第51話 ライラとマリア 侍女の交代
「交渉は成立したようですね」
きっちり1時間後、宰相は戻ってきた。
なぜか、後ろにティータイムセットのワゴンを持った侍女を従えて。
「はい。任務として受けます」
セドリックは、宰相が戻ってきた途端、また仕事の顔に戻っていた。
態度も先程までとは違い、キッチリしている。
「では、第5部隊を任せます。もともと貴方の部隊だったのですが、卒業前に隊長に復帰ということにしましょう。それと、私の持ち駒を必要に応じ貸し出しましょう」
「ありがとうございます」
宰相に礼を執っている。
「それと、リナ様」
「あ…はい」
「今、寮で使ってる侍女を自宅に戻して下さい。庶民の出である彼女を危険な目に遭わせるのは、忍びないでしょう?」
「……そうですね。そうします」
(そうか、そこまで考えが及ばなかった。私が危ないって事は、まわりも危なくなるんだ)
「代わりと言っては、何ですが……。この者をお連れ下さい。女子寮での護衛になります」
宰相と共に入ってきた侍女が私に礼を執る。
「ライラでございます」
栗色の髪を後ろで引っ詰めている。どこにでも居そうな侍女だ。
「リナ・ポートフェンです。よろしくお願いします」
相手がどういう身分なのか分からないので、礼を執る。
まさか、この場に入れる人間の身分が、庶民では無いだろう。
「おやめ下さい。そのような挨拶をされる立場ではありません」
ライラから、窘められてしまった。
(でも、私は子爵令嬢だよ。わりと使用人と仲良いよ)
「でも、うちの侍女にもこんな感じですけど、私。さすがに自分の侍女に敬語は使いませんが」
「かしこまりました。そちらの侍女の方と引き継ぎさせて頂きます」
セドリックはじっとそのやりとりを見ていて、宰相の方に話を振ってる。
「……あれは、大丈夫なのですかね」
「使いこなせなければ、そもそも今回のことは無理な話でしょう?」
「いや……そうじゃなくて」
セドリックは、なんだか言いよどんでいた。
(いや……なんなの? この不穏な会話は)
夕方、リナはライラを連れて女子寮に戻ってきた。
マリアに、明日から自宅屋敷の侍女に戻る事を告げると、ショックを受けていたものの、すぐに引き継ぎの準備を始めてくれた。
マリアとライラとの間で、サクサクと引き継ぎが終わっていく。
もともと、マリアも侍女としては、かなり優秀なんだと思う。
この不自由な生活の中で、リナが快適に過ごせるように気を配ってくれていた。
時には精神面まで支えてくれる。
こんな事態じゃなければ、学園生活中側にいて欲しかった。
ライラは、完璧にマリアをトレースしている。
これなら、侍女が変わったことなど、誰も……アルフレッド以外気づかないだろう。
(アル兄にも、言わないといけない)
純粋に子爵令息という身分しか持ってないアルフレッドは、この間のように現場処刑になったときに、抗うすべが無い。




