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第三話 vsタンク!


「……ハートちゃん討伐成功、オメデトー」


 むすっとしながら勝利を称えると、カケルくんは困ったように肩をすくめた。いや別に拗ねてませんけど。ハートちゃんだって負けたわけじゃないし。だって反撃しなかったし。してたら勝ってたのこっちだし? 元から花を持たせる気だったし。全然悔しくなんかないんだからね。

 ハートちゃんはとっても優しいので素直におめでとうと祝福している。バトルで倒されてもアイロボにフィードバックはない。なのですぐに元気になる。


「とりあえずチュートリアルはこれで終わりかな。左腕につけたカスタムパーツは戦利品ってことでそのまま持ち帰っていいよ」

「え、ありがとう!」

「とはいえレアリティは低いから、すぐに付け替えたほうがいいよ」


 うちのお店は品揃えが良いのでね、是非買いに来てと念押しの宣伝をすると、カケルくんも大きく頷いた。でもどちらかというとパーツそのものよりもバトル施設の方に興味があるらしい。こちらとしてはどちらでも大丈夫だ。バトル施設は使用する前にお金を払わないといけないから。

 本当はSSRパーツについても説明したかった。最高レアなだけあってあれは他のパーツと仕様が違うのだ。しかしまたチュートリアル戦闘やっても同じようなことになりそうだからやめた。多分ジャスティス自身が説明するんじゃないかな。それに任せようと思う。


 そろそろお店も開ける時間になる。それに伴いパパも店頭にやってきた。既にいるカケルくんに驚いたようだけど、事情を説明するとまたおいでねとニッコリと笑った。パパはアイロボが大好きなので、アイロボバトル人口が増えることが何よりも嬉しいのである。

 私はこのままお店の手伝いがあるからここでお別れだ。明日は月曜日だから「また学校でね」と言って別れた。



 元々腹に据えかねていたんだと思う。たまたま昨日やっていた場所が店の前というだけで、今までも散々イジメられていたんだろう。学校に着くと二組のフトシくんが三組のカケルくんとアイロボバトルをする話で持ち切りだった。


「えっほんとに?」


 これは昨日の今日で? という意味だが、クラスメイトは違う意味で受け取ったらしい。ホントだよ、カケルくんアイロボ連れてきてた! と驚き合っていた。

 ひょっとしてカケルくんがアイロボ連れてなかったことは学校内でそれなりに有名だったのかな。しまったな、同じクラスならともかく三組なんて隣の隣だからな、気が付かなかった。


「放課後、視聴覚室でバトルするんだって!」


 アイロボがここまで浸透している世界観だからか、学校側もアイロボバトルには寛容だ。うちに置いてあるのより安っぽいけど、アイロボバトル用MRテーブルが置いてあるし、申請があれば貸してもらえる。

 それはいいんだけど、まじか。

 もうちょっとアイロボバトルをしてから挑戦すると思っていた。


 主人公であるカケルくんがフトシくんと戦うのは順当と言えば順当だ。ガキ大将っていうのはこういうホビー販促用アニメでぶつかる最初の壁でもある。

 でも現実的にはどうなんだろう。カケルくんは昨日アイロボバトルを初めてやったし、フトシくんは校内でも一位二位を争うレベルで強い。ゲーム的にいうと経験値が足りないんじゃなかろうか。

 ちなみにフトシくんと首位を争っているのは主に私である。私も校内ではかなり強いほうだ。ただフトシくんと直接戦うことは少ない。フトシくんも私とあまり戦いたくないはずだ。何せお互いガン待ちスタイルなので勝負が付かなすぎて泥沼に成りやすいのである。閑話休題。

 

 とにかく放課後は視聴覚室に行こうと決める。少しフトシくんについて整理をしよう。

 フトシくんのアイロボはタンクという名前だ。その名の通り防御面に優れた性能をしている。生半可な攻撃ではまず通らない。

 またそこそこ攻撃力もある。

 弱点と言えば重戦車の宿命よろしく、重鈍であることだ。とにかく重くて取り回しが悪く、遅い。

 タンクの戦い方としては相手がコスト使い切るまで耐えてから攻撃する方が理に適っているのだが、当のバトラーであるフトシくんがそこまで気が長くない。それも弱点といえば弱点だ。

 だがそれでもフトシくんとタンクは強い。やはりアイロボは性能をとがらせた方が強いのだ。その点カケルくんのジャスティスは高い攻撃力と機動力を持つとんがりスタイルである。

 攻撃力のジャスティスと防御力のタンクか。カケルくんはどれくらいフトシくんに食い付けるだろうか。



 帰りの会の先生の話が長くて出遅れた。大急ぎで視聴覚室に向かうと既にバトルは中盤戦といったところだった。


「いけぇタンク! 撃ち落とせ!」

「イイ カゲン、アタレ!」


「ジャスティス!」

「遅い遅い、当たるかそんなモン」


 ジャスティスが高い機動力でタンクを翻弄している。わざと挑発するように近くまで飛んでは、何もせずに逃げていく。うわぁ。フトシくんはカンカンだ。顔が真っ赤に染まっていた。

 やはりタンクの遅さではジャスティスを捉えきれないようだ。ジャスティスの舐めプにやり過ぎだとカケルくんの方がハラハラしているのが見えた。

 流石は歴戦のチャンピオンカスタム、と言うべきだろう。ジャスティスは一人でも戦えるのだ。だがあまりいい景色ではない。明らかにカケルくんが手綱を握れていない。

 さてアイロボはバトラーを映す鏡だ。短気のフトシくんのアイロボであるタンクも当然短気なわけだが、それが今は功を奏した。


「ンノッ!」

「げ」


 掴んだ! そうだタンクの主な攻撃方法は投擲ではない。掴みだ。フトシくんだって鈍いタンクの攻撃命中率が低いことくらいわかっている。

 掴み攻撃ならば一度掴めば離すまで、もう命中率なんて関係ない。


「いいぞタンク! そのまま叩きつけろ!」

「ジャスティス!」


 対してジャスティスは耐久値が低い。タンクはジャスティスの体力を削り切るまで振り回せばいいだけだが、ジャスティスはそこから体力が尽きる前に抜け出せるか?

 勝負あった。本当に? 主人公機がここで負けるの? いや負けイベントかもしれない。ここで負けることによってジャスティスの態度が改まるのかも。そもそもここで私に出来ることなんて何もないがー?!

 一人混乱していた私の目にチカっと光が届いた。それはジャスティスの頭部から放たれた光だった。


 SSRパーツ!


 逆転の芽が出た! しかし何故かカケルくんは戸惑うだけで必殺技を仕掛けない。なんで?


「……あっ、ジャスティス、SSRパーツについて説明してないんじゃない?」


 ハートちゃんの呟きにあり得る! と私は手を口元に添えた。


「カケルくーん! 手元のパワードライブコマンド、押して!」


 もう声援じゃないなコレは。アドバイス、いや指示と言ったほうがより的確だ。

 しかしカケルくんはジャスティスが心配だったらしい。その指示の出どころがどこか振り返って確認することもなく、そのコマンドを押した。


 更に輝くジャスティスの頭部パーツ。


 SSRパーツが他のカスタムパーツと仕様が違うのは、一つのアイロボに一つまでしか組み込めないからである。どれほどSSRパーツを掻き集めたとしても、カスタム出来るのは一つだけ。

 その代わりSSRパーツはいわゆる必殺技を使用することが出来る。

 攻撃したり、攻撃を受けたりすることでパワードライブが溜まり、それが溜まり切ると発動出来る、取っておきの切り札。それが最高レアであるSSRパーツにだけ付与される必殺技だ。

 最高レアなだけあってフトシくんはまだSSRパーツを持ってない。なんなら私も持ってない。だけどジャスティスは流石元チャンピオン機なだけあって、当然装備していた。それが頭部パーツだったのだ。


 ジャスティスは両手に剣を持ち、まずタンクの手を叩き落とした。堪らず手を離すタンクに、そのまま斬りかかる。メッタ斬りだ。そのまま後退した……いや、突き放されたタンクに、ジャスティスの頭部に集まっていた光が放たれる。特大ビームだ。やっぱり剣だけじゃなくて、砲台キャラでもあったんだなジャスティス。かなり王道だ。まさに正義って感じ。


 この連撃には流石のタンクの装甲も貫いた。オーバーキルである。掴んでいたせいで全てまともにくらって、タンクはダウンした。


 勝った、カケルくんとジャスティスの勝ちだ!


 だけど私のテンションは上がらなかった。主人公の初戦としてはあまりにも「無い」からだ。


「好き勝手動いたクセにピンチになってカケルくんに助けて貰うとかダッサいな、ジャスティス……」

「サヤカちゃんのお節介もよっぽどだよ」


 ハートちゃんに言われてしまった。確かに。あれは本当にカケルくんの意思で押させるべきだった。見てられなくて声を張ってしまったが、アレはフトシくんに悪かった。


 気まずくなった私はこっそりと視聴覚室から退散した。


 

 そして次の土曜日。

 パパの店で店番の手伝いをしていると、カケルくんがフトシくんとナオトくんを連れてやってきた。

 あの視聴覚室の件が月曜日だから、まだ五日程度じゃないのか、もう仲良くなれるのか。男の子ってわけわからん。

 唖然としていると、フラッとジャスティスが私に近付いてきた。


「ダサくて悪かったな」

「わ、ワァ……」


 聞かれていたぁ。アイロボの耳がいいのか私が迂闊過ぎたのか。答えに窮しているといつの間にかこちらに来ていたカケルくんがニカッと笑った。


「今度はもっとカッコよく勝ち切ってみせるよ、なぁジャスティス?」

「当然だ。あんな醜態二度と晒すか」


 あれ。なんか仲良くなってない、君たち?

 男の子ってわからんわーともう一度零すと、ハートちゃんがコクコクと頷いてくれた。



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