第106話 エイリーンのお茶会とジークフリートから預かった手紙
リナは、相変わらず奥様方のお茶会に、近衛騎士団の礼服を着て参加させられていた。
いつになったらこの茶番も終わるのかと思ったら。
エイリーンとフイリッシアのところで終わるらしい。
フイリッシアはデビュタント前なので、お茶会と言っても身内ばかりらしいけど。
リナは、お茶会の定番スタイルとなっている司令官服で、エイリーンのお茶会に参加していた。
ただ、今、リナはエイリーンのお膝の上にいる。
他のご令嬢達は、微笑ましいものを見てるような表情で、おしゃべりしているのだけど。
「本当に可愛らしいわ。やっと、抱っこすることが出来た」
リナはお姫様抱っこのような状態にさせられていた。
他の誰といるよりも、貞操の危機を感じてしまう。
だって、エイリーンのお顔がとても近い。手もあらぬところを彷徨っているような。
(無抵抗な私も私だけど……。ストレスか? ストレスたまっているのか?)
「エイリーン様。大丈夫ですか?」
「なぁに? 大丈夫よ、リナ様」
リナは、この受け答えを知っている。自分も同じだからだ。
全く大丈夫でないときの反応。
リナは、諦めて身体の力を抜いた。自分で癒やしになるのなら、それでいいやって思って。
(男だったら大問題だけど。傍目からどう見えても、私は女だからね)
エイリーン主催のお茶会の帰り、近衛騎士の誘導でジークフリートの執務室に連れて行かれた。
「エイリーンがすまなかったね」
「エイリーン様もお疲れなんでしょう。気になさらないで下さい」
椅子を勧められることも無かったので、リナは突っ立って騎士としている。
どういう立ち位置で、呼ばれたのか分からないなら、騎士か司令官としているのが一番無難だ。
ジークフリートがリナのすぐ側にやってきて、サラッと首元の後れ毛をもて遊びだした。
首にも指が触れ、ビクッとなる。
「じっとして。可愛いね、リナ嬢は」
懐かしいセリフだ、とリナは思った。その時は、里奈の意識は戻っていなかったのだけど。
「入学式の夜会の時のセリフですね」
リナは懐かしそうに言った。
「あの時は、口説けたと思ったのにね」
「ジークフリート様のパートナーになれて、幸せでしたよ。生涯の良い思い出になります」
ジークフリートは、優しい目でリナを見て、リーン・ポートに触れる。
「これ、アランを選んだ?」
「知ってましたか、でも」
ジークフリートは、リナの口を指一本で抑える。
「死なないよ。約束したからね」
リナは、その言葉にホッとする。
「君は二人とも助けるって言ってくれたからね。これを預けるよ」
「手紙……ですか?」
「落ちてた手紙……なんだけどね。もし、何かあったら国王に届くようにして欲しいんだ」
(何かあったら)
「分かりました。責任を持ってお預かりします」
そうして、臣下の礼を執って、ジークフリートの執務室を辞した。




