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第26話 デュークとのデートと恋心

 デュークは、本当に子悪党伯爵の子息なのかって、いうくらい好青年だ。

 一緒にいると目的を忘れてしまう。

 リナとエイリーンとの勉強会にも、自然と参加してきた。


「リナ様は、算術が得意なのね」

「本当に僕なんか情けなくなる」

「お二人には歴史系のレポート、見て頂いてるんですもの。私も何か取り柄が無いと……」

 なんか、学生時代に戻ったみたいで楽しい。


 そういう流れで、自然と下町に行ってみないかという話になった。

「楽しそうですけど、私は遠慮致しますわ。どうか2人で楽しんで来て下さいな」

 と、当然ながら、エイリーンからは断られてしまった。当たり前か。

「ではリナ嬢。2人で行きましょうか。僕が責任持って寮まで送り届けますので……」

「そうですね。お願いします」

 デュークは、リナの分まで学園側の外出許可を取ってくれた。


 デュークは、事前にセドリックやアルフレッドの許可も取っていたのだけど。

 セドリックの監視付きということで了承されていた。


 次の休みの日。馬車で町におりる。

 下町と言っても、まだ貴族がウロウロしているような立派な町並みだった。

「まさか、女の子を連れて本当の下町まで行くわけには行かないからね。露天でも、見てまわる? それとも」

 リナは初めてこの世界の町に出た。里奈の記憶が戻る前から、父も兄も連れて行ってはくれなかったから。

 ついつい、リナは目を輝かせて露天を見る。


「じゃぁ、行こうか。手をつないでも良い?」

 と言ってそっとリナの手を握った。デュークの方を見ると。

「迷子にならないようにね」

 と、にっこり笑っている。妹認定されたのかな、とリナは思う。

(そうだよね、クラスメイトと言っても、女子は15才、男子は17才だものね。そっかそっか)

「ありがとうございます」

 って、素直に言ったら、デュークが少し赤くなった。照れたか。

 露天は食べ物から小物、装飾品もあって見てまわるのがとても楽しかった。

 チラチラ、見慣れた影も見えたけど。


「そろそろお昼だね。どこかお店に入る? それとも……」

 リナは露天のホットドッグを見てた。

(この世界にもあったんだ、ホットドッグ)

 デュークが2人分のホットドッグと飲み物を買ってきてくれた。

「ごめんなさい。デューク様はお店の方が良かったでしょう?」

「いや。高級料理店じゃないと嫌だって言われるよりは、ずっとましだよ。予約も取ってないし」

「もしかしたら妹さんが?」

「まさか。妹2人も露天派だよ。あそこのホットドッグ、妹も好きなんだ」

 露天の端っこに、飲食スペースがあったのでそこに座った。

 リナは食べようとして、ふっと気づいた。結構大きい。

(いや、頑張れば入るけど。男性の前で、大口開けて食べるってどうなんだ? 貴族以前の話じゃないのか?)


「リナ嬢。どうしたの? 食べないの?」

「結構な大きさだなって……」

「大丈夫だよ。妹なんて、伯爵令嬢とは思えないくらい大口開けて食べるよ」

 デュークは平気平気って言っていう。リナは意を決してかぶりついた。

(おいひい)

 顔に出てしまったらしく。

「ねっ。おいしいだろ?」って言ってくれた。

 さっきみたいに言ってくれなかったら、食べれなかった。

 露天に夢中になっている私は、デュークが手をつないでくれなかったら迷子になったり、人にぶつかったりするところだった。

 本当に、この人は……。


 帰る間際、デュークは露天で扇子に付けるアクセサリーを買ってくれた。

「本当はちゃんとしたお店で買いたかったんだけど、装飾品を贈れるのは親族か婚約者だけだからね。これくらいなら良いだろ? 今日の記念に」

 可愛い石の付いた前世で言うならストラップ。

(本当におもちゃみたいな物だから、これなら言い訳できる)


「今日は本当にありがとうございました。楽しかったです」

 リナは前世の記憶を思い出してから、今日初めて心から笑えたんだと思う。

 デュークは、少し痛いような笑顔でリナを見ていた。

「こちらこそ、楽しかった。明後日の夜会のお迎えは、自宅のお屋敷で良いのかな」

「はい。よろしくお願いします」

 女子寮から、少し離れたところでデュークと別れる。


 寮の道筋にある図書室で人影が見えた気がしたので、のぞいてみるとセドリックが中のテーブルに突っ伏して寝ていた。

(ずっと、付いてきてたものね)

 色々陰で動いていて大変なのに、勝手に協力者にしたリナに文句も言わず……いや、少し言われたね……動いてくれている。


 ゲームの中でも、セドリックは人の為に奔走してた。

 里奈としてゲームをしてたときは、どこかにセドリックルートを開く鍵が隠されてるのでは無いかと、必死で探したものだ。

 他のユーザーと意見交換したりなんかして。


 サラッとした髪が風に揺れる。起きるかしら……と思いつつ、手で髪を触った。

 つい愛しくなって、髪に触れるだけのキスをする。

「大好きよ。セドリック」

 リナは小さくつぶやいて、唇を離した。

(なんちゃってね)

 リナはきょろっと辺りを見渡して、足早に図書室から出て行った。

 だから、気づかなかったのだ。

 残されたセドリックの顔が、真っ赤に染まっていたことに。

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