第16話 リナとセドリック 小さな賭け
国王陛下からの箝口令が敷かれているからだろう。
あの日、謁見の間から会場に戻らなかったリナは、謁見後、緊張のあまり倒れたことになっていた。
毎年のように2~3人は緊張とコルセットの苦しさで倒れてしまうものが出るので、特に不審がられることもない。
なので、すっかり友人になった令嬢たちからは、口々に「大丈夫でしたか?」とか「リナ様でもそういうことがあるのですね」とか、心配と安堵の声かけをして頂いた。
王様のご不興をかったのかもと心配かけたらしい。有り難いことだ。
ゲームでは、クラスメイトとの関係は冷え切ってた感じだったので、現実もそうなるかもと、覚悟していたのだけど。過ごしやすくて良かった。
真実を知っているだろう、王子様達は私の方を心配そうに見たけど。
その後は、それぞれの友人……ご学友だろうな……と談笑しているようだった。
リナは、休憩時間。そっと、教室を抜け出した。
寮に戻るときでもないと使わない2年生の教室に向かう廊下。人影は無い。
「よう、リナちゃん。こんなところで、ふらふら歩いてると危ないよ」
いつの間にか、セドリックが側までやってきてた。
ゲームでよく見た、優しいお兄さんの顔だ。
ゲームをしていたときは、本当にこの顔が好きだったのだけど……。
(もう、私には向けて貰えないかな)
「こんにちは。セドリック様」
「はい、こんにちは。今日は、名前で呼んでくれるんだ」
リナも、セドリックと同じようにニッコリ笑う。
この人に、拙い演技や小細工は効かない。
百戦錬磨だろう高官を手こずらせる天才だもの。
だから、ゲームの設定通りの賢さと、お兄ちゃん属性にかけるしかない。
「アルフレッドに会いに行くのなら、今日はいないよ」
知ってる。2年生の下位貴族の子息たちは、今日の休み時間は全て先生の手伝いで時間が埋まっているはずだ。
そういう風に、裏から手をまわしてもらった。
「今日はセドリック様に会いたくて待ってたんです」
にっこり笑って言う。
「俺に? それは光栄だな」
少し警戒した気配がする。表面は変わらないけど……。
こういう気配は、営業やっていた分、読むのは得意だ。
「……で、なに? なに? 場所変えた方が良い?」
ノリよく、優しいお兄さんを演じてくれているけど……。
彼は、見た目通りの優しいお兄さんではない。取り込むには覚悟がいる。
リナは、スーッと息を吸い。深呼吸をして、居住まいを正し。
笑顔を消した。
「私、ジークフリート様が好きなんです」
セドリックからも笑顔が消える。
「……えっと……。恋愛そう……だん?」
セドリックは、いきなりの発言に戸惑いを感じた。
「それと同じくらい、アラン様も好きなんです」
そう言い終わって、にっこり笑う。
子どもの、あっちもこっちも皆好き的な発言。
セドリックは、ああ、なるほどっと思う。
さっきまでの、優しい笑顔とは別の……笑顔だけど少し怖い雰囲気になった。
「ふ~ん。それを俺に言うんだ」
少し低い声で言う。
「それで?」
「……それだけですよ」
セドリックは、拍子抜けって感じの顔になった。
次に来る言葉は、協力してか、邪魔をするなの、どちらかだと思っていたからなのだが。
「誰かに言ってみたかっただけです」
過保護な身内では無い、優しいお兄さんに言ってみただけって感じ。
敵になられたときの用心と、周りの気配に配慮しました。
「……まぁ、兄貴には言えないよな」
ガリガリと頭を掻く。なるほど、判断はゆだねる……か。
「覚えとく」
と言って、私の頭をポンッと叩いて行ってしまった。
……レディの頭を叩くなよ。




