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登場人物紹介


挿絵(By みてみん)





■ 勅使河原サユリ


勅使河原サユリは、愛知県名古屋市中川区烏森町に住んでいた女子高生であり、愛知県立烏森高校の生徒。明るく活動的な性格と、常人離れした身体能力を持つ少女として知られていた。物語開始時点では死亡後に天界へ召され、見習い天使として登録されているが、生前の記憶の多くを失っている。


身長は168センチ。血液型はO型。体を動かすことが好きで、幼少期から周囲には“やんちゃ娘”として親しまれていた。中学時代はなぎなた部に所属し、高校ではバスケ部のマネージャーを務めていた。選手ではなくマネージャーを選んだ理由には、幼なじみである神宮寺健人の存在が大きく関係している。


虫、甲殻類、カエルを苦手とする一方で、爬虫類には平然としている。偏食家でもあり、チョコレートやアイスクリームを好む。本人は「アイスクリームとチョコは万能の薬になる」と語っていたとされる。



【概要】


サユリは、表向きには烏森町で暮らす普通の女子高生だった。しかしその出生には重大な秘密があり、日本国内の極秘研究施設サイエンス・スクエアで行われていた「Lプロジェクト」の被験者として生まれた存在である。彼女は通常の人間ではなく、天使、人間、さらに堕天使ルシファーに連なる因子を宿す特殊な個体であった。


幼少期に施設を脱走したサユリは、三日三晩、森の中を彷徨った末に、京都府美山町で勅使河原薫に保護される。薫はサユリの腕に刻まれた刻印から、彼女が人間ではない存在であることを察し、それでも彼女を「人間」として育てることを決意した。


のちにサユリは名古屋市中川区烏森町へ移り住み、勅使河原家の一員として生活を始める。そこで出会ったのが、神宮寺健人だった。



【性格】


生前のサユリは、明るく社交的で、面倒見がよく、場の空気を変える力を持った少女だった。バスケ部では選手ではないにもかかわらず、部員たちから「チームの顔」と呼ばれるほど慕われていた。


一方で、過去には心を閉ざしていた時期がある。施設での経験、普通の人間ではないという自覚、周囲と違う自分への恐怖から、幼少期のサユリは他人との関わりを避けていた。健人と出会う以前の彼女は、うまく会話もできず、自分を守るために他人を遠ざける傾向が強かった。


健人との関係は、そうしたサユリの閉じた世界を変えるきっかけとなった。彼はしつこく、遠慮がなく、何度拒絶されても距離を詰めてきた。サユリにとって健人は、鬱陶しくもあり、安心できる存在でもあり、最終的には自分を人間社会へつなぎ止める重要な相手となっていった。



【能力】


サユリは、通常の人間を大きく上回る身体能力を持つ。


バスケットボールの経験がほとんどなかった中学一年時点で、県内でも注目されていた健人を1on1で打ち負かしたことがある。この出来事は、健人がサユリに強い興味を抱くきっかけとなった。


また、複数の高校生男子に囲まれた際、健人が助けに入るも返り討ちに遭った直後、サユリはその場の全員を倒している。この時点で彼女の戦闘能力は、少なくとも一般人の範疇を超えていた。


ただし、生前のサユリは自身の力を意図的に隠していた。自分が普通ではないことを知られれば、再び施設や別の組織に狙われるかもしれないという恐怖があったためである。



【天界での状態】


死亡後、サユリは天界へ召され、見習い天使として登録される。しかし、生前の記憶は大部分が欠落している。自分が烏森町に住んでいたこと、烏森高校に通っていたこと、交通事故で死んだとされていることは把握しているが、友人や家族、恋人に近い相手の顔や名前は思い出せない。


魔法省からは下界研修を命じられ、偽装身分望月町子として人間社会へ戻ることになる。望月町子は二十一歳の大学生として設定されたレプリカであり、本来のサユリとは異なる姿をしている。


しかし、健人と接触した際、レプリカの偽装が一時的に崩れ、彼には勅使河原サユリ本人の姿として認識される。この現象は通常あり得ないものであり、サユリ自身も困惑することになる。



【神宮寺健人との関係】


サユリと健人は、中学一年の頃に出会った幼なじみである。近所に住んでいたこともあり、次第に学校生活や日常の多くを共有するようになった。


二人は、友達以上恋人未満の関係だった。


健人はサユリと付き合っていると思っていた。実際に二人は長い時間を共に過ごし、距離も近く、周囲から見れば恋人同然の関係に見えた。三年間の記念写真も残っており、健人にとってサユリは明確に「恋人」と呼べる存在だった。


しかしサユリ自身の感覚は、健人とは異なっていた。彼女にとって健人は、幼い頃から隣にいる兄弟のような存在であり、心を許せる相手であり、体の距離が近い相手ではあったが、それを恋愛感情として整理していたわけではない。健人の好意を受け入れながらも、サユリは関係を明確な恋人同士として捉えていたわけではなく、どこか曖昧で、軽く、言葉にしないまま続いていた。


そのため、再会後に健人から「付き合っていた」と告げられても、記憶を失ったサユリには実感がない。写真や思い出話から、二人が深い関係だったことは理解するものの、彼に対する感情は空白のままである。


健人は、失ったはずのサユリが目の前に現れたことで、彼女との関係を取り戻そうとする。一方のサユリは、過去の自分と今の自分を同一視されることに戸惑い、健人との距離を測りかねている。





■ 神宮寺健人


神宮寺健人は、愛知県立烏森高校に通っていた男子生徒であり、バスケットボール部のエース。サユリの幼なじみであり、彼女の生前を知る最重要人物の一人である。


2004年5月5日生まれ。身長183センチ、体重69.4キロ。血液型はO型。勉強は苦手だが、運動神経に優れ、小学生の頃から県内のバスケットボール関係者に注目されていた。


小学生時代は「名古屋ダイヤモンドシティーズ」に所属し、ミニバスの県大会制覇に貢献した。中学では名門校である桜蔭学園に進み、“桜蔭の天才”と呼ばれるほどの実力を示した。将来はプロバスケットボール選手になることを夢見ており、部屋にはNBAスター選手ロイス・ルイスのポスターを飾っている。



【概要】


健人は、明るく直情的で、思ったことをすぐ行動に移すタイプの少年である。バスケットボールに関しては努力家であり、自信家でもある。中学時代には1on1で負け知らずだったが、サユリとの勝負で初めて敗北を経験する。


その敗北は、健人にとって大きな衝撃だった。相手はドリブルすらまともに知らないような女子であり、身体能力も技術も自分が上だと信じていた。しかしサユリは、常識では説明できない反応速度と動きで健人を翻弄した。


この出来事をきっかけに、健人はサユリに強い興味を抱くようになる。



【サユリとの出会い】


健人がサユリに近づいたのには、もう一つの理由がある。


サユリの家には、勅使河原博子という祖母が住んでいた。博子は健人にとっても馴染みのある人物であり、彼は幼い頃から彼女を“おばあちゃん”と呼んで慕っていた。


サユリが学校で孤立し、上級生からいじめを受けていることを知った博子は、健人に「サユリと友達になってほしい」と頼む。健人がサユリに1on1を申し込んだのは、この頼みがきっかけでもあった。


だが、実際に勝負をして敗れたことで、健人の中の関心は単なる義務感ではなくなった。彼はサユリを放っておけない存在として見るようになり、拒絶されてもなお彼女に関わり続けた。



【性格】


健人は、良くも悪くもまっすぐな人物である。


相手が距離を置こうとしても、必要だと思えば踏み込む。危険だと判断すれば、自分の力量を考えずに飛び込む。サユリが高校生男子たちに囲まれていた時も、勝ち目がないとわかっていながら助けに入った。


この無謀さは健人の欠点でもある。彼はサユリを大切に思うあまり、自分の感情を優先してしまうことがある。死亡したはずのサユリと再会した際も、混乱と喜びから衝動的に抱きつき、彼女を困惑させた。


しかし、その行動の根底には、サユリを失った痛みがある。健人にとってサユリは、ただの幼なじみではなく、日常そのものだった。彼女の死は、健人の世界から中心を奪う出来事だった。



【サユリへの感情】


健人は、サユリと自分は付き合っていたと認識している。


彼にとって二人の関係は、友情を越えたものだった。中学から高校にかけて、二人は一緒に登下校し、互いの家で過ごし、喧嘩をし、仲直りし、記念日を重ねていた。健人の記憶の中のサユリは、いつも近くにいて、自分の未来にも当然のように存在している少女だった。


一方で、サユリ側の認識は曖昧だった。彼女は健人に深く心を許していたが、その関係に明確な恋人としての意味を与えていなかった。健人の好意を拒まなかった一方で、自分自身の感情を恋愛として扱うことには距離を置いていた。


この認識のズレは、再会後の二人に大きな影を落とす。


健人は「恋人を取り戻した」と感じている。

サユリは「知らない男から過去の自分を求められている」と感じている。


それでも、健人が語る思い出はサユリの心を揺らす。覚えていないはずなのに涙が出る。知らないはずの家に懐かしさを覚える。写真の中の自分が健人に向ける笑顔を見て、今の自分では理解できない感情が胸に残る。



【現在の立場】


サユリの死後、健人は大学生となり、夜は居酒屋でアルバイトをしている。バスケットボールへの夢を持ち続けているが、サユリの死は彼の人生に深く影を落としている。


再会後、健人はサユリの秘密を完全には知らない。彼女が天使であること、望月町子というレプリカを使っていること、天界や魔法省の事情についても理解していない。サユリは彼に対し、自分は幽霊のようなものだと説明するに留めている。


それでも健人は、サユリが再び目の前に現れた事実を受け入れようとする。彼女が記憶を失っていても、以前のように自分を見てくれなくても、健人はサユリとのつながりを手放せない。



【二人の関係性】


勅使河原サユリと神宮寺健人の関係は、幼なじみ、親友、恋人、家族、共犯者のような距離感が重なった、非常に曖昧なものだった。


子供の頃の二人は、兄弟のように近かった。互いの家を行き来し、同じ時間を過ごし、くだらないことで喧嘩をし、気づけばまた隣にいる。サユリにとって健人は、他人でありながら家族に近い存在だった。


しかし成長するにつれて、健人の感情は恋愛へ傾いていく。サユリもそれを拒絶しきらず、二人は恋人のように振る舞うようになる。周囲からもそう見られ、健人自身もそのつもりだった。


だがサユリは、その関係をはっきり定義していなかった。彼女にとって健人は、安心できる相手であり、自分の孤独を埋める存在であり、身体的にも精神的にも近い相手だったが、それを恋愛と呼ぶことに実感を持っていなかった。


そして現在、サユリは記憶を失っている。


健人が知っているサユリと、今のサユリは同じ人物でありながら、同じではない。健人は過去を抱えて彼女を見る。サユリは空白の中から彼を見る。


二人の再会は、失われた恋の続きではなく、記憶を失った少女と、彼女を忘れられなかった少年が、もう一度関係の名前を探す物語の始まりである。


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