第23話 草太、知らない方が良かった真実を知る。
チェンソー怪物との戦いから、数日経ったある日。
俺は薬草園でスキル【植物おせわ係】を使い、日課である奇妙な形の希少薬草を成長させる。
シナモン臭めいた香りの花々を満開にさせた後、隣りの畑に移動。
そこは種用の畑だ。数日前に薬草を開花させたまま、あえて刈り取らずに残してある。
風や昆虫などによる受粉をさせるためだ。
受粉が完了した薬草を種が実るまで成長させ、居候としての義務を果たした。
その後、薬草畑のさらに隣。トマト畑に向かった俺は、
「美味しく♪ 美味しく♪ 美味しくな~~~~れ♪」
と美味しくなる呪文を唱えつつ、【植物おせわ係】の「植物の成長促進」と「うま味成分爆増」をトマトに使う。
赤い宝石で彩られたシャンデリアの様に、完熟トマトが畑中に吊り下がった。
トマト畑を見渡すと、最初は10坪だったのに、いつの間にか100坪を超えている。
希少薬草を毎日ガンガン育てた結果、供給過剰になってしまい、薬草畑は縮小、代わりにトマトを栽培しているのだ。
俺のトマトはエルフの皆さんに大変好評で、すぐに捌ける。
このままでは、本当にトマト長者になってしまうかもしれない。
まあ、一円ももらってないが。
「いや~~~、なかなか良い土ぢゃあ~~ 極楽、極楽 」
畑の一角で、くつろぐ俺の従属魔物が、年寄り臭い感想を言っている。
植物系魔物であるマンドラゴラの特殊上位種こと、セクシー大根魔物のゴラコだ。
下半身が土に埋まった状態で、温泉に浸かるがごとく、だらけていた。
何故か頭に手ぬぐいを載せている。
真価の指輪に念じて、自分のスキルを確認する。
――――――――――――――
【植物おせわ係】
・植物の成長促進
・うま味成分爆増
・蔓操作
・植物系魔物とお話
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ゴラコを従属魔物にした影響なのか、
いつの間にか「植物系魔物とお話」が能力に加わった。
植物系魔物と会話が出来る能力の様だが――
ゴラコは普通に人と話せるので、検証にならない。
なので、具体的な効果や発動条件などは不明だ。
樹海に行って、普通のマンドラゴラにでも、試してみるしかないのか?
と思案していると――
聞きなれた、二足騎乗竜のリズミカルな駆け音が、近づいてきた。
「草太殿! 今日も精が出ているな!」
羽毛恐竜めいた騎乗竜に跨り、白銀の髪をなびかせる、ミニスカ姫騎士姿のセラフィー姫ちゃんだ。
いつもの例によって、俺のモノ(トマト)を おねだりしてくるかと思いきや、今日は違っていた。
「先日の、オオノコギリ角の討伐協力。及び、子供らを救った褒賞を持ってまいった!」
「おお! なんだ!? 現金でもくれるのか!? 」
セラフィーちゃんは シュタッと騎乗竜を降り、俺の前に立つ。
「先日の魔物討伐のいきさつを女王陛下にご報告したところ、草太殿の勇気ある行いにいたく感心なされ、褒賞を贈与することとなった」
お姫様が、両手で恭しくソレを掲げる。
「エルフィア女王陛下より、この度の活躍の褒賞として、
草太殿に “最高級魔法鞄” を下賜するものとする! 謹んで受け取られるが良い!」
(魔法鞄…… だと……!?)
現金より遥かに良いものだった!!!
俺は震える手でそのショルダーバッグ型の鞄を受け取る。
「こ、こ、これって! 見た目より沢山、物が入る鞄だよね!!」
「そうだ、その魔法鞄の容量は荷竜車二台分だ」
俺は小躍りし、その鞄に頬ずりする。
「やった~~~!! これですよ! これ、これ! これ~~~~~~!
異世界で絶対手に入れたい物ランキング、不動のNO1!
魔法鞄ゲット~~~!! チュッ チュッ チュ~~ッ!」
「喜んでもらえて何よりだが、少し大袈裟過ぎないか?
確かに安い物ではないが……」
俺の歓喜の舞いを見ながら呟くお姫様。
残念ながら、現地人は魔法鞄の便利さに慣れてしまっていて、この圧倒的な感動を共有出来ないようだ。
「では使い方を説明するぞ、草太殿」
セラフィーちゃんの説明によると、
細長い物は入るが、鞄の口より大きな物は入らないとの事。
ベルトの所に小さな金属の箱が付いていて、中には魔結晶が入っている。
その魔結晶が電池の様な役割をしており、魔法鞄を使っていると、
魔結晶が小さくなっていき、なくなると鞄の機能が一旦停止するそうだ。
魔結晶を補充すれば再び機能が回復するそうだが、気を付けないとならないのは、魔結晶切れの時だ。
鞄の中にその容積を超える荷物が入っていると、鞄を突き破って実体化するそうである。
鞄が壊れるのは勿論だが、怖いのは大量の荷物が入っていた場合だ。
お腹の上で抱えて寝ているときや、狭い部屋でそれが実体化すると――
最悪、圧死する!
ナヴィア国では滅多にないが、他国だと年に何人も、死亡事故が起きているらしい。
便利な道具にはリスクが伴うのは世の常だ。
兎に角、大量に荷物が入っているときは、絶対に魔結晶を切らしてはならないのだ。
「その魔法鞄の中に予備の魔結晶を入れておいた。
当分は大丈夫だが、気を付けるのだぞ、草太殿」
ありがたや、ありがたや、気遣いに感謝。
これから俺の相棒となり苦楽を共にするアイテムである。
やはり名前を付けねばなるまい。
魔法鞄をたすき掛けにして語りかける。
「お前の名前は《《バクミ》》だ!
たった今から俺の身体の一部に等しくなったのだ!」
「ところで草太殿、本日もトマトを頂きたい!」
やっぱりトマトが欲しいらしいセラフィーちゃん。
お姫様でありながら腰を折って、頭を下げた。
俺はそんなセラフィーちゃんを黙って横目でじっと見る。
「無論、お金は言い値で払うぞ、草太殿!」
的外れな事を言うお姫様に俺は答えた。
「この畑のトマトは売り物ではない! 親しい人への贈り物として育てている。
なので いくら大金を積まれても売る気はない!
だが俺に可愛くおねだりしてくれるなら、友人として是非とも進呈しよう!」
「ええ、また……いい加減、恥ずかしいのだが……」
アヒル口でぼやくセラフィーちゃん。
(うむ! アヒル口も良い!)
セラフィーちゃんはこの前まで、超可愛くおねだりしてくれていたのだが――
そんな自分の姿を客観視してしまったらしく、恥ずかしいらしいのだ。
再び彼女を黙ってじいぃ~~~と見つめる。
「わ、分かった…… おねだりすれば良いのだろう! もう!」
決心した様である。やはり俺のトマトを咥え込む誘惑には勝てないようだ。
「コホン、では、まいるぞ草太殿!」
小さく咳をし宣言した後――
お耳をほんのり赤らめたセラフィーちゃんは、
脇を閉め、軽く握った両手を顎に当て、小首をかしげながら、潤んだ上目づかいで、桜色の艶やかな唇を開いた。
「セ、セラフィーに、い、いっぱいちょうだい♡」
ズギュウゥゥゥ~~~~~~~ン!!
オーマイガ~~~ッ!
すんばらしい!! チョットぎこちない所がまた良い!!
ちなみに、おねだりの仕草や言葉は俺が教えた訳ではない。
彼女のオリジナルだ。
セラフィーちゃんには、おねだりの 天賦の才があると見た!
16歳の俺は当然ながら夜のお店に行ったことが無いので、あくまでも、あくまでも想像のことではあるが、水商売にこんな娘がいたら相当ヤバい。
客は一夜にして尻の毛まで抜かれて、ツルツルのスベスベになってしまうに違いない!
「は、恥ずかしい~~~!!」
超絶美少女様が恥ずかしがって両手で顔をおおい、身もだえする。
小さめのエルフ耳が、完熟トマトの様にまっ赤である!
勘のいい紳士ならお気付きと思う。
もちろん天才が可愛くおねだりする姿も良いのだが――
俺が本当に見たかったのは、ミニスカ姫騎士美少女が、羞恥心に恥じらう姿なのだ。
鎧とのギャップとモジモジしてスリスリする太腿が、大いなる感動を呼び起こすのだ。
これは金では買えない! 正にプライスレス!
「どうぞ姫君、存分にお召し上がりくださいませ!」
大変貴重なものを、拝見させていただいたので、籠にトマトを山盛りにして差し上げた。
「う、うむ。苦しゅうない、良きに計らえ」
セラフィーちゃんは、俺のノリに付き合ってくれる、良い娘なのだ。
お姫様は毎度のように、ほっぺをパンパンにして、トマトをガツガツと平らげた。
そのあと、真顔で提案してきた。
「草太殿、毎日おねだりするのは本当に恥ずかしいので、他の事にしてくれないか?」
(うーん、他のことと言われてもなあ……)
もっと天才の技量を堪能したい。
なので、おねだりを超える条件でなければ意味がない。
(ダメもとで言うてみるか――)
俺は襟を正し、ことさら真剣な表情で、代替案をミニスカ美少女に提示した。
「いまここで、そのスカートをめくって見せてくれたら、
それ以後は無条件で毎日好きなだけ、俺のトマトを進呈しよう!」
彼女のスカートを指さし、半分冗談で言ったのだが……
ミニスカ姫様の返事は予想外のものだった――
「まことか! スカートをめくれば良いのだな! 相分かった!」
(ええ~~~っ!? 見せてくれんの!? マジで~!?)
信じられないんですけどお!? お姫様のを拝んじゃっていいの~!? ほんとに~~!???
「あまり長々とは見せんからな!」
セラフィーちゃんが両手でむんずとミニスカートの端を握る。
「あっ、できっ」
出来れば、うつむき恥じらいながら、少しずつスカートを、たくし上げて見せて欲しい……
とリクエストする間もなく――
「しかと、その目に焼き付けるが良い!」
言うな否やお姫様が、スカートをがばっと一気にめくり上げた。
そこに見えたのは――
提灯が二つ並んでいた……。
カワイイ下着でもキワドイ下着でもない。
提灯ブルマーであった!
中世ヨーロッパの王様とかが穿いていたような、
縦のプリーツが付いている奴である。
「その丸く膨らんだ提灯みたいなヤツ、下着なの?」
分かってはいるが一応聞いてみた。
「ば……馬鹿者! 下着の訳ないであろう!
これは動きやすくするため、ふくらみを持たせた半ズボンだ。
し……下着はこの下に可愛いのを穿いておるぞ!」
下着が可愛いことを、サラッと告白したセラフィーちゃんは、スカートを元に戻した。
「もう良いであろう」
スカートをめくる前の状態に戻ったお姫様を見る………。
ほんの数秒前と、全く同じ見た目の、ミニスカート姿なのだが……
今は、スカートと可愛い下着の間に、提灯が挟まっていると、認識している。
外見は寸分も変わらないのに、ミニスカート姿の価値が半値以下に、ディスカウントされてしまった――
ような気がするのは俺だけでは無いハズだ……。
「草太殿。これからは、約束通り無条件でトマトをふるまって貰うぞ! ではまた明日!」
美少女姫騎士様は、騎乗竜に軽やかに跨がると、銀髪を風に散らしながら颯爽と走り去る。
風にひらめくミニスカートの端がふわりとめくれ、隙間から一瞬だけ提灯が顔を覗かせた。
その主張する確かな存在感――
思春期男子の心に秘めた、青春の宝物を失ってしまった……。
胸をかきむしられる切なさに、ただ立ち尽くすのであった……………。
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