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第12話 草太、菩薩様に完熟トマトを振る舞う(後書き挿絵、ひ孫達)


10坪の畑にこしらえた波打つ畝に、50センチの等間隔で支柱が並んでいる。

その支柱に紐で結びつけられた背丈ほどの茎から、深緑の葉が伸び広がり、やや小ぶりな拳大の実りが幾つも顔をのぞかせていた。


まっ赤に色づき、周りの景色が映り込むほど艶やかなそれらの中から、ヘタが閉じている物を選んで切り取った。


袖で軽く拭き……大口でかぶりつく――「旨い! 美味すぎる!!」


果汁が溢れ、さわやかな青い香が脳髄を吹き抜ける。

ほのかな酸味と程よい甘味、そして強烈なうま味が口内を蹂躙していく――。


ムシャムシャごっつくん、ども草太です。


いや~~~~っ。

【植物おせわ係】の「うま味成分爆増」能力で作ったトマトが爆美味《ばくうま》すぎ。

我ながらトンでもない出来栄えだと、自画自賛しております!


セラフィー姫ちゃんが立場を忘れ、夢中でパクモグしちゃうのも頷ける。

 

このトマトを量産したあかつきには、この国でトマト長者も夢ではない!

が、それだと成金のスローライフ物になってしまう。

 

爺になったらそれでも良いが、俺はピチピチのシックス・ティーンだ。

BIGになると己に誓ったのだ、小さく纏まるつもりは毛頭無い!

まあトマト長者も多少はBIGではあるが、目指す頂きは遥かに高いのだ。


それにせっかく異世界に転移したのだ、世界中を観て回りたいじゃん!

冒険せねばタイトル詐欺になっちゃうじゃん!


幸い 虚穴人《きょけつびと》 には、どの国の国境もフリーパスで通過できる。

という、特典があるというのだ。

虚穴人 の知識や技術、特殊スキルを一国で独占させない為の、国家間の取り決めなんだとか。


具体的な目標としては➡異世界中を冒険➡盗賊に襲われている美少女を助ける➡魔物にさらわれた美少女を助ける➡奴隷となった美少女を助ける➡兎に角あっちゃこっちゃで美少女を助けまくる➡美少女ハーレムを創る!!!


これである!


やはりBIGな男ならハーレムの一つや二つ三つ、所持して当然!

それにハーレムを創るのは、異世界に来た男子のロマンだ!

いや、義務、法律と言っても過言ではない!


ちなみにハーレムの美少女達に着せる服は、ミニスカートのメイド服一択である! 但し服装に関しては異論を認める!


これが異世界冒険で、俺の目指すべき頂きの一環だ!!

 


完熟トマトを籠いっぱいに収穫し、薬師工房に向かう。

お世話になっているササリナ先生に振る舞うためだ。

先生もこのトマトがいたくお気に入りなのだ。

 

工房内の試作室の扉を開く。途端に複雑な薬品の匂いが鼻をついた。


「先生、一息入れませんか? トマトを食べますよね?」


螺旋《らせん》状に渦を巻くガラス器具が乗る机の前で、フラスコを手に持ったダイナマイトボディ&白衣姿の先生が振り向く。

こうして見ると女医よりも研究者のほうがイメージに近い。


「まあ、ありがとう草太君。では休憩にしましょうかしら」


実際先生は薬師商売を自分の子供たちにすべて任せ、今では新しい魔法薬の開発に専念している。

俺が数々の希少な薬草を育てたおかげで、試作材料が大量に手に入り、研究にも熱が入っているのだ。


「じゃあ♥ いただきます♥」


先生が完熟トマトを一つ手に取りそっとかじりつく。

レディーとしては少々お行儀が悪いが俺には好都合だ。


噛みしめるようにゆっくりと咀嚼《そしゃく》する先生の唇の端から、トマトのジュースがあふれる。

つつーっと口元のほくろの上を伝い、あごの先から滴り落ちていくゼリー状の液体。

先生の菩薩様《ぼさつさま》の谷間に、ぽたりぽたりと溜まっていく。

その姿は言葉を失うほど有り難い眺めだ。


正に―― 絶景である!!


俺はササリナ先生に完熟トマトを振る舞い、先生は俺に菩薩様の眺望《ちょうぼう》を拝ませる。

これもある意味Win-Winだ!



「草太兄ちゃん、俺にも! 俺にも~~!」

「あたしもトマト食べたいよ~~~~っ!」


その時俺の着ているパーカーの袖を、両側から全体重を乗せて目いっぱい引っ張る、クソガキが二人いた。


「袖を引っ張るのはやめろ、ガキども! 一張羅《いっちょうら》が伸びんだろうがよ!」


ちなみに、『着《き》たまま洗浄《せんじょう》乾燥《かんそう》』という着ている衣類ごと身体も綺麗にする、ドストレート・ネーミングな魔法があって。

その超便利魔法を先生から毎日かけてもらっているので、俺は臭くないハズだ。


「兄ちゃんさ~、ふつう子供に先にあげるもんだろ、そういうのって~~~っ」

「そうだよ! そうだよ! 大《おお》御婆《おばあ》ちゃんのお乳《ちち》ばっかり見てさ~~すけべ~~っ」


そう、このクソガキどもはササリナ先生のひ孫ちゃんなのだ。


先生の息子さんの息子さんの息子さんが、青っ鼻を垂らしている、ボンノ君。

同じく先生の娘さんの娘さんの娘さんが、前歯が二本ない、ミミカちゃんだ。


先生は旦那さんが亡くなってから、この工房に一人暮らしだ、そこに俺が転がり込んでいるわけだが。


息子さんと娘さんの家族は、一般魔法薬の製造の他に、薬草園の管理などしている。

園のすぐ横にそれぞれ家を建てて、各々三世代で住んでいる。

ボンノ君とミミカちゃんは家がすぐ近くなので、ちょくちょく大御婆ちゃんの家に遊びに来るのだ。



「そらそら食え食え、死ぬほど食うがいい!」


トマト畑から追加で完熟トマトを収穫し、ガキんちょ二人がギブアップするまで振る舞う。


「も、もう無理ぃ~~~ゲッ、ゲフゥ~~う、赤いうんこ~~~出る~~~~っ~」

「あ、赤ちゃんできた~~草太お兄ちゃん~責任~取って~~~~~ウプッ」


実に男の子らしい感想と、女の子らしい感想を述べる二人に、家族へのお土産としてトマトを山ほど持たせて帰らせた。


  ***

 

いつも通り深夜特訓を終え、朝日が赫月《かくづき》の赤光をかき消すころ、工房に帰り30分爆睡する。

16歳の俺はここでは立派な成人扱いのせいか、毎晩朝帰りしてもササリナ先生は特に何も言わない。


ただ一度だけ忠告をされたことがある。


その日俺が朝帰りすると――


先生は何時ものように起き抜けの薄いネグリジェ姿だった。

カーテンから差し込む朝日に、下着をつけていない豊満なシルエットが鮮明に浮かぶ。

俺の俺が熱くなり、自制心を失いかねない妖艶な絶景だ。

毎日無料で視聴しているのが申し訳なく、罪悪感を覚えるほどである。


見せつけているのか……


否《いな》! 否《いな》!! 否《いな》!!!


そうではないっ!―― あの姿は先生が用意した、俺の心の修行の一環なのだ!

漢《おとこ》は如何なる時も自制心を失ってはならないのだと――!


先生は流し目で口元に指をあて、赤い舌がちらりと見える濡れた唇から、言葉をつむいだ。


――「男の子は、こっそり夜中に一人でしたいこと、もあるものね♥ でもしすぎちゃダメよ♥ ウフフ♥」


ひじょーに、思わせぶりな言葉をかけられた。深謀《しんぼう》遠計《えんけい》な先生には、俺の《《くっころ》》計略がすべて見通されているような気がする……



―― 朝食後―― 


灰や堆肥《たいひ》を撒き、耕して尾根を造り、薬草の種が撒かれている畑に向かう。

前もって先生のご家族が、準備をしてくれているのだ。

俺も鍬《くわ》で畑を耕せるが、時間を割いている余裕がないので成長専門だ。


薬草畑で【植物おせわ係《がかり》】の力を使い、次々と奇天烈《きてれつ》薬草をガシガシ成長させる。

この能力のもう一つの利点は、収穫まで一日も掛からないので病害虫の心配を一切しなくて良いことだ。

植物を育てた経験がある人は分かると思うが、大助かりである!


すべての薬草畑を成長させたころにセラフィーちゃんが颯爽《さっそう》と登場し、超可愛くおねだりする。

当然、お口の中もお腹の中も、青臭いトマト汁でいっぱいにしてやった。

 


そして昼飯を食べながらふと思う―― 


(飽きた~~~!!!)


既に2ヶ月余り、同じような生活をしている。

さすがに飽きる!

セラフィーちゃんのおねだりや、ササリナ先生の絶景は心ときめくが。

何か別のベクトルの刺激が欲しいのだ!



そんな折、俺のトマト畑に泥棒が侵入した!


「いいじゃんかよ!草太兄ちゃん! こんなにいっぱいあるんだからよ~~!」

「そうだよケチケチ! そもそもここ大御婆ちゃんの畑だもんっ!!」


青鼻水《あおっぱな》と、隙《すき》っ歯《ぱ》が、俺に襟首をつかまれたまま、じたばたと抗議する。

口と手を赤い汁でベトンベトンにした、ボンノ君とミミカちゃんだ。


これ幸いにと二人に聞いてみた。


「お前らさ、この国で面白くて刺激的な場所って知らねーか? 教えてくれたら許してやらんでもないぞ」

 

すると顔を見合わせるボンノ君とミミカちゃん。


「う~~ん、それだと……やっぱあそこかな……」

「あそこしかないよね……」


二人が顎に手を当て、なにやら結論を出している。

良い場所があるらしい。


「でも草太兄ちゃんさ~~口が軽そうだしなあ~~すぐチクリそう」

「あそこに行ったのがバレたら……お母さんに怒られちゃうもん~~教えない~~」


今度は腕を組み不信顔だ。

心外はなはだしいが明らかに信用されていない。


(う~~む……しかし、どんな所か気になりすぎる~~!!)


仕方ない。ここは先生の威を借りるとしよう!


「二人とも俺を信用しなくてもいい! だがササリナ先生を! お前たちの大御婆ちゃんを信じろっ!」


「え? なにそれ?」

「大御婆ちゃんは信用してるもんっ」

 

特に意味はないが、それっぽい演出として太陽を指さし決意を述べた!


「いいか、俺はここ2ヶ月間、先生の猛特訓によって、徹底的に心を鍛えられたのだ! もはや俺は精(・)神(・)力(・)モ(・)ン(・)ス(・)タ(・)ー(・)と言っても過言ではない! たとえどんな拷問を受けても、秘密をばらすようなことはしないと! 先生の菩薩様とあの太陽に誓おう!!」


本当ならば夕日に誓った方が、ドラマチックで良いのだが、残念ながら今はお昼過ぎなので仕方なく日なかの太陽で妥協した。


「う~~ん、じゃあ連れてってもいいかなあ~」「そうねえ~案内してもいいかなあ~~」


よしよし! ボンノ君とミミカちゃんも納得したようだ――


お読みいただきありがとうございます!

今回の挿絵はササリナ先生のひ孫達、トマトを食べる「ボンノくん、ミミカちゃん」です。


挿絵(By みてみん)


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次回もよろしくお願いします!


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