↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/48

第39話 エイリーンの慰めとリナとの立場の違い

 寮のリナの自室の前に、エイリーンが立って待っていた。

「お帰りなさい。遅かったわねぇ。もう少しで迎えに行くところだったのよ、リナ様」

 良かった。迎えに来られる前に泣き止んでいて。

 セドリックから、抱きしめられてるところを見られるところだった。

 リナの顔に少し赤みがさす。泣き腫らした顔なので解りづらいが……。

(そういえば、エイリーンとも事件以来だった)


「このたびは、大変ご迷惑をおかけしました。庇って下さってありがとうございます」

「謝るのはこちらの方よ。ジークに言った通り、私の思惑に乗ってくれたんだもの」

「あのような危険なものと分かってたら、乗りませんでしたが」

「まぁまぁ、お詫びに『シャングリア』のクッキー買ってきたのよ。食べてらして」


 恐縮して暗い感じになっているリナに対して、エイリーンは明るくしゃべる。

(だから何で、私の好物がばれてるんだ?)

 そのまま、エイリーンの部屋に案内された。

「社交シーズン中は戻ってこないのかなって、さみしく思ってたところなのよ。

 女子寮、閑散としてるでしょ?」

 エイリーンは顔を拭くためのぬれタオルを用意してくれた。ひんやりして気持ち良い。


「そういえばそうですね」

「この時期は、学校も開店休業中って感じで授業も無いんですって」

 少し不満げに言うエイリーンに対して、リナは訊いてみる。

「エイリーン様は、戻らなくて良いのですか?」

「私は婚活の必要ないですもの。必要最低限の……王太子が出ないといけないものしか出れないの。つまらないですわ。リナ様は婚約者、いらっしゃらないの?」

「私ですか? いえ……いませんね」

「もしかして……デュークのこと、好きだったのかしら?」

「デューク様……ですか。友達としては好きでしたけど」

 なんだろう、エイリーンらしくない話題選び。

 ある意味、人の傷をえぐるような。デリカシーの無い会話。


「私ね、デュークが処刑されるの分かってて、伯爵家に誘拐されたの」

(エイリーン?)

「あのまま行けば、リネハン伯爵はもっと陰謀の中枢に取り込まれてたでしょう? もしかしたら、王太子暗殺の実行犯にさせられてたかもしれない。そんなところまでいってたから……」


「エイリーン様はジークフリート様のためにあんな危険なことを?」

 その質問には答えず、エイリーンは話を続ける。

「あの時潰さなかったら確実にそうなってたでしょうから……。だから、この件で恨むのなら私にして欲しいの」

「恨む……なんて」

(デューク処刑の決断を下したのは私だ)

「ジークやアラン、セドリックですら、もっと時間をかければ何とかなるって方向で動いてたわ。だけど、セドリックは途中で無理だって分かってたんでしょうね。だから貴女が動くような情報を与えたのでしょうけど」

(裏で、色々動いてるなって思ってたけど……)


「……やっぱり、私の所為ですね。セドリック様は、私がエイリーン様に不用意に近付いて動きが不穏な方向に行き始めたから、方向転換せざるをえなくなったんです。私は、ジークフリート様からも、セドリック様からも、エイリーン様に近付くなと忠告を受けてました。でも、私はその意味が分からずそばに居続けたから」

 リナは下を向いて言い続けた。


「では、私たちは共犯ね。責められるときは一緒に責められましょ」

 妙に明るく笑って言われた。やっぱり、エイリーンはすごいと思う。

(エイリーンは全て分かっていて計算して動いてた。だけど、私は……)

 リナの沈んだ顔をみて、まだ、純粋なんだなとエイリーンは思う、本当に。


「リナ様は、可愛らしいわよね」

(………は?)

「私は自分の行動での結果がある程度分かりますの。今回もそうだけど、人や自分の命より優先しちゃうこともあるわ。生まれてからずっとそういう立場に居たし、周りもそうだったから今まで当然だと思ってたけど。リナ様は、違うのよね」

(そんな世界に……生まれたときから?)

「ああ……変な風に取らないでね。リナ様の立場なら、それが当たり前なの。上位貴族と下位貴族に溝があるのはそこも含めてだから。だけど、この事件でリナ様の立場は変わってしまうわ」

「そう……でしょうね」

 エイリーンは、ふぅ~って感じで続きを言う。


「多分、明日辺りジークからの呼び出しがあるでしょうけど」

(……あるんですかい)

「ああ。今回関わった方々。皆個別に呼ばれてるし。単なる謝罪だから。でも、もし怖かったら私もついて行きますわ。私も少しは剣扱えますのよ」

(ジークフリート、無抵抗でやられるな……多分)


「いえ……大丈夫です」

 学生寮内の惨劇なんか見た日にゃ立ち直れなくなる。

 いや……ギャクなら有りか?

(私も大概思考回路が壊れてきたな)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。