第5話 草太の決意とうっかりミス(後書き挿絵、モブフとコピフ)
皆さんこんにちは草太です。
自分は今草地で orzという、縦書き表示にすると何のこっちゃ解らない、ガックリ体勢で打ちひしがれてます。
パーカーとジーンズの間を抜けるそよ風が、やけに冷たく感じます。
それもこれも自分のスキルが、【植物おせわ係】などというショボいネーミング。
かつ農業にピッタリと推察されちゃったからっす。
エルフのお姫様・ザ姫騎士姿のセラフィーちゃんと、見るからに一般兵スタイルのお供の二人が、不思議そうな表情で自分を見ております。
「草太殿は向こうの世界で、植物に関係する仕事をされていたのではないか? スキルは経験が反映して発生することも多いからな」
追い討ちにセラフィーちゃんが的を射た推察を披露する。
ええ、その通りだよ! ガキのころから畑仕事しまくってましたよ!
「もう農業はいいって、農業は.……. は~っ」
と愚痴る俺。
「なぜ落ち込む? 農業は国家の基盤となる最も重要な仕事であるぞ」
ド正論をかましてくる美少女姫騎士様。
確かにそうだけど……そのとおりだけど……。
(違うんだよ! お姫様~! 俺の求めているBIGな生き方とは違うのよぅ~~!!)
【植物おせわ係】……如何にもハズレ臭プンプンなスキルだ。
国の客人とか言っておきながら。
「ショボ過ぎるスキルの無能な虚穴人は追放じゃあ!!」
とか宣言されそうな気がするんですけど?
魔物の森とかダンジョンの深部とかに置き去りに、されちゃったり、しちゃったり、しそうなんですけど~~~!?
落ち込んでばかりでは居られない、人生七転び八起き、楽ありゃ苦もあるさ。
俺の異世界分析によれば。
ハズレスキルが本当に外れている確率は、0.001%以下である!
異能力バトル漫画なんかでもそうだが。
生命の危機に晒されるようなピンチに陥る事により。
当たりスキルどころか化物チートスキルに覚醒する、という流れが定番だ。
この【植物おせわ係】も、やがて大輪の花を咲かせるに違いない。
希望的観測をもって信じるっきゃないのだ。
そして当然のことだが、生命の危機に晒されるような、ピンチに陥っていない今のうちに、是非とも覚醒してほしいのである!
ちょうど目の前に、タンポポに似た植物が蕾を付けていたので、試しに念を送ってみる。
「開花させる方向でやるか…」
全集中で呼吸スーハ―、スーハ―、スーハ―、スーハ―。
「咲け~! 咲け~~! 咲け~~~! 咲け~~~~!」
―― ポンッ!
「え、鳴った!?」
ぬゎんと! タンポポもどきが咲いてる!
花が一瞬で咲いたのだ!! しかもポンッって効果音付き。
間近で見ていた、エルフトリオも。
「なにっ!?」
「咲いたわ……!」
「ほう、凄いではないか! 草太殿」
と驚いていらっしゃる!
「草太殿のスキルは、植物に直接作用する魔法系統に間違いないであろう」
セラフィーちゃんが太鼓判を押す。
おおっ魔法系スキル! 今、魔法を使ったってこと!?
俺の【植物おせわ係】君、早くも覚醒ですか!? 文字通り昇華しちゃいましたか!?
調子に乗って、草地のあちこちに生えているタンポポもどきに追加で念を送る。
「咲け~! 咲くんだ~! タンポポもどき達~~~!」
ポンッ、ポンッ、と二輪咲いた…… が、そこまでだった。
眉間にしわと血管を浮かび上がらせて念を送りまくったが、それ以上タンポポもどき達の蕾は微動だにしなかった。
「くそ~っ、なんで反応しないんだよ!? どういうことなの? 教えてセラフィーちゃん!」
「草太殿、それは魔力切れだ。
魔法系スキルを持つ者は、大気に満ちる魔素を無意識に体内に取り込み魔力として蓄積する。だがその速さと量はごくわずかで、すぐに魔力切れになってしまうのだ」
「ぶ~~っ! 三輪の花を咲かせただけで魔力切れなんて、役に立たないじゃん!」
下唇を突き出してブ~垂れる俺。
「そんな事はない。魔力蓄積の速さや量は、修練を積むことによって向上させられる。
何より魔法系スキルを持っていたとしても、訓練もせず魔法をいきなり発動できる者など、普通はいないぞ」
セラフィーちゃんが俺のことを褒めてくれる。
「きさまの様な役立たずのクズは追放だ!」
とは断罪されなかった。
(お姫様優しい! 好きです!!)
しかし、修練を積まないと【植物おせわ係】の化物チート化は難しいようだ。
異世界といえど、そうそう都合のいい展開にはならないってことか……
俺の主人公補正くん、ブラック企業の社畜社員並みに働いてほしかった。
ならばよかろう、やってやろうじゃないの! 前に進むことしか許されない侍の生き様を、とくと拝ませてやるぜ! 俺は農民だけどなっ!
*
「さて、草太殿には城に来ていただく事になるが。その前に……二人とも草太殿にあいさつしなさい。虚穴人は国の客人だ、名前に殿とか様とか敬称を付けるのだぞ」
セラフィーちゃんがお供の二人を促す。
双子であろうエルフツインズは、しばし苦虫を千匹噛みつぶしたような表情をした後。
食いしばった奥歯の隙間から声を発した。
「よ……よ……ろし……く、草、太……どぅお、のぅ」
「よろ……し、く……草太……さあ……あ、むわあ……」
二人とも大丈夫? プルプル震えてるし、唇の端から血がちょびっと滲んでるよ。
それにあいさつなんだから自分の名前ぐらい言いなさいよ。
やっぱり些細な勘違いで、ついうっかりお姫様にチューしようとした事がまずかったのか。
名前を名乗るのも拒絶するほど嫌われてしまったらしい。
まあしゃーない、俺もあいさつしとくか。
関係改善のために出来るだけフレンドリーに、両手の親指を立てる。
グーポーズ&キラリな笑顔をツインズに向ける。
「あーいいよいいよ、敬称なんて付けなくて呼び捨てでさ。
多少の誤解はあったけど仲良くしようぜ! モブフ君、コピフちゃんっ!!」
すると――
「!!!!!!!!?」「!!!!!!!!?」
無言のまま二人の瞳がピンポン玉のように見開かれた、驚愕の表情である。
ハテ?なぜに……?
あっ、しまった。 またうっかりだ! さっき適当に俺がつけた「モブフ」と「コピフ」っていうニックネームでつい呼んでしまった!
いや~~っ、失敗! 失敗!
二人が両手で頭を抱えながら、ムンクの叫びフェイスで
「何故その名前を~~~っ!?」とか「思考を読まれた~~~っ!!」
とかギャーギャー騒いでいるけど、何のこっちゃよう解らん。
どんな言い訳しようかな…嫌わないでね、俺と仲良くしようぜ、二人とも。




