第25話 デュークからの招待状
早朝の教室。
リナは、アルフレッドの部屋で話していたことを思い返してた。
もう少し、話を訊いてから判断すべきでは無かったのか……と。
でも、今の時点でリナが出来ることはない。
気軽に引き受けてしまった依頼は、実行するには情報が少なすぎて。
「リナ・ポートフェン嬢」
いきなり自分の名前を言われて驚く。
考え込んでいて、近付いてこられたのに気付かなかった。
「驚かして申しわけございません。デューク・リネハンと申します」
きれいな礼を執ってくる。
リナも慌てて令嬢としての礼を執る。
「失礼致しました。リナ・ポートフェンと申します」
「同じ教室に半年近くいて、今更自己紹介も無いですよね」
と言って、デュークはにっこり笑う。見る限りなかなかの好青年。
イケメンの部類だ。
「ご自宅の方には、夜会の招待状をお送りしたのですが」
「招待状は、父が管理しておりますので。申し訳ございません」
「いえ、当然でしょう。そう思いまして、こちらに一通持ってきました」
リナは、デュークから白い封筒を渡された。
「僕の誕生祝賀の夜会です。良かったら、僕のパートナーとして参加して頂けないでしょうか」
もう一度礼を執られた。
(まずい。私一人の参加になる)
「とんでもございません。私など、上位貴族マナーも何も分かっていない田舎娘でございます。どうか、お許し下さい」
「ジークフリート様のパートナーされたときは、堂々としていたのに」
「思い出しただけでも、恥ずかしいです」
(本当にね。許されるなら転がりまくりたいくらい、はずい)
「伯爵家の夜会程度だったら、これからも誘われるんじゃない?」
いきなり形式的な言葉使いじゃなくなった。
「フォローするから、練習と思ってどうかな? 成人になる誕生会では無いから比較的小規模だし。練習には丁度良いと思うよ」
(これは……断れないかな。この人、会話の主導権握るのが上手だ。なんだか、セドリックに似ている)
「そうですわね。リネハン様がフォローして下さるのでしたら」
「夜会では、リネハンがたくさんいるから、デュークって呼んでね。リナ嬢」
「はい。デューク様」
(……会話の誘導はセドリックより上手だ)
父は、兄に説得してもらおう、リナはそう堅く心に誓った
夜会の招待は、令嬢の場合ドレスや小物の準備とかもあるので、昨日の今日という感じで誘われたりしない。
時間があるのは良いのだが、その都度ドレスを新調するとかは勘弁して欲しい。
「パートナーになってもらうんだったら、一度ご挨拶に伺って正式に申し込まないとね」
と、デュークが言い出した。
「死にたいですか……」
「え?」
リナは、しまったと思う。鏡が無いから分からないけど、絶対顔色悪くなってる。
「え……と。私、父と兄が2人……いて、その……」
(ああ、しどろもどろだ)
「ああ。なんとなく分かるよ。うちも妹が2人いるから。変な男が寄ってきたら……」
と言いつつ、デュークもちょっと怖い雰囲気に。
(あ……同類でしたか)
「とりあえず、君のお父様にアポとれたので、今日伺おうと思うのだけど」
(行動が早いな)
「今日……分かりました。兄も一緒で良いですか?」
「もちろん」
そして放課後、そつなくアルフレッドに挨拶したデュークと一緒に馬車で、久しぶりの実家の屋敷に戻った。
アルフレッドからは、心底恨めしそうな顔をされたけど。
巻き込んでくれって言ったじゃん。




