第27話 リネハン伯爵家の夜会 当日の準備
リネハン伯爵家の夜会当日。
私はお昼過ぎから、デュークのお屋敷にいた。
夜会服や小物は全て、リネハン伯爵家が用意してくれたから。
リナ・ポートフェンは、招待客としてではなく。主催側として参加することになっていた。
本来なら、婚約者か身内の女性の立ち位置。
だから、デュークはリナの父親に許可を取りに行ったのだった。
リネハン伯爵家の侍女達によって夜会服に身を包み、ドレスアップさせられたリナを応接室に連れて行く。
今日着ている夜会服は、入学式後の夜会で着ていた可愛いものとは違う。
デュークの見立てで作った、薄いグリーンの少し身体の線が出るようなドレス。それを誤魔化すように腰から下にレースをふんだんに使わせた、少しだけ大人っぽいものにしている。
ポートフェン子爵だったら、絶対に選ばせないもの。
そのドレスに同色の夜会用の手袋をはめ手には扇子を持っている。
「この前の石。使ってくれるんだね」
デュークが嬉しそうに言う。
「せっかく、デューク様が記念にって下さったものですもの。でも、大切にしまっていた方が良かったのかしら」
リナは首を傾げて訊いてくる。
「いや。使ってくれた方が嬉しいよ。今日だけでなくても、ずっと」
その言葉に、リナが微笑む。
デュークは、リナの可憐さに本来の目的を忘れてしまいそうだと、思っていた。
ほどなく、リネハン伯爵がやってくる。小太りのおじさんだ。デュークは母親似のようだと思った。
(デュークには悪いけど、比べたくない)
「あ~。リナ・ポートフェンだったけか。よく参られた」
「お招き頂きまして、ありがとうございます。クラレンス・ポートフェンが娘、リナにございます」
リネハン伯爵の偉そうな挨拶に対して、リナは型どおり礼を尽くす。
(どこの世界にもいるよね、こんな奴)
くらいにしか思わないくらいに、リナはこの手の男には慣れている。
リナの挨拶にふんっ、と鼻を鳴らす。
「父親の名にすがるか」
(いや、これ自分より格上の身分の方に対する、女性の正式な挨拶ですからね。独身なら父親の名の後に、結婚してたら夫の名の後に自分の名を名乗るの)
「父さん、今日は無理言って来てもらってるんだから……」
ジュークから窘められても、態度が改まらない。
最初ハナから気にくわない小娘認定だろう。
「せいぜい恥を掻かされないようにするんだな。デューク」
(あ……明らかに、デュークがムッとした)
「今日のお役目、精一杯努めさせて頂きます」
リナは、また礼を執った。
(前の世界の取引先の社長とかより全然可愛い態度だし)
今さらこんな事で、怒ったりしない。だから、親子ゲンカはよそでやってくれ、とリナは思うのであった。
夜会は、主催者であるリネハン伯爵の挨拶で始まった。
リナは、今回は主催者と同じ立ち位置なので伯爵側にいる。
(本来は婚約者か身内の女性が努めるはずの役だもんね)
妹たちは年齢が達してないから、夜会に出れないそうだ。
今日は使用人も忙しいので、親戚のお屋敷に預かってもらってるとのこと。
ということで、リナはデュークと一緒に挨拶されてる。
リナとの関係を訊かれると
「クラスメイトなんですよ。まだ口説き中なんです」
なんて、聞き捨てならないことを言ってるが……。
夜会や舞踏会を主催するときは、屋敷の使用人だけでは足りないので助っ人を頼むことが多い。
その助っ人の中に、兄とセドリックが潜り込む算段になっているが、今のところ会場内にはいないようだった。




