第43話 逃げない為の会合
時は少し戻り。
ジークフリート、謝罪の数日後。
リナ達は、特例の認められているジークフリートの部屋に集まっていた。
リナが、逃げないで王室のお家騒動に巻き込まれる、と言う事を決めたので、その対策を話し合うために。
ジークフリートがリナの正面、その横にエイリーン、リナの横にアルフレッド。
そしてリナはセドリックのお膝で、後ろから拘束されていた。
ものすごく、善意に捉えたら抱っこされているとも言えなくない。
アルフレッドが無反応だから、拘束で正しいんだろう。
リナが自分の計画を言った途端、セドリックに捕まった。
「だって、私に裏工作なんて、出来ません。人脈も無ければ、能力も無いですし。すでに目立ってるのだから、適材適所でしょ?」
「だから、リナちゃんが動く必要は無いって」
(セドリック。後ろで溜息付かないで欲しい。首に息がかかって、何気にゾワゾワする)
「前回のことで、お前が動くとろくな事にならないのはわかった」
アルフレッドも、リナが動く事に良い顔をしない。
もう、二度とリナの殺されかけてるシーンは見たくない。
自分たちが間に合わなかったらと思うと……ゾッとする。
「私と常に行動を共にしてれば良いのですわ」
エイリーンはどこか自信満々に言う。
「それで、また一緒に危険な目に合うんだね、我が婚約者殿は」
ジークフリートも溜息を付いた。
「助け出す人数が増えるだけじゃないか」
ボソッと言ったつもりのつぶやきは、エイリーンとリナの耳にも届く。
ジークフリートは、二人から睨まれて、あさっての方向を向いた。
(こんな話し合いしても埒が明かないな)
「でも、私が動いても動かなくても、この時期、籠もっている訳にはいかないのですし。何より皆様、私を守ってくださるのでしょう?」
リナは、上目遣いで皆を見て、セドリックのリナを拘束している手にそっと、自分の手を重ねた。ちょっと、ずるい手だ。
今回のネックはそこなのだ。リナは、婚約者のいない子爵令嬢。自宅や学園内に籠もっているわけにはいかない。夜会やお茶会、社交シーズンの前半動けなかった分、後半は出ないとまずい。
はっきり、何もしなくても、狙われる可能性は否定できない。
それにと、セドリックは思う。リナは知らないだろうけど。
俺だけでなく、各派閥トップの嫡男はリナ・ポートフェンを取り込めと言われているはず。
それほどに、リナの将来性は危険視されているのだから。
「ずるいなぁ。そこを突くのか……」
とは、ジークフリート。
この場で一番地位が高いから、決定権はジークフリートにある。
「ダメですか?」
「いいよ、それで決定で。ただし、本当に危なくなったら、約束通り私が引き取るからね。リナ嬢」
私が引き取るからね……?
「ちょっと待て、ジーク。どういう意味だ?」
セドリックの拘束が強くなる。
「セ……セドリック様。苦しい……」
「あ……悪い」
緩んだけど、離してはくれない。
「そのままの意味だよ」
しれっとジークフリートは言う。
「エイリーンとの婚礼の後、側室としてリナ・ポートフェンを迎えるって」
エイリーンは「それも良いですわね」と上機嫌だが。
アルフレッドも反論した。
「側室なんて冗談じゃない。どうしてそんな話になっているのです」
ジークフリートは、優しい顔でリナを見る。
「そういう約束だよね。リナ嬢」
(凶悪だなぁ。余程さっきの決定が気に入らないらしい)
「この前のジークフリート様の謝罪で出てきた話なんです。あくまでも、どうしようも無くなったらなのですけど。王太子殿下の側室になったら、各派閥も手を出せないし、2~3年もしたらお役御免で帰れるから、落ち着いた頃に戻れば良いって」
「それはジークが通わなかったら、だろう? 側室になったら、ジークの気が変わっても、拒否権ないんだぞ」
セドリックがリナの後ろから、『お前騙されてるぞ』って言ってくる。
「ジークフリート様が、私を騙すわけ無いじゃないですか」
リナは自信満々に即答した。だって、リナは決めたのだ。
今いるこのメンバーを信頼するって、例え裏切られても、それでも。
ジークフリートは、即答されて戸惑ったけど、元々裏切る気は無かったから。
「私は、それとは別にもう一つリナ嬢に約束していてね。例えリナ嬢が私の敵になってしまっても、私はリナ嬢の味方でいるって……。これで、信用してくれないかな」
アルフレッドもセドリックも、信じられないって顔をしている。
仮にも王太子殿下だ。
それが、各派閥が取り込みたがっているポートフェンの人間だとしても、リナは子爵家の令嬢。
悪く言えば、自分の陣営にとって不都合だと判断されたら、殺してしまえば良いくらいの存在。だから、守ろうっていう話し合いをしていたのに。
「アルフレッド・ポートフェン」
「はい」
いきなりジークフリートに名を呼ばれて、畏まってしまう。
チョイチョイと呼ばれて、内緒話のように耳もとでジークフリートから言われた。
「もし、リナ嬢が私のせいで殺されかけたら、私の方を殺してしまって構わないという意味だよ。アルフレッド」
リナ嬢には内緒だよって、ジークフリートは言った。
セドリックは、意味が分かっているだろうから言わない内緒話だ。
本当にありえないことだと、アルフレッドは思う。
これ以上、僕に内緒話をしないで欲しい。
そしてジークフリートはリナに
「信じてくれてありがとう」
と、お礼を言っていた。




