貸さない、それでいいか?」
「もちろんです」
(最初から当てにするつもりも無いけど……)
「そのかわり、交渉成立したら全面協力するよ」
「はぁ……よろしくお願いします?」
「だから何でそこ疑問系?」
セドリックが脱力した。
いや、勝手に変な覚悟しないでくれるかな?
最終目標まで付き合わせる気無いからね。




