第18話 お兄様の部屋 セドリックの本音とリナのお仕事
「俺じゃないよ。リナちゃんからチョッカイかけてきたんだよぉ~」
子どもみたいになって、リナの同情を買おうとしてるのが見え見えで……。
(思いっきり、その状況を利用してたくせによく言う)
「本当か?」
アルフレッドがリナに確認をとる。妹に向ける顔は、優しいお兄様の顔。
「半分は本当ですね。あとは、いいように利用されてたので、どうしようかと思ってたところですが」
リナは、アルフレッドに本音で話した。今までの妹ぶりっ子は無しで……。
アルフレッドは、妹の変化に驚いているけど、リナは、セドリックの方に向き合った。
この部屋は、アルフレッドが学園側の監視を外してくれている。
今なら、内緒の話を本音で出来る。
「この間の私の言葉。セドリック様にはどう聞き取れたのでしょう」
伝わってなければ、この話はこれでお終い。
セドリックは見込み違いだったと切り捨て、他の方法を考えないといけなくなる。
「あ~、あれ……ね」
チラッとアルフレッドを見て、視線をリナに戻す。
「王子たちをどっちも助けたいから、協力してくれ……。だけど、その判断は俺に任す……だろ」
(おお。正しく伝わってた)
「さすがですわ」
リナは思わず笑みを深めた。
「ちょっと待て、話が見えないんだが」
アルフレッドが焦ったように言う。
「まだ、セドリック様の返事を聞けてないので、詳しい話は言えないんです」
「アランは、ジークフリートの補佐をしたいと言っている」
唐突にセドリックが言い出す。
「でも、派閥の状況で、それを言うのが許されない立場なんだ。俺は、なるべくならアランの意思に添いたい。だけど、ジークフリートとアランのどちらかがって事になったら、俺は躊躇無く、ジークフリートを追い詰める。これが俺の本音だ」
取り繕わない、真剣な厳しい顔。
「それで? 俺の本音を引き出したんだ。そっちも何かあるんだろ?」
やっとセドリックがリナを対等に見てくれた。
「私は、現国王の依頼の下、動くことになりました。これから先、言う事は決して口外されては困ります」
セドリックもアルフレッドも驚いた顔でリナを見ている。
リナも、口外しないとの確認を取るために、二人をみた。
「分かった。口外しない」
セドリックの方が、先に約束した。
「僕も同意した」
渋々って感じだったけどアルフレッドもリナに約束してくれた。
「現国王は、『学園在籍中の王太子と第二王子の安全確保』をして欲しいと、私に依頼なされました」
「ばかな…」
アルフレッドの口から思わず漏れた言葉は、誰かに聞き咎められたら不敬罪になりかねない。
「……お前……何、気軽に受けてきてるんだよ。それ、失敗したら……」
セドリックは、国王がらみの任務の重さを充分把握している。
「アラン王子殿下が王位に就くだけです。セドリック様には何もご迷惑はかかりません」
「お前のことだよっ」
思わずと言った感じで怒鳴ったセドリックに、リナは笑みだけで返す。
セドリックが溜息をついてリナに訊いてくる。
「確認なんだが」
リナも、セドリックの方を向く。
「リナちゃんは、国王陛下の依頼……受けた時点で、命令に変わってるんだよな。国王命令の意味分かっているのか?」
(意味……この世界独特のものが有るのかな?)
キョトンとしていたら、二人が心配そうな顔になってきたので、一応言ってみる。
「国王命令には、従うしか選択肢がなく。必ず国王陛下の希望に添った結果を出さなければならない……でしたっけ?」
確か、日本の様に象徴天皇制ならともかく、前世の王政国家は未だにこのルールが適用されているはずだけど。
「分かってて、拒否権があっても受けてきたって事か……」
アルフレッドも、頭痛いとばかりに、手をこめかみに当ててた。
そして、覚悟を決めたように言った。
「僕も巻き込んでくれ。僕にも伝手があるし、この部屋の提供も出来る」
(そういうと思ったから内緒にしてたんだけどな。アル兄様)
セドリックの方はというと、国王命令なら、交渉以前の話だと思い直していた。
自分の任務にも、モロかぶりだしな。
セドリックが降参って感じで、ため息交じりに言う。
「わかった、根回しする。しかし何考えてるんだ。こんな年端もいかない……」
セドリックは難しい顔で、ブツブツ言い出した。
年端もいかないって、2~3才しか変わらないはず。
まぁ、吉岡里奈の方は、10歳以上年上なんですけどね。
セドリックもアルフレッドも、ちゃんと仕事をしてくれるだろう。
表向きの仕事は、両王子の学園にいる間の安全確保。
王様が『簡単なお仕事』と言ったのは、実は学園内にいる間の王族を含めた学園生の安全は、改めて誰かに依頼しなくとも、大人たちの手によって保証されているからだ。
でなければ、歴代高位貴族も卒業しているこの学園自体、もう存在しないものになっていただろう。
私が、その簡単なお仕事の依頼のみを言ったにもかかわらず、この反応。
『学園在籍中』は命令の期限。
『王太子と第二王子の安全確保』は、両名を害するものの、完全排除。
2人とも、ちゃんと私が受けてきたお仕事の意味を理解してくれてる。
私の……国王陛下の魔法物に選ばれてしまった者の宿命。
次世代の世の安定を図る。その為に、国王陛下の命令すら覆せるだけの権力を与えられたのだから。
(私の今の肩書きは『国王代理』、必要になるまで言わないけど)




