第41話 アボット伯爵家の夜会
社交界シーズンの前半、リナは全く夜会に出られなかった。
その反動のように、今はアルフレッドと一緒に夜会に出ている。
王太子殿下派の過激派に敵視されつつあったので、それの対策として王太子派の夜会ばかり選んで出ていた。
まぁ……2人とも相手がいないので、婚活しているとも言えるけど。
今までは、王太子派を中心に、クラスメイトとところの夜会に出ていたのだけど、今日は違う。
クリフォード・アボットが主催している伯爵家の夜会。
侯爵家の嫡男がわざわざ伯爵として主催しているのには……。
まぁ、下位貴族を招待するためのものなんだろうけど。
リナは飲食スペースで、一緒に呼ばれたクラスメイトたちとおしゃべりしていた。話題はもっぱら男性のこと。
だって、伯爵家主催の夜会とはいえ。アボットは侯爵家。
招待客も当然それなりの身分の方々が多かった。
下位貴族の令嬢が、下手にお相手にでもなろうものなら、遊ばれて捨てられるのがオチだ。
そんなこんなで、クラスメイトで固まってたリナたちのところに、主催者のクリフォード・アボットがやってきた。
「皆様、今宵は楽しまれてますか?」
穏やかな笑みを浮かべている。洗練された所作に、クラスメイトたちは頬を染めたり、隠れたりで、リナは前へ押し出されてしまった。
(マジか、私も隠れたい)
「ありがとうございます。ですが、あまりの豪華さに少し気後れしているところです」
リナは、少し恥じらった感じに微笑んだ。
今日はもうアルフレッドと二人で、主催者であるクリフォードには、挨拶に行っている。
(どうしよう。話題が無い)
思わず、リナはアルフレッドを探してしまった。
リナたちから少し離れたところで、女性に囲まれてしまっているアルフレッドが見えた。
クリフォードは、リナが自分の兄を探しているのに気付く。
普通の……まぁ、姿は可憐だが、子どもだとクリフォードは思った。
デビュタントしたばかりの、まだ保護者を必要としているどこにでもいる令嬢。
だから、この前の夜会の時もたやすく、セドリックやデュークに利用されてしまった。
これならば、少し優しく保護者の真似事でもしてやれば、こちら側に取り込むのも簡単だろう……とクリフォードは思う。
「君は先程挨拶に来て頂いたアルフレッド・ポートフェン殿の妹君の」
「リナ・ポートフェンでございます」
お互い、この間の夜会のことは、無かった事にしている。
変にあの事件に関わってると思われない為の、いわば処世術だ。
「お兄さんが居ないと、心細いですか?」
(探したの解っちゃたか。まぁ、露骨に探したから)
「……はい」
リナは口元に手をやって下向いた……のに、顔をのぞき込んでくる。
「怖くないですよ」
クリフォードが優しい顔で言う。
そして、クリフォードは口元にやってた手をやんわりと握って、自分の方に引き寄せた。
後ろで小さくキャ~って悲鳴? 歓声? が上がった気がした。
(喜んでないで助けてくれ、友達だろ? なんて……)
「ほら、お兄さんがこちらに来てる」
と言って、クリフォードはスッと背をまっすぐし、後ろを振り向く。
そこにはアルフレッドが立っていた。
「妹が何か粗相を致しましたでしょうか。アボット伯爵」
「クリフォードでかまわないよ。リナ嬢が、心細がって君を探してたので、こうしたら来るかな、と思って」
まだ握ったままのリナの手を自分の口元にやった。
「お戯れが過ぎましょう。うちのリナはまだ子どもです」
クリフォードからリナの手を取り返してくれた。表面は2人とも穏やかに笑ってるのだけれども。
「……そのようだな。だがね、子どもだ子どもだと思っているうちに、いつの間にか高嶺の花になっているものだよ」
(ちょっと何言ってんのか分かりません)
「せっかくのダンスタイムだ。まだラストダンスにも間があるし、リナ嬢をお借りしてもよろしいですか?」
クリフォードは、保護者であるアルフレッドに許可を取る。
「……本人に許可を取ってください」
おや? という感じで、クリフォードはリナの方を見た。
アルフレッドからも、見られる。
踊って来いって事ですね。令嬢からの返事はYES一択ですから




