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第52話 アルフレッドお兄様の説得とリナの権力

 正直、説得できる気がしないとリナは思う。


 男子寮の入寮許可をもらい、アルフレッドのお部屋に来ているのだけれども。

 護衛だからと、セドリックまで付いてきてしまっているし。

「それで、二人して何か用なの?」

 来るのはリナだけって聞いてたんだけど? って感じでセドリックの方を見ている。


「俺は仕事中。リナちゃんの護衛を命じられたからな」

 セドリックは誰からとは言わない。

「仕事……ねぇ。それで何の用だい? リナ」

 アルフレッドは、リナに優しく訊いてくる。


「あの……アル兄様にお願いがあってきました」

「うん」

「今回、私が受けた国王の依頼のことは、忘れて下さい。本当は領地に父と戻って頂けるのが一番なのですけど」

「無理だよ。学園あと3ヶ月しないと卒業にならないし。って言うか、父上も領地に戻るかどうか怪しいんじゃない?」

「卒業は、今の単位で充分だと思いますが……お父様と話したんですか?」

(まずいなぁ。でも、父も守秘義務は守るだろうし)


「僕を遠ざけてどうするの? 協力するって言ったよね。それともそんな中途半端な覚悟で言ったと思ってるの?」

 真剣な顔でアルフレッドは言ってくる。

「そんなこと思ってません。ただ、アル兄様の立場でしたら一緒にいることも難しい事があります」

「子爵の息子から子爵になっても…か?」


 この国の貴族の子息は、早ければ学園卒業後、遅くとも20才になれば自動的に爵位をもてる。

 伯爵以上なら、伯爵。うちは子爵なので子爵を名乗れる。

 上の兄、ルイスも子爵として、内の領地の一つを護ってる。


「子爵という地位だけだったら、王宮内の立ち入れる場所にも制限があるからな。それくらいアルフレッドも知ってるだろう」

 見かねたのだろうか、呆れた口調でセドリックが口を挟んでくる。

「セドリック様は仕事で私のそばにいるんですよね」

(いらんこと言うなら、追い出す!)

「はい。すみませんでした」

 リナに向かってセドリックはピシッと背筋を伸ばして見せた。

 そんなセドリックに、アルフレッドは、いきなり跪いて礼を執る。


「セドリック・クランベリー伯爵。お願いがあります。私に王宮で自由に動けるだけの地位を下さい」

 アルフレッドは、リナを危険な状態のまま、自分の目が届かなくなるくらいなら、セドリックの子飼いになっても良いと考えていた。プライドなんかいらない。

 しまったっとリナは思う。セドリックはこれを狙っていたのか。


「それって、俺の子飼いになるって事?」

 セドリックは、表面上は素っ気なく言ってた。

「分かってると思うけど、第二王子派になるって事だよ。アランと俺に忠誠誓えるの?」

「誓い……」


「許可しません」

 リナは、アルフレッドの言葉を遮った。

(冗談じゃ無い。セドリックの子飼いにするために、離れるんじゃない)

「許可しないって、リナちゃんにそんな権限有るのかよ」

 セドリックが怪訝そうな顔でリナを見る。

 リナは、思いっきりセドリックを睨み付けた。


「国王の署名付きの命令書だしましょうか?」

 これなら、準王族のセドリックでも逆らえない。

 なにも、アルフレッドをずっと遠ざける訳ではないのだ。

 ちゃんと、しかるべき手続きを踏めば……。

 上の学校さえ卒業して、下から上がって来てくれさえすれば、また一緒にいる事は出来る。


「出来もしないこと言わないほうがいいと思うけど?」

 セドリックはリナが睨んでいても意に介さない風に、軽く言ってきた。

(出来ないと思われている。それはまぁ、当然だろう。普通は出来ないから。仕方無い、こんな風には使いたくなかったけど……)


「リネハン伯爵家の処刑。国王からの最初の命令書は当事者夫妻と直系子孫の斬首刑でしたよね」

「ああ、でもいつの間にデュークの願いが叶ってたよな」

 セドリックは、デュークの願いを叶えることが出来なかった。

 デュークの妹たちの行方は、すぐに特定され。クランベリー公爵家はデュークの妹たちを、王宮に差し出す算段を始めていた。


 セドリックは一時期、それをどうやって止めようか、必死に考えていた。

 サイラスにばかり気を取られて、王太子過激派のクリフォードを見逃していたセドリックのミスだ。

 それが、いつの間にか差し出さずに良くなって、デュークの妹たちは無罪放免。

 隠れて住む必要すら無くなっていた。

 まさか、リナが……。


「国王陛下が判断を私に託されたのです。宰相様は直系子孫を全て助けるって言っても、国王命令としてそのように動くとおっしゃいました。デューク様の願い通り、妹さん達は助けることが出来ましたが。だけど、エイリーン様の誘拐の実行犯だったデューク様を、国王の名において救うことは……」

「それって、リナちゃん」

「リナ」

 アルフレッドがリナを優しく抱きしめる。

「厳しい判断をさせられたんだね、リナは」

 それであんな風に……壊れそうになってまで。


 二人ともリナが持たされた権力と、それに伴う責任を正しく理解してくれた。

「アル兄様。後からの処分はいかようにも出来るんです。でも、この前のように現場処刑だと、抗うすべが今のアル兄様には無い。幸いこの国は、騎士にしろ文官にしろ役職に貴族の身分は関係ありません。どうか、どちらかの道を選んで上がって来て下さい」

 アルフレッドは、自分の腕の中でそういうリナが、もう守られるだけの存在では無い事を知る。


「わかった。今のままだと足手まといなんだね」

「ごめんなさい」

「なんで、謝る? すぐに追いつくよ」

 アルフレッドは、リナに優しい笑顔を向ける。

(アル兄さまのこういうところ、大人だな)

「待ってます。アル兄様」

 リナは、今度はちゃんと笑顔で言えた。

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