第42話 アボット伯爵家の夜会 目立ちましょう、二人して
「では、リナ嬢。私と踊って頂けますか?」
「喜んでお受け致します」
二人ともにこやかに形式的な挨拶をかわす。
せっかく王太子派の上位貴族が、目白押しの夜会なのだ。
目立たなきゃ意味が無い。
もうすぐ曲が変わる。皆、結構戻ってきてる?
(……この曲って)
「さぁ、参りましょうか」
クリフォードは、リナの手を取ってダンスホールの中央に行こうとする。
中央に残っているのは、多分侯爵家以上の身分の方々……。
「クリフォード様。私、この曲踊れません。ごめんなさい」
リナは、素で子どもみたいな謝罪をしてしまった。
それに対してクリフォードは、優しく言う。
「大丈夫。私の動きに合わせてください。ご婦人に、恥を掻かせるようなまねはしませんよ。顔を上げて。颯爽と参りましょう」
クリフォードは、リナの腰を抱き。リナにとっては大股で会場の中央に出る。
曲が始まると同時に、リナを抱き上げファッと舞わせた。
意外、と言うかクリフォードの力は強い。
いくらリナが軽いからといって抱き上げるだけでは無く、空中で舞わせるなんて。
うわ~と会場が沸く。
割と密着して動くので、押されて自然と足が動く。本来なら、女性の足裁きの難易度が高いところを、抱き上げて誤魔化してくれるから、ドレスの翻りもあって、かえって派手に見えた。
(なんか、楽しい。アップテンポの曲で、このノリ。昔、父から抱っこされてクルクル回ったのを思い出す)
曲が終わったとき、盛大な拍手をもらった。
リナは楽しい気分のまま、満面の笑顔で
「たのしかった~。ありがとうございました」
と言った。
クリフォードは、少し驚いた顔をして、すぐに笑顔になり
「こちらこそ、楽しかったですよ」
(途中から本当に子どもと踊っている気分になりましたが)
と、言って踊りの最後の礼をした。
戻ったら、クラスの皆が、絶賛してくれた。
アルフレッドがリナに飲み物を渡す。
なにか、複雑な顔をしていた。
「楽しそうだったな」
「なんか、昔お父様に抱っこされてクルクル回ったときみたいに、楽しかったです」
「お父様認定。クリフォード様って25才くらいじゃなかったか?」
「年齢じゃ無いでしょう。でも、まぁ向こうも目立つのが目的だったみたいだし、良いんじゃないですか?」
向こうも……。そう、こっちも目立ちたかった。
第二王子派のセドリックと親しくなり。
王太子派のクリフォードと一緒に無邪気に踊る。
何も考えてない子ども。
何も考えてないから、前回の事件にも巻き込まれた。
ジークフリートから斬られそうになったのも、利用する。
どうしたってリナ・ポートフェンは、裏方になれない。
デビュタントでの出来事と、年齢より幼くみえる美少女アバター。どうしたって目立つ。
ならば、表舞台で目立って動き。裏方の目くらましになれば良い。
まぁ、満場一致で反対食らったけどね。




