第2話 恋愛マスター誕生!?
「ローザ様、ありがとうございました!」
数日後。
アールグレイを飲みながら、長髪のイケメンと夢の逃避行していた私は、ビクッとしました。
「えっと…、すみません、どなたでしょうか?」
私の前には、美女が立っていました。
申し訳ないけれど、見覚えがありません。
「ローザ様ったら。リリーですよ!」
ええっ!!
これは驚きました。
前に会ったときとは別人です。
「ローザ様のアドバイス通りにしたら、紅茶のお店の人と、トントン拍子に上手くいきまして。」
「私、今、幸せいっぱいです!ローザ様、本当にありがとうございました!」
リリーは深々とお辞儀をしました。
アドバイスしたことなど、すっかり忘れていた私は、しどろもどろになりながら言いました。
「え、ええ。良かったわね。あんなアドバイスで良かったら、いつでもするわよ」
「本当ですか!?」
リリーがキラキラと目を輝かせました。
「実は、友達の相談に乗ってもらいたくて。」
「ローザ様の話をしたら、私もお願いしたいって言われたんです。今度、連れてきますね!」
そんなつもりじゃなかったのよ?
でも、今さら断ることもできなくて
「いつでもいらっしゃい」
なんて言ってしまいました。
なんで墓穴を掘っているのよ!?
◇
しばらくすると、リリーの友達がやってきました。
「はじめまして、ローザ恋愛マスター様。アリアです」
飲んでいた紅茶を吹き出しそうになりました。
な、なんですか、その呼び方は!?
「あ、アリア、よろしくね。で、相談は何かしら?」
令嬢は、細かいことは気にしてはいけません。あくまでも穏やかに聞いてみます。
「はい。幼ななじみが好きなのですが、相手は私を恋愛対象として見てくれないんです」
ああ、これは小説の定番中の定番ね。
「そうね、まずは、他の男と親しい素振りをして、嫉妬させるのよ」
「ちょっと、手の届かない感を出していくのよ。そうしたら追いかけてくれるわ」
「それから、大人の女性を演出していくの。私は子供の頃と違うのよってね」
「あとは、そうね……、あなたは色白だから、ハッキリした色の服のほうが似合うと思うわ」
また、つらつらと話してしまいました。
「ありがとうございます、恋愛マスター様!やってみます!」
だから、恋愛マスターではないって。
こんなのでよかったのかしら?
私は、冷や汗をそっと拭いました。
「きっと大丈夫よ。頑張ってね」
◇
午後の紅茶の時間です。
外のテーブルで、思う存分妄想にふけろうと、扉を開けました。
すると、そこにはたくさんの人が集まっています。
「あら、今日は何かあったのかしら?」
これでは静かに妄想に浸れません。
残念に思いながら引き返そうとすると、皆が一斉に視線を向けました。
「恋愛マスター様がいらっしゃった!」
「私もお願いいたします!」
ちょ、ちょっと待ってください。
私は恋愛マスターではないし、こんなに沢山の人の相談には乗れません。
そこに、リリーと、アリアがやってきました。
「ローザ恋愛マスター様。あなたのおかげで、私たちは幸せになりました。」
「どうぞ、これからも私たちをお導きください!」
これは困りました。
頼まれると嫌とは言えない私です。
皆さんから期待されているなら、なおさらです。
とはいえ、一度に答えることはできませんね……。
私は、ふと空き部屋の存在を思い出しました。
突発的に妄想に浸りたくなった時に、コッソリ使っていたあの部屋です。
あそこなら、相談に乗るにはもってこいです。
「わかりました。では、予約制にしますので、時間になったら空き部屋に来てくださいね」
皆さんに伝えてから気づきました。
私は、これからはどこで妄想をしたらいいのでしょうか?
私は、心の中で大声で叫びました。
――それは、私の仕事じゃありませんっ!!
この時の私は甘く見ていました。
どうせ一時のことに違いないと思っていたのです。
それが、あんなことになるなんて、誰が想像できたでしょうか……?




