「落ち葉の約束」
第4話 – 3ページ目:富豪たちの夜
夜 – ミヤの家、応接間
クリスタル製のシャンデリアの光が、クリーム色の壁の上で優しく揺れていた。
淹れたての紅茶と白い花の香りが、部屋中に静かに広がっている。
ミヤの母は、鏡の前に立っていた。
真珠のイヤリングを整え、黒いイブニングドレスに最後の視線を送る。
彼女が振り返ると、目がミヤに留まった。
ミヤはソファに座っていた。手にスマホを持っているけれど、画面はずっと暗い。
ただ、虚空を見つめていた。
母は、そっとため息をついた。
「ミヤ、まだ準備してないの?もう時間よ。」
ミヤは顔を上げずに、静かに言った。
「……行きたくない。」
短い沈黙が、その場に落ちる。
母は、静かに近づいた。
「今日はただのパーティーじゃないの。」
「大事なお客様も来るし、お父さんの仕事にも関わるの。」
ミヤは、目を閉じた。
「お願い、ママ。」
「今夜だけは、一人でいたい。」
母は、彼女を見つめた。
その目には疲れがあった――眠れば消えるような疲れではない。
それでも、母は優しく、しかしはっきりと言った。
「ごめんね。でも今日は無理。」
「準備してきなさい。」
ミヤは何も言わなかった。
ただ立ち上がり、静かに自分の部屋へと向かった。
ミヤの部屋 – 30分後
彼女は鏡の前に立っていた。
シンプルで上品なドレスを身にまとい、髪をまとめている。
しかし、それで気持ちが良くなることはなかった。
長い間、彼女は自分の姿を見つめていた。
その目は、疲れていた。
不眠のせいではない――
待つことのせいだった。
彼女は、そっと呟いた。
「どうして、こんな気持ちになるんだろう。」
静かにバッグを手に取り、部屋を出た。
廊下
母が待っていた。
ミヤを見ると、優しく微笑んだ。
「似合ってるわ。」
ミヤは、ただ軽くうなずいた。
話す気にはなれなかった。
家の外 – 車の中で
車が、静かに家を離れた。
街灯の光が、窓の上を滑っていく。
黄色く色づいた葉が、風に舞い、アスファルトの上を転がっていた。
ミヤは、窓に頭を預けた。
心の中で呟く。
「こんな夜に、パーティーなんて……」
それから、目を閉じた。
「でも、行くしかない。」
車は、秋の街並みを進んでいく。
ミヤはまだ知らなかった――
今夜、自分が何も知らない人々に囲まれたその場所で、
彼女の人生を永遠に変えてしまう真実に直面することになるとは。




