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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
マウストで征西を見守る

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130 新辺境伯の進撃

 俺はすぐに領内の者たちに北方侵攻の兵を準備させた。

 軍事行動の目的は新しいマチャール辺境伯タルシャを送り込むことだ。


 いきなりのことで戸惑っている者も多かったが、俺は粛々と用意をさせた。

 そこまで大軍にならずとも勝機はある。なぜなら、新しいマチャール辺境伯は傀儡でもなんでもなく、父親以上の英雄だからだ。


 表向きは陛下が征西を企図している間に北方にまで完全に王国の力が及ぶように兵を送るというものだ。

 これはおかしなことではない。当初から北伐そのものは実行されていて、それが謀反で一時中断していただけだ。だから、摂政の思いつきである軍事行動にはならない。


 もっとも、兵を送るのがとりやめになる可能性もまだ残っていた。タルシャの父親であるサイトレッドが素直に娘への譲位を認めた場合だ。

 その時は堂々とタルシャが本拠地の城へ入城すればいい。


 結局、サイトレッドは期限までに何の連絡もよこさなかった。俺と戦う意思があるということだ。オダノブナガはこうなることはわかりきっていたと言っていた。


 ――信玄の親父もずいぶんな乱暴者でな、甲斐を統一し、信濃にも領地を広げようとしたが、その矢先に信玄に追い出された。信玄一人の独断でそんな計画は達せられないから、多数の支持をとりつけていたわけだ。


 だろうな。クーデターっていうのは、味方がそれなりにいないと維持しようがない。

 軍事的に不利な状況でのクーデターはすぐに鎮圧される。最低でも旧体制と同等の軍事力は必要になる。同等でもまだ危うい。人間というのは保守的なものだから、何かが変わること自体を普通は避けたがる。


 ――ワシはこの世界の状況を聞いただけだが、サイトレッドという男も似たところがある。戦争は強いが、民政が粗雑だ。おそらく、家臣団からの評判はそんなによくはない。外から侵略者が来れば手を取り合って戦うだろうが――


 それが由緒正しき伯爵の娘なら、そっちにつこうとするってことだな。


 ――先に言うな。まあ、そういうことだ。念には念を入れて、サイトレッドの悪政を糾弾する書状をタルシャの名前で北の領主とサイトレッドの家臣たちに送り付けておけ。敵の数が減るかもと思えば安いものだろう?


 ありがとうな。それはいい案だ。俺としても、戦いは長引かないほうがうれしい。


 長々と戦争をしていれば王都から変な目で見られるし、そもそも自軍の兵が疲弊する。それで征西に加わる選択肢をとれなくなったら本末転倒だ。


 俺はタルシャを少し北の砦にまず移動させていた。

 自然とそこに北方の領主たちが馳せ参じた。タルシャの実力を評価する者は多い。ついに立ったかと激賞する領主もいたという。

 

 やがて、そこにサイトレッドの下から抜け出して加勢する者が加わるようになる。

 その数がじわじわと増えてきたあたりで、俺も七千の兵を連れて、援軍としてタルシャに合流した。

 兵力はタルシャとそこに参集した者を含めて二万強になっていた。


「面白いようにみんなが集まってきてくれる。まるで、辺境伯になったようだ」

 俺に会った時、タルシャはとんちんかんなことを言った。

「違う。お前はもうマチャール辺境伯なんだ。今から戦う敵はそれに抗う逆賊だ」


 タルシャは自分の間違いに気づいて、からからと笑った。

「ああ、ならばいよいよ負けるわけにはいかないな。辺境伯になった初戦が負けというのは困る。いや、我は最初から負ける気などないがな」


 ついに本格的にタルシャは辺境伯を譲らない父親を攻めるために出陣した。

 途中、侵攻を防ごうとする敵もいないわけではなかったが、まさに鎧袖一触、ほとんど自軍に被害を出さないままに叩きつぶした。


 後ろでその様子を見物しながら、俺は笑っていた。

 俺の攻め方が鋭い刃で切り裂くように進むものなら、タルシャの戦い方は巨大なハンマーで粉々に打ち砕くようなものだ。


 兵の使い方が上手いし、将一人ずつもタルシャのために全力を捧げようという気になっている。先天的なカリスマ性のようなものがある。

 馬の尾がついた鞭をさっと振って、タルシャは指揮をとった。その姿は実に絵になる。


 これがシンゲンって職業の力なんだろうな。独自性みたいなものはないが、やたらと采配が安定している。いつ攻めれば最大の戦果が上がるか、熟知している。


 タルシャがマチャール辺境伯領に入った頃には、多数のマチャール家の重臣たちがそこにつどうことになった。


「私たちはあくまでもマチャール家に仕える身。正式にマチャール辺境伯の代替わりの命があった以上は、それに従いまする」

 宿老の男が彼らを代表して言った。


「ああ、我は最強のマチャール辺境伯となる。そなたたちもよろしく頼む。父親のような強権的な政治をするつもりもない。不満があればなんなりと言ってくれ」

 タルシャはやさしい笑顔で、彼らを受け入れた。

 その時点でサイトレッドとの戦力差は決定的なものになっていた。


 サイトレッド側についているのは、一族間で対立していて、敵対する側がタルシャ側に行ってしまったような者ぐらいだった。それはいわば消極的な参戦理由で、サイトレッドが勝てると本気で感じている者はろくにいないようだ。

 家臣団も自分の主君を守るよりもまずは自分の一族を守ることが重要だ。勝ちの目が薄いなら病気だなんだと言い訳をして、出兵を渋る。


 タルシャは次々に砦を落として、サイトレッド側を着実に追い詰めていった。

 前回の俺の攻撃で敗戦を喫したことも尾を引いているんだろう。もはや北方の領主層の盟主とサイトレッドはみなされていない。


 辺境伯領に入ってから五日目、重臣たちの説得もあり、サイトレッドは降伏し、娘にその地位を譲ることを正式に認めた。サイトレッドは王命に歯向かったということで、領内の神殿に軟禁されることになった。


 お前は領主の器ではないと周囲に示された人間の末路は寂しいものだ。

 でも、敵が娘だったのがせめてもの救いだろうな。

GAノベル2巻の作業を現在進めております! よろしくお願いいたします!

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