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第97話 リナ・ポートフェンとセドリック・クランベリーの婚約発表

 団長に言われたからじゃ無いんだけど……って、いや言われたから、かな?

 社交シーズンになったら、婚約発表の準備の為にクランベリー家に入る予定だったものを、前倒しでお屋敷に入れてもらった。


 クランべりー公爵からは、『踊れないダンスは踊らなくて良いし、礼儀は今のままで何の問題があるんだ』って言われたけど。礼儀に無頓着な武闘派紳士に、そう言われても安心はできない。


 とりあえずリナは講師を付けてもらって、礼儀作法やダンスを学んでいった。

 はっきり言おう。

 剣の練習の方がマシだ。始めたばかりの、ボロボロ状態の時の精神状態より悪い気がする。


 でも、とりあえず何とかなった、多分。

 同じ邸内にいるはずなのに、セドリックには会っていない。

 いや、同じ邸内にいると思ってないと思う。公爵邸、たいがい広いし。

 放課後に練習して、夜はちゃんと学園内の寮にリナは戻っていたから。




 そんなこんなで、リナとセドリックの婚約披露の夜会当日が来た。

 リナは、ドレスや小物を公爵家でそろえて貰い。お肌も整えられて。

 なんか、もういっそ可愛らしさを強調しましょうって事で、紅色に近い濃いピンクで、抑え気味ではあるのだけど、裾がファッと広がるドレスを身に着けていた。

 今日の夜会は、ポートフェン子爵家も当然主催者側として参加しているので、ドレスもその辺を配慮している。


 公爵家、子爵家主催とはいえ、夜会は王宮で開催された。

 参加メンバーがカオスになっているなぁとリナは思う。

 国王と王妃は最初顔見せしただけだけど。他の王族の方々は残っているし、リナのクラスメイトの下位貴族令嬢方も招待されている。

 ここまで、上から下まで幅広い階級がそろっている夜会なんて、デビュタントくらいではないだろうか。


 主立った方々に二人で挨拶をして、やっと人心地付いた。

 セドリックは仕事上、相手をしないといけない方々や友人と雑談をしている。

 リナは、クラスメイトと雑談してた。側には、さりげなくサイラスがいたり、クリフォードがいたりするけれど。

 ジークフリートとアランは、最初の挨拶したっきりこちらに近付いて来ない。

 まぁ、ホールデン侯爵やアボット侯爵もいるから、その辺の配慮だろう。


 そうしている内に、4~5人の少し豪奢なドレスを着たお姉様方が、リナの方にやってきた。

「リナ・ポートフェン様。この度はご婚約おめでとうございます」

「ありがとうございます。マーティンソン公爵夫人」

 リナはスッと礼を執る。

(さっき挨拶した人だ。えっと、王妃様の親戚だっけ。ちょっと、きつめの美人さんだ)


「セドリック様のお相手は、ずいぶん可愛らしい方なのね。失礼ですが、デビュタントはもうお済みなのかしら」

「昨年……拙いながら、国王陛下に拝謁賜りました」

「そうですの。昨年は社交界であまり」

「これは、マーティンソン公爵夫人ではないですか。見る度にお美しくなられて、公爵夫人に収まっているのがもったいない」

 リナを助けるつもりで来たのだろう、サイラスが会話を遮って話しかけてくる。


「あら、サイラス様。お久しゅうございます。ですが、いつから女性同士の語らいを邪魔するような、無粋な方になられたのでしょうか」

「これは…」手厳しいと、サイラスが言いかけたのをリナも遮って言う。

「同感ですわ。せっかく会話を楽しんでおりましたのに」

 リナはサイラスに、にこやかに、笑って見せる。

(おバカだねぇ~。女の戦いに男が口だしたら、双方から攻撃受けるに決まってるだろうに)


「マーティンソン公爵夫人様。たしか、昨年のお話でございましたでしょうか」

 リナは、会話を続けるべくマーティンソン公爵夫人の方に向き合う。

「シェリルでいいわ。私も、リナ様と呼んでよろしくて?」

 シェリルはリナに対する認識を改めたようだった。

「もちろんでございますわ、シェリル様。わたくし、しがない子爵令嬢ですので、昨年はみなさまが参加するような夜会にはとうてい参加できませんでしたの」

「まぁ、率直におっしゃるのね」


「普段は騎士団に所属しておりますもので、つい率直な物言いが身に付いてしまったのですわ。お許し下さいませ」

 スッと、リナはドレスのすそを持ち、軽く頭を下げる。

「騎士団に……手を見せて頂けます?」

「え? あ……はい。マメが出来て、あまりきれいな手では無いのですが」

 リナは手袋を外し、両方の手のひらをシェリルの前に差し出す。

「かたいですわね。マメも……」

 なんか、みんなから見られたり触られたりで、恥ずかしい。綺麗な貴族令嬢の手じゃ無くなっているからね。


「わたくしね。クランベリー公が、貴女のお父様を取り込むために騎士団司令官の地位を与えたのだと思っておりましたのよ」

(半分正解……かな。私の父ではなく、私を取り込むためだから)

「女性の身で、苦労なさったのよね。うちの弟なんか剣の習い始めは泣いてばかりでしたもの……」

 他の方々も、同意してる。ここは素直に同情されておこう。


 高評価で、うわさを流して頂けるとありがたい。

 貴族社会とか関係無く、女性は自身の上下関係が曖昧な分、人間関係が複雑だ。

 空気を読み、同調する。

 全員に好かれるのは不可能だけど、男性に庇われて自ら敵を作るなんて愚かなマネはしたくない。

(だからごめんね、サイラス様。一緒に攻撃してしまって)

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