第2章: 雪の約束
第2話 – 13ページ目:教室の謝罪
午前8時23分。
二階の廊下は、ひっそりとしていた。
教室の中から聞こえる声が、かすかに響き、廊下を半ば薄暗く保っていた。
ミヤは、立ち止まった。
サクラの前に。
髪の長い、静かな少女。目はいつも何かをしまい込んでいるが、決してそれを外には見せなかった。
彼女のライバル。
成績だけじゃない。全てにおいて。
ミヤは、息を吐いた。
「サクラ…あの日のこと、謝りたくて。」
サクラが振り返る。
その視線は、最初は床の辺りをさまよい、それからゆっくりと顔を上げた。
「…何の話?」
ミヤは、バッグをぎゅっと握りしめた。
「前のこと。私、ひどいこと言った。」
サクラは、しばらく黙っていた。
「覚えてる。」
冷たくもなく、温かくもなく。ただ、正確に。
ミヤは、少しだけうつむいた。
「謝りたかった。」
「今?」
ミヤは、唇を噛んだ。
「遅いのは分かってる。でも、言わないままは嫌だった。」
サクラは、ミヤから視線を外した。
廊下を見渡す。数人の生徒が通り過ぎていった。
「許してほしいの?」
ミヤは、間を置いた。
「それは違う。そういうためじゃない。」
「じゃあ、何?」
ミヤは、そっと息を吸った。
「自分のため。」
短い沈黙。
サクラは、もう一度彼女を見つめた。
今度は、少し長く。
彼女の瞳の中に、何かが揺れた…
柔らかくもなく、硬くもなく。ただ、本物だった。
「そ。」
彼女はバッグを手に取った。
「聞いた。」
数歩、歩いた…そして、立ち止まった。振り返る。
「でも、まだ信じてない。」
ミヤは微笑んだ。
小さく、無防備な笑顔で。
「うん、それでいい。」
---
サクラは去っていった。
ミヤは、その場に残された。
数秒間、ただ床のタイルを見つめていた。
それから、静かに息を吸った。
「これでいい。」
「許すかどうかは、相手の仕事。」
そして彼女は、振り返らずに教室へ向かった。
---
教室にて
サクラは座っていた。
目は黒板の方を向いているが、心は遠くにあった。
ノートを開き、何かを書きつづった。
変わろうとしてる人を、すぐには信じられない。
でも、見ないふりもできない。
ペンを置く。
ノートを閉じた。




