第2話 草太、超絶美少女エルフとその他エルフに会う(後書き挿絵、セラフィー)
そこには、三人のエルフ? らしき人物が立っていた。
年齢は俺と同い年ぐらいに見える。三人とも美形だ。
特に真ん中の女の子は際立って美しい。
両脇の二人に比べると耳が小ぶりだが、超絶美少女エルフちゃん、であることは間違いない。
俺は、まじまじと見つめた。
白銀の長い髪が風に揺れて、ビロードめいた虹色に輝き幻想的だ。
形の良いまっすぐな眉、強い意志を感じる翡翠色の瞳、やや小ぶりな鼻、柔らかそうな薄い唇。
それらが少し幼い輪郭に収まっている。
長い手足と縊れた腰の、完璧なシルエットのプロポーション。
ニーハイソックスと短いスカートの間からのぞく蒼白い内腿が、俺の視線を吸引しまくる。
さらに、宝石と羽飾りで彩られたカチューシャと、一部金属の装飾が施された皮鎧が、やんごとなき人物であることをうかがわせていた。
なお、個人的な好みとして、惜しむらくは……あの……決して小さいわけではない。
日本人基準とすれば、一般的な宝玉を持っておられると思う。
ただ、昨今のゲームやアニメに登場するエロフ、もといエルフに比べると。
胸部の迫力に欠けると言うか……その何というか……つまり、そう……母性だ!
母性が足りないのだ。
漢は常に、異性に母性を追い求める生き物なのだ! だから、しょうがないのだ。
彼女を、ずっと拝んでいたい衝動を鋼の意志で振り払い。
弓を持った左の人物に目をやる。
体型と服装から男だと分かるが、非常に中性的な顔立ちをしている。
日本だったらトップアイドル間違いなしの美形なのだが……
超絶美少女ちゃんと並ぶと、月とスッポン、数段見劣りしてしまう。
実用的な鎧姿と相まって、はっきり言って地味だ、ぶっちゃけモブだ。
俺は心の中で彼のことを、エルフのモブで『モブフ』君と呼ぶことにしよう!
もう一人の弓を持った女性はなんと、モブフ君とそっくりな顔をしていた。
双子だろうか? まるでモブフ君をコピペしたようだ。
スカート姿じゃなければ見間違えそうである。
よしっ、モブフのコピペなので、彼女は『コピフ』ちゃんと心の中で呼ぶことにした!
さて、もしここが異世界なら、俺の人生の勝ち確定は間違いない!
実は、BIGになる計画の一環として、異世界ファンタジー小説を執筆しているのだ。
つまり
執筆→書籍化→マンガ化→アニメ化→ゲーム化→アニメ映画化→世界中で大ヒット→キャラ・グッズ爆売れ→印税ウハウハ→ロイヤリティがっぽがっぽ→アイドル声優からちやほやされる。
という大構想に基づいたプロジェクトだ。
学業と農作業で疲れた身体に、鞭打ちながらの創作なので。
まだ最序盤の、大学ノート5冊分しか書いてないが。
【ヒッキーの僕が、偶然家に突っ込んできた10式戦車にペチャンコにされ、異世界に転生したら、両腕を近代兵器に改造できるチートスキルを手に入れたので、魔物をバンバン倒し、あっという間にレベルがカンスト、超大金持ちになって、美少女千人のミニスカメイド♡ハーレムを作り、最後は美熟女魔王と戦い、その魔王もメイドさんの一員としちゃった♡】
というタイトルで全1000巻になる予定の。
異世界転生ダーク大河LOVEファンタジーなのだ!
(あっ、しまった!)
俺の玉稿が入れてあったスポーツバッグが……
ま、まあいい……頭の引き出しには入ってるし
そんなわけで異世界には詳しいのだ。
ここが本当にチート能力や魔法が使える、あの異世界なら。
小説の中の主人公のように、地球にいるよりも遥かにたやすく、BIGになることが可能なハズ!
美少女千人のミニスカメイド♡ハーレム、の主になれちゃうハズ!
正に漢の異世界ドリーム! やったぜ~~~♪♪
と、喜ぶのはまだ早い!
なぜなら。ここが地球と同じ宇宙にある惑星で、目の前の三人は。
エルフとそっくりさん美人型宇宙人――かもしれないのだ。
だとすると、物理法則が地球と同じになるので。
魔法やチートスキルなどという不思議能力は存在しないことになる。
それだと困る、めっさ困る!
俺が考え込んでいると、草を踏みしめる音がした。
超絶美少女ちゃんが近づいてきたのだ。ほのかに花の香りがする。
「#’、%(’#%%%’。…’#$$?」
おっと、話し掛けられたぞ!
容姿にたがわぬ透き通った綺麗な声だ。
しかし、やはり知らない言語だ。さっぱり意味が解らない。
何かを持っているようだ……。
彼女は俺の手を取る。
流麗な動作だ。
精緻な模様が刻まれ、小さな宝石が埋め込まれた指輪を――
俺の指にはめた……。
(!!!―― な……なん……だ……と……!!!)
「こ、こ、こ、これって婚約指輪か結婚指輪ですくわぁ!?
一目惚れ展開って奴ですくわぁっ!!」
思わず、2オクターブ高い声が出る。
転移者や転生者が、たいした意味もなく美少女にモテまくるストーリー……
ここが異世界である可能性に一歩近づいた!
後は魔法などが確認できれば……。
とりあえず今は深呼吸。
すると、亡くなった爺ちゃんの生前の言葉が脳裏をよぎった。
あれは小二の夏だった。
重大発表があると言われて、俺は爺ちゃんの前に正座させられていた。
爺ちゃんも正座し、瞑想するかのように目を閉じていた。やがて目をかっと見開き、おもむろに口を開いた。
「草太よ、“据え膳食わぬは男の恥!” この言葉を今後、田畑家男子の家訓とする。よいな!」
俺はしばらく逡巡したあと、ゆっくりと答えた。
「爺ちゃん…“据え膳食わぬは男の恥”…ってどういう意味?」
そりゃそうだ。いくら俺が賢いとはいえ、小二でそんな言葉を知ってるわけないのだ。
その後、眉間にしわを寄せた爺ちゃんは、小一時間ほどその言葉の意味を熱弁したのだった。
小学生に教える事じゃないだろ! ったく。
今思えば、親父もアレだが、爺ちゃんも別の意味でアレな人だったなあ。
はあ~、田畑家男子三代でまともなのは、俺だけかよ。
俺は馬鹿がつくほど真面目な青少年なので、家訓は当然のごとく実行することにする。
まずは、生まれてから16年間守り続けた接吻DTを、美少女ちゃんに捧げるのだ!
「ちゅ~~っ」
唇を数字の3の形にして、勢いよく彼女に迫った!!
あと数センチ~~ッ!
『風撃』
美少女ちゃんの桜色の唇から、俺にもハッキリ聞き取れる言葉がこぼれる。
ドンッ!! という音が聞こえたような気がした。
巨大な空気の塊に全身をぶん殴られた。
カンフー映画のワイヤーアクションのように後ろに弾き飛ばされ空中を泳ぐ。
肩から草むらにズザザザザーッと落ちて、ジャーマン・スープレックス・ホールドを決められた人ポーズで止まった。
当然だがまだ半尻が出たままだ。
なにゆえ吹っ飛ばされたのか? とか疑問に思う。
あれかな……照れ屋さんなのかな?
それにモブフ君とコピフちゃんが何か騒いでいる声が聞こえるが……。
まあいい、それよりも何よりも俺は今、猛烈に感動していた。
彼女は俺の身体に触れずに、『風撃』という言葉だけで、俺を吹き飛ばしたのだ!
これって……魔法じゃね!? 魔法ですよね!
一瞬の出来事だったので確信が持てない、再現が必要だ。
「もう一度迫ってみよう! あとチューもしたい!」
決意を口にして、農作業できたえた足を勢いよく振る。
その反動で立ち上がり、美少女ちゃんに唇を尖らせたまま突進した。
熱いベーゼまであと数歩のところで、彼女の掌が俺に向けられ、唇が唱えた。
『風撃』
風圧の直撃で足が地面から離れる。
俺は強風に飛ばされた布団のように吹っ飛んだ。
半尻状態でギリギリ踏ん張っていたジーンズが、スニーカーを伴いパンツごとすっぽんっと抜ける。
晴れて全尻となった!
間違いない!“魔法”だ!―― ここは、あの異世界なのだ!!
つまり勝ち確定なのだ~~っ!!!
「やったぜ~~~っ!!! うわはっはっはっはっはっはっはっはっはっは~~~~っ!!!」
俺は下半身を露出させたまま、高らかに喜びの声を上げ、宙を舞うのだった。




