第19話 リナとエイリーンの思惑
私は、セドリックの言った根回しとか裏の仕事を任せて、王太子殿下の婚約者エイリーン・マクレガーとの接触を持つことにした。
エイリーンに悪役令嬢として動かれてしまっては、ジークフリートを追い落とす材料を、第二王子派に与えてしまうから。
単にジークフリートと接触するときに、エイリーンがいた方が都合が良いというのも有るのだけれども。
男女の友情。こっちの世界の方が難しそうだ。
社交シーズンが始まって、学園は開店休業状態になっている。
婚活中の令嬢はもとより、婚約者がいる令嬢も昼間のお茶会や夜会に出るのに忙しいからだ。
授業自体は、少なく。殆どが課題を与えられ自主的に調べたり、レポート作ったりで1年生と2年生の一部の生徒は学園の図書室に入り浸っていた。
リナは図書室でエイリーン・マクレガーを見つけ、自分のレポートと資料を持ってさりげなく横までいった。
「横に座ってもよろしいでしょうか?」
エイリーンからチラッと見られたけど、それ以上の関心は無く。
「どうぞ」
とだけ言われた。
エイリーンはゲームで見るよりも、大人っぽい感じがする。
まぁ、ジークフリートと同じ年齢という設定だったはずだから、リナより2歳年上なのだが。
色味が濃い金髪を持ち、プライドが高く、隙が無いほどの美人なのも、近寄りがたい雰囲気を醸し出すのに役立っているという感じだ。
リナは歴史の資料を見ながらレポートを作成していた。
この世界の歴史だから、元の世界の知識を頼れない。ビックリするほど、元々のリナの知識も無い。
さすがだ、下位貴族の奥方になる知識しか入れて貰えてないなんて、ポートフェン子爵の意図が透けて見えまくりである。
「あの……マクレガー様」
「……なんです?」
顔も上げず、レポートを書き綴っていく。
「ここの解釈が、分かりづらくて……」
「どこ?」
今度は、ちゃんとリナの方を向いてくれた。
エイリーンはリナと距離は取るけど、話しかけても無視はしない。
意外といい人なのかも知れない。
そこに、つけ込んで何日か課題をご一緒させてもらった。
ジークフリートの視線が背中に刺さる。
露骨に見ているわけでは無く、友人としゃべりながら、というのが器用なところだとは思うけど。
何日か集中して頑張ったおかげで、お互いレポートもまとまりつつあった。
リナは、ふと思いついたようにエイリーンに訊いてみる。
「マクレガー様は、ジークフリート様の婚約者、なのですよね」
「そうだけど?」
エイリーンも、作業をやめてリナの方を見た。
「ちょっと前まで、女の子……ご令嬢たちに囲まれてるジークフリート様を見てて、なんとも思われなかったのかと」
エイリーンは、キョトンとしてリナを見ていた。
「入学式の夜会のパートナー取ってしまった私が言うのも何なんですけど」
その節は、すみませんでしたって一応謝っておく。
「ああ。良いのよ。断れないでしょう? 学園は身分差が無いとはいえ。王族の誘いは」
(そうだったのか……今の私だったら、速攻断っていた)
「わたくしたち、婚約も結婚もお仕事ですもの」
エイリーンは曖昧に笑って、リナに教えるように説明する。
「ご存じかもしれないけど。歴代、王太子殿下は、お生まれになられたらすぐに婚約者が選ばれるの。たまたま、ジークフリートが生まれたときに、公爵家に1ヶ月早く生まれた女児が私だった。ただ、それだけのこと」
(そんなものか。政略結婚だもんなぁ)
それで、悪役令嬢バリに嫉妬したり、意地悪したりしていないのか。
「良いんですか? そんなこと言って」
「良いも何も、周知の事実ですわ。それより、貴女こそどうなのよ。セドリックとずいぶん仲が良いじゃないの」
なにか面白がるように、エイリーンが話をふってきた。
(それ、ここで言う? 侮れないなぁ~。もう、素直に言っちゃう)
なにか思惑が有るだろう、エイリーンの話に乗った。
「なんかアラン様に気に入られちゃったみたいなんですよねぇ」
セドリックと廊下で同じ会話してるから、今更だ。
「あら。そうなの」
なんか、人の恋バナに目を輝かせてるJKのようだ。
「でも、同じクラスにいるのにアラン様からは何も無いので、戸惑ってるんですけどね」
リナはわざと溜息をついてみせた。
「なるほど……。自分からいくわけには参りませんものね」
「ですよねぇ。どうしたもんですかねぇ~」
表面的には、別に答えなんか出なくても良いたわいない女子トーク。
お互いクスクス笑いながら、どうしましょうかねぇ~って言っていた。




