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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
マウストで征西を見守る

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129 新しい辺境伯

 俺はケララと「北方問題」について話し合った。


「――というわけだが、ケララ、お前はどう思う?」

「あっ、はい……」

 どうも、照れたようにケララは視線をそらした。

「その……夜伽のあとに、すぐに政務に切り替えられるというのは、さすがですね……」


 そういう反応を改めてされるとこちらも気恥ずかしくなる。

「お前なあ……そもそもこの議題を夜伽のあとに持ち出してきたのはお前のほうだぞ。先に切り替えたのはお前だ。責任を俺になすりつけるな」


 もともと、北方についての話は違う機会にする予定だった。いくら俺だって、政治の話の合間に愛人との情事をはさんだりはしない。それはものの順序を著しく逸脱している。


「いえ……あくまでも私は直轄地についての話が終わった次に、この話をしようと思っていたんです。そこに、摂政閣下が体のほうをお求めになられたので……」

 ずいぶんとケララは赤面している。どうも、以前よりもケララは女らしくなったというか、純粋に感情が豊かになってきた気がする。

 もしかして、それだけ俺に惚れてくれたということだろうか。それはそれで男として悪い気はしないが。


「わかった。俺の負けだ。だから、話を元に戻させてくれ」

 俺は笑って言った。

「それで、この計画を聞いて思うところはあるか? お前の率直な意見を聞きたい」

 大きく物事を動かす時は、信頼のできる少数の意見を確認すれば事足りる。

 つまらない者は事が動くこと自体を恐れて、まともな判断が下せなくなる。また、定見のない者は単純に多数派のほうに流れてしまう。


「悪くないかと思います。向こうがよほど強情でなければの話ですが」

 ケララはまた重臣の表情になっている。やはり、ケララこそよほど切り替えが早い。


「そうだな。すべては相手のある話だ。しかし、今のうちに北方を完全に掌握しておくに越したことはない。選択肢が大きく増えるからな」

 ハッセが征西でどんな結果を出そうが、俺が北方まで支配してしまえば、国は作れる。もはや、サーウィル王国の摂政という地位すら必要ではなくなる。


「ありがとう。ここから先はタルシャを呼んで話を詰めていく。お前のお墨付きももらったし、当事者に計画を話そう」

 だが、タルシャという名前を聞いて、ケララはわずかに眉をひそめた。


「まさかと思いますが、また夜伽ですか……?」

「違う! もう、そちらのほうは十分に満足した。……とはいえ、タルシャのほうがどう思うかはよくわからない……」

 俺はタルシャの性情を思い浮かべた。

 何事も貪欲で精強で、王都の人間が想像する通りの勇ましい北方人をそのまま型に流し込んで作ったような女だ。

 ただ、王都の人間が考える北方人と一つだけ違うところがある。北方人は野蛮ではない。むしろ、誇りを王都の人間よりはるかに大切にする。

 もっとも、これだけ権力者がころころ変わった王都で誇りを元に筋を通していれば、そいつはどこかで滅んだだろうから、結局は土地柄の問題なのかもしれないが。



 そして、俺の部屋に入ってきたタルシャはすぐにこちらに迫ってきた。

「気持ちを静めないと政務の話もできそうにない……。アルスロッド、頼む……」

 この女は異常なほどに情熱的だ。まさしく、一族の血を正しく受け継いでいる。


「わかった。お前が話を聞いてくれないとどうしようもないからな。気が済むまでやってくれ」

 俺はタルシャと長々と愛し合った。

 いっそ、これでタルシャに俺の子ができてくれれば、戦略はいいように運ぶが、それはどちらでもいい。


「それで我への話とは何だ?」

 ベッドの中で、鼻と鼻がくっつきそうな距離で、タルシャが尋ねてくる。仮に密偵が紛れ込んでいても、こんなところで密談をしているとは思われないだろう。


「タルシャ、お前の父親であるマチャール辺境伯サイトレッドに、辺境伯をお前に譲れと通達を出した。いや、むしろ譲ったという通達だな」

 俺は小さく、首を横に振った。

「サーウィル王国の人事としては、すでにお前をマチャール辺境伯に任命した。タルシャ・マチャール、お前が現時点のマチャール辺境伯だ」


「また、ずいぶんと突然の話だが、吉報はどこで聞いてもよいものだな」

 タルシャはいかにも英傑といった表情で凛々しく笑った。間違いなく、王都の貴婦人が浮かべる態度ではない。この女は生まれながらにして軍人だ。


「しかし、前にも話したとおり、父親は素直に我に地位を明け渡してくれるとは思えんぞ。父親は乱暴だが、自分の力で土地を守ってきたという自負がある。それに女である我をどこかで軽んじている面もある」


「わかっている。だから、お前の力で奪い取れ。前からの約束どおり兵は貸す。いや――俺も向かう」

 にやりと俺は笑って、タルシャを胸にかき抱いた。


「マウストに戻ったことで、俺も時間が取れるようになった。助っ人ぐらいはできるさ。それなら親父を追い出すぐらい、すぐにできる」

「そうか。我のためにそこまでしてくれるか」

 タルシャのほうも笑いながら、俺に抱きついてくる。


「我は史上最強の、いや、史上最高の名君のマチャール辺境伯となる! それを今ここで誓おう! 我にとっては今の父親の土地では狭すぎる!」

「そうだ。もっともっと広げてもらわないと困る」

 タルシャにはシンゲンという職業が宿っている。

 それは土地を守って汲々とするような者の職業ではないはずだ。


「北方は丸ごと全部お前が支配するつもりでいろ。それで、俺が信頼できると思ったら、俺に兵を貸せ。一緒に天下も取るぞ。ダメだと思ったら、その時は俺に槍を向けろ」

「お前と戦う気はうせた。心配するな」

 タルシャは俺の胸の中でくすくすと笑った。その日聞いたタルシャの声で一番やわらかいものだった。


「我はお前のことが好いた。好いた男と殺し合うのはおかしなことだからな。アルスロッド、お前がたとえ一兵だけになっていても、我はお前の味方をしてやるぞ!」


「俺に不幸があるとしたら、お前がマチャール辺境伯になったらしばらく離ればなれになることだな」

 こんなに俺を愛してくれている女と別れるのはつらいものだ。

「だから、今のうちにもっと愛し合うぞ!」

現在、GAノベル2巻の作業を進めております! 2巻はかなり内容ぎっしりでお送りします! ぜひよろしくお願いいたします!

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