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第七話 激戦!ジャスティスvsシャドウ!


 レンくんにちょっとメロついた心を落ち着けながら、私は選手控室に戻った。負けはしたがまだ三位決定戦が残っているのだ。

 カケルくんは既にいた。カケルくんも準決勝だったはずだけど、いつの間にか決勝に駒を進めていた。対戦相手、モブの人だったんだな、南無。


 カケルくんは今まで彼が集めてきたのだろう、カスタムパーツを眺めていた。

 カスタムパーツはレアリティが定められている通りに、その販売形式はランダムパッケージ(ガチャ形式)だ。うちのような専門店ならパーツのバラ売りもあるが、その分値段はお高めになっている。

 なのでカケルくんをはじめ、子供達は基本的にランダムパッケージを買う。


 運が良ければ高レアパーツを所持することは出来るが。見た限りだとカケルくんの持っているパーツはどれもレアリティが低い。

 レンくんは全体的に高レア構成だった。私のハートちゃんもどちらかというと高レア構成だ。やっぱりレアリティが高い方が強い。


 カケルくんに声を掛けようとして、躊躇ってしまった。先程やんわり拒絶されたことが引っ掛かっている。

 そんな私にジャスティスの方が先に気付いた。彼がカケルくんに耳打ちするとカケルくんも振り向く。


「お疲れサヤカちゃん。すげー惜しかったな、でもナイスガッツだったじゃん!」


 その笑顔になんだかホッとしてしまう。お疲れ様と返して、そっと近付いた。よく見ればジャスティスの頭部パーツと左腕パーツ以外は外されていた。頭部パーツはわかる。SSRパーツは確定で組み込むでいいだろう。しかし左腕パーツは私が適当に組み込んだNレアパーツだ。


「左腕パーツは変えないの?」


 あっ口出ししちゃった。パッと口を押さえたが、カケルくんは弾ける笑顔のままだった。


「当たり前だろ? これはオレが初めて手に入れた戦利品だぜ!」


 でもNレアパーツなんだよ。スキル効果も毒無効だったはずだ。刺さるときは刺さるかもだけど、意味無い時は本当に意味が無い。少なくともレンくんは状態異常にはしてこない。

 せめてそれだけでも変えてほしい。しかしあれこれ言うのも。

 なんとも言うことが出来ずまごついていたのが分かったのか、カケルくんは口を開く。


「オレも決勝戦で勝てるようにちゃんと考えてるからさ。だから大丈夫だぜサヤカちゃん。そんなに心配すんなって!」


「……うん、そうだね」


 そこまで言われてしまっては引き下がるしかない。私も今まではしゃぎ過ぎた。アニメの世界のお約束に舞い上がっていたとも言える。当たり前だが、カケルくんの物語はカケルくんのものだものね。


 ちょっと寂しく思うが、こういうバトルアニメ物はついていけない者から脱落していくのが常である。私もきっとここらへんで脱落して、出番が減っていくのかも。うっ寂しいどころの話じゃない。

 それが嫌なら三位決定戦こそは勝ってこないとな。私も気合を入れ直してハートちゃんを再メンテした。



 対戦した人は何というか、まあ強かったけどレンくんを相手にした後だとそれほどでもないなと思ってしまう人だった。多分これはこの人がどうこうというより、レンくんが突出して強いということなんだろうけれど。

 決勝戦の裏で三位決定戦が行われていたので、決勝戦に少し出遅れてしまった。とはいえ会場のどこにいてもスクリーンに映し出されているので、観戦は可能だ。実際終わってすぐ、顔をあげて私は驚いてしまった。


「なに、あれ」


 ジャスティスが素早い滑空でシャドウを翻弄していた。確かにシャドウは元から重い機体だが、ジャスティスが明らかに異常だ。

 あの構成は。相当装甲を削いだカスタムパーツを使っている。Nレアパーツばかりというのもあるが、シャドウの通常攻撃でも一発当たれば撃墜されかねないペラッペラぶりだった。

 だが肝心の、シャドウからの攻撃がいまだ一撃も当たっていない。


 少し整理しよう。

 カスタムパーツは基本的にレアリティが上がれば上がるほど防御力が上がる、つまり装甲が厚くなる。なので高いレアリティのカスタムパーツを採用すればするほど、アイロボ自体が重くなるのだ。

 実際レアパーツばかりの構成になっているシャドウはかなりの重量級だ。

 そして今のジャスティスは低レアのカスタムパーツでかなりの軽量を図っているのである。


(そのためにメイン武器の剣を捨ててる。シャドウの間合いには入らない作戦なんだ)


 自然シャドウも遠距離攻撃の銃に切り替えてるが命中精度は良くない。それはそうか。見るからに振り回すタイプの銃じゃない。ハートちゃんに対しても自分に対して突っ込んできたからようやく抜いた、待つタイプの銃だ。


(でも逆にジャスティスの攻撃もシャドウに効いてない)


 低レアパーツの攻撃なんて、シャドウにとっては豆鉄砲みたいなもの。ジャスティスが起死回生を図るならSSRパーツを切る必要がある。が、ジャスティスの必殺技は射程が短い。シャドウに当てるには懐に飛び込まないと無理だ。

 固唾を飲んで見守っていた時、ようやくマイクが選手のセリフを拾った。


「ちょこまかと煩わしい、トンボかてめーは」


 レンくんが動いた!

 パワードライブ解放して一気に片を付けるつもりだ。確かにあの逃げ場のない黒い竜巻ならジャスティスも撃ち落とせるかもしれない。


(だけどカケルくんが無策なことあるかな?)


 カケルくんはハートちゃんが大ダメージ受けたところを見ていたはずだ。ハートちゃんが辛うじて立っていたような攻撃、仮にジャスティスがチャンピオンカスタムだったとしても耐えられないことは分かりきってる。……だからこその耐久捨てのカスタマイズ? つまりカケルくんにシャドウの必殺技を受けるつもりなんて最初から無かった?


 シャドウから立ち昇る黒い竜巻に対し、ジャスティスは、


 飛んだ!


「いっけぇ、ジャスティス!」


 ジャスティスは竜巻の勢いに逆らわず、しかし振り回されず上手く飛んでいる。なるほどこれを実現したいがための軽量化か! 攻めたな、ちょっと怖い攻め方だ。少なくとも私なら絶対にしない。ハイリスク過ぎる。

 実現出来たのはジャスティスだからというのもあるだろう。流石戦い慣れている! ハートちゃんならこうは出来ない。


 流石元チャンピオンの相棒機。

 そしてそのジャスティスを信じたカケルくんだ。


「このっ……!」


 レンくんがシャドウに銃を構えさせた。ああそれは悪手だな。私は口元を手で隠した。上がった口角を隠すためだ。私が得た勝利の確信など誰も気を留めないだろうけど。それでも笑うべきは私じゃなくてカケルくんだからだ。

 ジャスティスがシャドウの手前で急上昇する。やっぱりね。急な旋回にシャドウの銃口は定まらない。賭けに出るなら近接武器にするべきだった。もうシャドウは何も出来ない。

 当然ジャスティスは直ぐ様急下降して急襲をかける!


 入った、懐に!


「やれぇ、ジャスティス!」


 ジャスティスの頭部パーツが輝く。

 シャドウはなすすべなくジャスティスの最大火力をその身に受け、決着がついた。



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