第45話 アランとホールデン侯爵家の夜会
リナ・ポートフェンは第二王子アランのエスコートの下、ホールデン侯爵家当主クレイグ・ホールデン主催の夜会に参加していた。
バリバリの第二王子過激派。
アランにホールデン侯爵が挨拶にやってくる。
本来なら、来客側が主催者に挨拶をするのだが、今回はアランが王族なのでホールデン侯爵の方から挨拶に来た。
ホールデン侯爵は中年だが、それなりに身体が締まっている。武闘派の家系なのだろうか。
息子たちと同じ茶色の髪していて、一見、穏やかそうな紳士だ。
「本日は、ようこそお越し下さいました。アラン王子殿下」
「うん。招待されたのは僕じゃ無いけどね」
アラン王子は、リナのことを全く紹介する気がないのか、のほほんと挨拶をやり過ごしている。
アランの言葉にホールデン侯爵は、おや、という顔をしてこちらを見る。
「ポートフェン子爵のご令嬢でしたね」
「リナと申します。本日はお招き頂きまして、ありがとうございます」
リナは慌てて礼をとる。
(アラン~。紹介してよ、もう)
横目でチラッと見るけど、知らん顔している。
「クレイグ・ホールデンです。クレイグと呼んで下さってかまいませんよ、可愛いお嬢さん。招待を受けて下さって、ありがとうございます」
「しがない子爵の娘ですが……」
(なんか、引いてしまうくらい熱烈歓迎なんですけど……)
「ポートフェン子爵とは、一時期王宮では親しくしてもらっていてね。階級も我が家とは同列の扱いだったのですよ。ですから、気軽に声をかけて下さいね」
と、ウインクをして行ってしまった。
「アラン様、どういう事か分かります?」
「さぁ」
アランは肩をすくめてる。
(この役立たず)
「あ……サイラスとレイモンドだ。お~い」
アランは思いっきり手を振った。リナの手をしっかり握って。
「アラン王子殿下。ようこそお越し下さいました。楽しまれてますでしょうか?」
サイラスがきちんと礼を執って、挨拶をしている。この前の気軽さは無い。
そっか、王子殿下だったけ。
「うん。今日はリナのパートナーだけどね」
アランは、サイラス達に繋いだ手をしっかり見せてる。
「リナ嬢。相変わらず……いえ、見る度にお美しくなられる。あっという間に、私たちの手の届かない存在になるのでしょうね」
サイラスがリナにも礼を執り、王子のパートナーとして褒め称えてくれる。
クリフォードと違い、初対面のフリはしてない。
「サイラス様、レイモンド様、お久しぶりでございます」
サイラス様は、大人の笑顔で……営業スマイルともいう……返してくれたけど、レイモンドの方は、あまり歓迎してないみたい。
(顔に出ているよね、ものすごく)
「リナ、とりあえず踊る?」
アランは、リナをダンスに誘う。
「え? あ……はい。サイラス様、レイモンド様失礼致します」
サイラスはひらひらと手を振ってくれた。
リナ達は曲が変わったのをきっかけに、踊り出す。
「そういえば、ここの招待状、誰からまわってきたの?」
踊りながら訊いてくる。
「父からですけど……」
「ふ~ん」
こんな危ないところに、よく娘一人でだすよなぁとアランは思う。
「何かあるんですか?」
「社交シーズン終わるから良いけど、ここあまり関わらない方が良いかもね」
「そうなんですか?」
アランも、表情が読みにくい。のほほんと、かわしてしまうから。
「今日はとりあえず、この1曲終わったら帰ろうか。義理は果たしたし」
「あ…はい。分かりました」
アランは、自分の派閥なのに妙によそよそしかった。




