第105話 ホールデン侯爵家へのお礼 サイラスへの謝罪
次の日、リナはサイラスの執務室にいた。
「団長。昨日はすみませんでした」
珍しくデスクワークをしていたサイラスが、顔を上げる。
「リナ嬢の悪いと思ったらすぐに謝ってくる態度、嫌いでは無いけどな。部下扱いだったら、何でも許されると思ってないか?」
サイラスが珍しく機嫌悪いのを隠していない。
リナ相手に隠さないのは本当に珍しかった。
「えっと、思ってました。兄様といるみたいって……」
リナは思っていることを正直に答えた。
「兄様……ねぇ。まぁいいや。謝罪は受けとっておく。気にするな、アレはセドリックが悪い。リナ嬢は何も知らず、俺に話を振ってきたんだ。この話は、もうここでお終い」
サイラスは言外に蒸し返すなと言っていた。
今、自分が機嫌が悪いことも、自覚している。
このままリナとこの話していたら、八つ当たりしてしまいそうなほどには。
「はい。それで、昨日の用事は……」
「ほれ」
サイラスは、リナに書類の束を渡す。
自分が見ていいのか……と、リナは思ったけど取り合えず受け取った。
「あの……これ?」
「どうせ明日には、リナ嬢のところに上がってくる書類だ。ここで処理したら分からない所も教えてやれる」
「うわ~。いやだなぁ」
「イヤじゃ無い。上官の仕事なんて普段は書類にまみれてるもんだ」
うへ~って顔をしたものの、ソファーのところで、リナは書類を処理しだした。
サイラスは自分も書類を書きながら、別のことを考えていた。
親父がアボット侯爵に抗議に行ってから、様子がおかしいこと。
もしかしたら、王太子を陥れる算段をしているのかもしれない……と。




